二
少しお高めの喫茶店に入ると、アイスコーヒーとオムライスを注文した。
ほくほくの卵とライスを頬張って幸せを噛み締めていると、同じくオムライスを食べている途中の悠が話しかけてきた。
「ああいうの、前も隼人に再三注意されてたけど大丈夫そうなの?」
痛いところを突かれ、思わず吹き出しそうになってしまう。
何とか口を押え、飲み込んでから返事をした。
「大丈夫だよ、前も言ったけど俺は何も悪いことしてない。勘違いされやすいだけ」
悠は少しムッとして、答える。
「わかってると思うけど『Recollection』もだいぶ軌道に乗っていい感じなんだから、変な事起こさないように気をつけて欲しいんだ」
「変な事ねぇ」
「SNSのフォロワーも増えてきただろ?それこそ晒されて炎上とかさ」
「ナイナイ。晒されるような事してないんだから。信じてよ」
そう言うと、悠はため息をついて食事を再開した。
「碧の為にも余計な面倒事増やしたくないんだ、手がかり探して毎日走り回ってるからさ」
「…それはそうだね、俺はあの子泣かしたくないもん」
「他の女の子なら泣かせてもいいみたいな言い草だな。はやくバチ当たれ」
「悠も俺には当たり強いよな!?そんな性格じゃないだろ!?」
悠は口元を抑えて笑う。なんだかんだ良い奴だ。
いい加減で適当で、人の事を泣かせて苦しませてばかりの俺と一緒にいてくれる。こうやって励ましてくれる。
唯一打ち込めたのも、悠達とのバンドだった。
悠には恩しかない。
「あ、ごめんこれから打ち合わせあるんだった、先帰るな」
悠はそう言って2000円机に置くと、手を振りながら急いで出ていった。
嵐のような奴だなと思いながらも、それは俺もか、と自嘲気味に笑う。
いつまでも1人でここにはいられない。
俺も食べ残した目の前のオムライスを早めに平らげ、店を後にした。
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