また、同じ夢を見ていた

1、

「住野よる」氏の『また、同じ夢を見ていた』。

 私が、住野よる氏の作品を読むのは、『君の膵臓をたべたい』『この気持ちもいつか忘れる』に続き3作目だ。


 この小説は、ひとりの小学生の少女の物語だ。少女が、様々な人たちと関わり成長していく。

 そして、同時に学校の国語の宿題である「幸せとは何か」の答えを探し続ける。



2、

 だった。

 物語の中では、ひとは時空を飛び越えられる。

 以前読んだ、住野よる氏の『この気持ちもいつか忘れる』や、七月隆文氏の『ぼくは明日、昨日の君とデートする』みたい。



 子どもには戻れない。

 でも、子どもの頃の想いを思い出すことはできる。


「大人は子どもと違って過去を見る生き物だから」

 はじめは、悲しいマイナスの言葉のように思えた。

 しかし、違う。


 子どもにとっては未来の時間が多く、大人にとっては過去の時間が多い。

 自分の過去を見るのは、悪いことか?

 過去から生み出されるものも多い。過去の経験が教えてくれる。過去の出来事が今の私を救ってくれる。

 長く生きていると、そういうこともあると思う。



3、

 他の人のレビューを見ていると、「南さんとアバズレさんは、もしかしたらそうなっていたかもしれないというパラレルワールドの主人公で、おばあちゃんは未来の主人公なのではないか」という考察をされていた方がいたが、私は違うと思う。3人ともパラレルワールドの主人公だと思いたい。


 だって、おばあちゃんは「絵描きの彼」のことを「友達」で「家族と一緒に海外で暮らしている」と言った。

 おばあちゃんは、自分の人生を「幸せだった」と言った。

 だからいい。そのままの人生でいいのかもしれない。

 しかし、「彼のプロポーズ」を受ける、主人公の未来を見たいからだ。



 物語っていうのは、読者に様々なその後を想像させる余地を残してこそ、素敵な作品ね。

 そう、思わせてくれた。

 二次創作が盛んな作品こそ、素晴らしい作品なのかもしれない。



4、

 主人公の少女は、漫画『ピーナッツ』に出てくるチャーリーの「とてもかしこくて、魅力的なジョーク」が好きだ。

 作中に、人生とは〇〇だ、という表現がたくさんでてきて、おもしろい。


「人生とは、素晴らしい映画みたいなものよ」

「お菓子があれば、一人でも十分楽しめるってことよ」






住野よる(2016)『また、同じ夢を見ていた』,株式会社双葉社

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