六章 憂色の軌跡
一
それは突然だった。
碧が音も無く姿を消した。
バイトは無断欠勤、練習にも顔を出さない。
それどころか電話に出ない。連絡もつかない。
自宅まで赴くも誰も居ない。
何かあったのではないか。事件に巻き込まれたのではないか。
未成年だし誰かに狙われていたら____
「悠!しっかりしろ!」
耐え難い吐き気に、意識朦朧としていると背中をバンバン叩かれる。
見上げた隼人の顔も、不安げだった。
「とにかくもう2週間も経つ、警察に行こう。
あいつ身寄りないんだから俺らがしっかりしないと」
『すまない』
「急にバンド嫌になって家出してるだけかもしれないし、皆くたばってたら帰ってきた時誰も暖かく迎えられないじゃん」
相変わらず超がつくほど楽観的な神楽に、今は少し救われた。
「あとこの際家の中も調べてみたらどう?
碧ちゃんが困ってるなら助けてあげたいし、何か手がかりあるはずだよ」
「それ碧さんの部屋みたいだけじゃん」
「そ、そんなわけないし……」
この変態が!と喧嘩を始める2人。
もう止める気にもなれないが、やる事は決まった。
2人を仲裁しながら、SNSにある文面を投稿する。
"Recollectionを応援してくださっている皆様へ___Aoiについてのお知らせ
_____当ボーカル"Aoi"と先月から一切連絡が取られない状況にあり、只今警察に届出を出し捜索してもらっています事を遅ればせながらご報告させて頂きます。
その為、活動を暫く休止させて頂きます。
決まっているライブのチケットの払い戻しについては、また後日アナウンスさせて頂きます_____
送信されたのを確認し、顔を見合せた。
2人とも「やる事はひとつ」と言いたげな表情をしていた。
こうして僕らの、記憶を辿る旅が始まった。
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