三
碧の友達が詳しく調べてくれたおかげで「とうかさん」の詳細な情報を掴むことが出来た。
本名は「
華奢で白い髪の若い女性らしい。
今なら33歳になっているそうだ。
そして、神楽の多種多様な人脈により透霞さんを知っている人物が現れた。
今の透霞さんと同い年くらいの男性だ。
彼の前に座る。
「えーと……透霞について知りたいんだよな?」
彼は訝しげにこちらを見る。
『はい。知ってる事を全部、教えて頂けないでしょうか』
「そうは言っても、いなくなってだいぶ経つからな」
『碧を育てている間、失踪したと聞きました』
彼は僕のセリフを聞くと、あ!と何かを思い出したような顔をした。
「そうそう碧ちゃん。あいつ23の時に引き取って育ててたんだよひとりで。俺も会ったことある。
大人しいけど実親に捨てられたとかなんとかで結構こじらせた子だったよ」
『碧もご存知なんですね』
「ああ、でも最後に会ったのはかなり前だな。
透霞も、失踪してから3年は経つ。
あいつも色々あったんだろうな。」
彼はそう言うとコーヒーを啜った。
悲しそうな表情が読み取れる。
『失踪の理由に心当たりはありますか?』
「うーん……あいつの家じゃねえかな」
『家?』
僕の問いかけに、彼は自分の携帯の画面を見せながら言う。
「あいつの実家、彩織家は真宮家の分家なんだよ。
真宮は聞いたことあるだろ?
ほら、不動産とか施設の経営してるでかい家だよ」
『CMで見た事あるな』
「そう、一族で家業やってるらしい。
だからかすげえ厳しくて冷たい家らしくてさ。
透霞はそんな実家が嫌いだったし、
碧ちゃんは本家で虐められてて親にも捨てられて
だから嫌われ者同士一緒に住もうと思った
みたいなこと言ってたよ。」
『碧は……真宮家の人間ってことですか?』
「そうなんじゃないかな。
だからちゃんと育ててたはずなのに、
急に居なくなるってことは、
余程のことがあったんじゃない?」
『……なるほど』
どうやら僕たちが関与できるレベルの話じゃなくなってきている。
本家やら分家やら縁のない話ばかりで頭も混乱してきた。
『家……後継争いとか?』
「そんな感じじゃないかな。
詳しくは全然知らないけど、とことん嫌がってたんで」
『そうですか……』
これ以上聞けることは無いようだ。
『すみません、今日はお時間頂いてありがとうございました。』
「いや、こんなことなら全然。
こんなこと頼むのも変だけど……」
『はい?』
彼は僕の目を見つめて言った。
「透霞にはだいぶ世話になった。
碧ちゃんも、どうか見つけてやってくれ」
『はい。任せてください』
そう言うと彼はほっとした顔をして、背中を向けた。
本人から了承を得ずにプライベートなことを掘り起こすのは気が引けるが、記憶の無い彼女が何かの事件に巻き込まれているかもしれないと思うとそんな事は考えていられない。
次に行く所は決まった。
神楽に電話をかける。
「真宮家」を追えば、彼女を見つけられるはずだ。
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