無機質で、大きな牢獄のような薄暗い病院。

コツコツと3人分の足音が廊下に響く。


僕と隼人、神楽は碧の言っていた《一色病院》を訪れた。




病室をノックして、扉を開ける。



『……!』



息を飲む。






病室に横たわっていたのは、白髪の若い女性。

そして、女性の手を握って俯く少女。




『碧…………』





少女は、ゆっくりこちらを振り向いた。




「碧ちゃん、その子は」



神楽が碧に問いかける。



碧は一息ついて、立ちっぱなしの僕らを座るよう誘導した。



「わたしの育ての親、透霞さん。

もうずっと目を覚ましてない」



碧は女性……透霞さんをじっと見つめる。



白くて綺麗な肌、整った顔には人工呼吸器が被せられている。



彼女は静かに、眠っていた。





『記憶は……思い出せたのか?』



「はい。この身に起こった事、全て」




その言葉に、安堵する。

一方で、碧の表情が暗い事に、胸の痛みを覚えた。




綺麗な瞳の下には、青黒いクマが浮かぶ。

元々痩せていたのに、さらにやせ細ってしまったようだ。

見かねた隼人は、碧に話しかけた。




「あまり食べてないのか」




『自分の感情と……皆さんへ迷惑をかけている事。

色々考え出したら食べる気が起きなくて』




碧はそう言って、自分の細い腕を隠すように撫でた。






「皆さん、聞いてくれますか」




その問いに、僕ら3人は頷く。







「私の、






_________罪の記憶を」


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