第2話 予知夢
「流星の民の奇病。死の際で一秒に時を刻み、一分に月を刻む。私の仮説を飛躍出来る者は?」
壇上、挑発的な微笑を浮かべ講堂内を見渡す
その微笑は百余の秀才——困惑顔の学生達に向けてのものではない。
挑発的にならざるを得ない学生一人に対して向ける、期待の裏返しに他ならないのだ。
「細胞分裂の急な加速が奇病発症のトリガーであり、その度合いによって老いる速度、絶命までの時間が決まる。流星の民は短い命と言われるけど、実は皆等しく天寿を全うしているのですね」
全てを見透かすような
「生涯における人の細胞分裂の数は決まっていて、それは寿命に符合する。短期間に細胞分裂が加速し現実時間での寿命を早めているという仮説を見事に
創世の言葉に幼顔にして蒼白の口元が緩む。
「死の淵、加速状態に入った一秒の長さはどれほど長いのでしょうね。隔絶された時間の中で独り老いて絶命する。どれほど恐怖することでしょう。先生もボクも、その恐怖から流星の民を解放するためにこうして話をしているのですね」
——夢っ!? ——
あの不適な笑みは忘れることがない。
少年に似つかわしくないあまりの聡明さは、危うさを多分に含めたもの。
螺旋塔を訪れ、流星の民を救う術を持つにも関わらず一夜の監獄を過ごす。
今宵見る夢としては、十分なほどの皮肉が教え子——少年の笑みに重なった。
瞬間、胸がざわつく。
忘れたことのない不適な笑みを夢に見たのは初めてだった。
——これは予知夢……。
非科学的な思考であっても創世には信じるきらいがある。
遺宝の書に、偶然必然の前触れは説明のつかない事象に起因することもあると記されていたからだ。
自身の経験よりも書、歴史に学ぶ姿勢を大切にしている。
「創世様」
里外に待機させた
「螺旋塔に向け、
——天上の回廊、巡礼の地に向けて進軍とは。
乱世の時代、二大王朝が存在する。
始祖の血脈を受け継ぐ
自身を絶対王と位置づける覇王は好戦的な野心家で、乱世を鎮めるための約定を幾度も破り、圧倒的な軍事力で小国を次々と
神の畏れなど皆無、むしろ自身こそが神であるかのごとく振る舞う様は周囲を大いに恐怖させ、絶対王としての存在感はまさに絶対であった。
「急ぎ里長に知らせる。忍衆は覇王軍への
「はっ!」
「恐れながら、気になる情報が」
間髪入れずに忍衆の報告が入る。
「申せ」
「覇王軍の参謀本部隊に”
——私の教えを修了した者に与える万屋の姓……やはり先ほどの夢は予知夢であったか!
覇王軍は進軍を開始する前から、夜襲に特化した精鋭部隊を既に螺旋塔に配していた。
遺宝兵装である
里の守人たちに彼らを索敵出来る術は無い。
その時が迫る。
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