渡せなかった手紙

勝利だギューちゃん

第1話

断捨離というものが苦手だ。

僕は物に愛着がわくタイプで、なかなか捨てられない。


幸い倉庫があるので、そこに入れている。


しかし、死ぬときにあの世へ持っていけるわけではないし。

もう使わない物もある。


「仕方ない。もう使わない物は捨てるか」

売れそうな物は売ろう。

少しは足しになるだろう。


えーと、これはなんだ?

学生時代の教科書か・・・

いらないな。


でも、なんで残してたんだ?


これは、おもちゃか・・・

もう遊ばないし捨てよう。

いや、売ろう。


レコード・・・

いらん。

カセットテープ

いらん。


えーと、なんだこれ?

手紙・・・

そうだ。

高校の頃、好きだった女の子に出す予定だったんだ。

必要なくなったので、出さなかったけど、残してたんだ。


捨てたと思ってたが・・・


なになに


【拝啓


〇〇さん


お元気ですか?

僕は元気です。


暑いですね。


僕は、〇〇さんが大好きです。


いつまでも、そばにいてほしいです。

生涯、愛し続ける自信があります。


結婚してください。


〇〇より】


我ながら、よく書けたな。

今じゃ、無理。


若かったな。


捨てよう。


「あなた、私の事、想ってくれてたんだ」

後ろから、その手紙を取られた。


「お前、いつから・・・」

「5分ほど前から」

「気が付かなかった」

「あなたは、集中すると周りが見えないからね」



この手紙を、渡す予定だった相手だ。

その前に妻から、逆プロポーズされて、不要になったのだが・・・


「これ、もらうね」

「だめ。捨てる」

「どうして?」

「恥ずかしいから」

「じゃあ、私も捨てるんだ」

「捨てない。」


当時、僕はピュアで、女の子とふざけあうことは出来なかった。

それが今では・・・


まあ、妻のおかげで変われたからいいか・・・


「あなた」

「何?」


「ふつつかものですが、これからもよろしくお願いします」

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渡せなかった手紙 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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