六
無機質で、大きな牢獄のような薄暗い病院。
コツコツと3人分の足音が廊下に響く。
僕と隼人、神楽は碧の言っていた《一色病院》を訪れた。
病室をノックして、扉を開ける。
『……!』
息を飲む。
病室に横たわっていたのは、白髪の若い女性。
そして、女性の手を握って俯く少女。
『碧…………』
少女は、ゆっくりこちらを振り向いた。
「碧ちゃん、その子は」
神楽が碧に問いかける。
碧は一息ついて、立ちっぱなしの僕らを座るよう誘導した。
「わたしの育ての親、透霞さん。
もうずっと目を覚ましてない」
碧は女性……透霞さんをじっと見つめる。
白くて綺麗な肌、整った顔には人工呼吸器が被せられている。
彼女は静かに、眠っていた。
『記憶は……思い出せたのか?』
「はい。この身に起こった事、全て」
その言葉に、安堵する。
一方で、碧の表情が暗い事に、胸の痛みを覚えた。
綺麗な瞳の下には、青黒いクマが浮かぶ。
元々痩せていたのに、さらにやせ細ってしまったようだ。
見かねた隼人は、碧に話しかけた。
「あまり食べてないのか」
『自分の感情と……皆さんへ迷惑をかけている事。
色々考え出したら食べる気が起きなくて』
碧はそう言って、自分の細い腕を隠すように撫でた。
「皆さん、聞いてくれますか」
その問いに、僕ら3人は頷く。
「私の、
_________罪の記憶を」
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