いまを 生きる あなたへ 贈る詩50

1、

 図書館でふと手に取った詩集。

 小説やビジネス書、実用書などは読むが、私はこれまで詩集というものを読んだことがなかった。

 新しい世界に出会えると思い、ページを開いた。



「いまを生きるあなたへ贈る」というタイトル通り、私の内部に染み込んでくる言葉がたくさんあった。

 たくさんの詩を取り上げたいところであるが、ここではその中から3つを取り上げることにする。



2、

 まず1つ目は、星野 富弘 氏の『しょうぶ』。



 しょうぶ


 黒い土に 根を張り

 どぶ水を 吸って

 なぜ きれいに咲けるのだろう

 私は

 大ぜいの人の 愛の中にいて

 なぜ みにくいことばかり

 考えるのだろう




 たくさんの人の愛の中にいながら、つらさを抱えている私。

 どうしてこんなに苦しみの中にいるのだろう。


 親から虐待を受けているわけではない、壮絶ないじめを受けているわけではない、リアルなりオンラインなりでも、ひとりも友達がいないわけじゃない。

 愛の中にいるはずなのに。

 そして、餓死することもない、凍死することもない、雨ざらしになることもない。

 そんな恵まれた環境にいながら、苦しみもがいている、全ての現代人に感じてほしい。



3、

 2つ目は、この詩集の編者である、二瓶 弘行 氏の『これから誰かを好きになる人へ』。



 これから誰かを好きになる人へ


 一人のひとを好きになろう。

 自分とはちがう、素敵な考え方、感じ方、生き方。

 そんなひとに出会うと、強く心がときめく。そのひととずっとずっと一緒にいたくなる。


 一人のひとをもっと好きになろう。

 自分にはない、人間としての輝き。大きさ。優しさ。

 そのひとに憧れ、そのひとに近づくために、きっと今の自分を見つめ直す。

 ひとを好きになることは、自分を少しでも素敵な存在に高めようとすること。


 一人のひとをもっともっと好きになろう。

 自分の想いを伝えることの難しさを教えてくれる。

 自分の想いが伝わらないことのもどかしさを教えてくれる。

 自分の想いが伝わることの嬉しさを教えてくれる。


 一人のひとをもっともっともっと好きになろう。

 会いたくても会えないことの切なさを、きっと知る。

 自分が人間として未熟な存在であることを、きっと知る。

 ひとを一途に想うことの苦しさを、きっと知る。

 ひとりぼっちの寂しさを、きっと知る。


 だから、

 一人のひとを好きになろう。

 自分が自分であるために。




「ひとを好きになることは、自分を少しでも素敵な存在に高めようとすること」

 この詩を読んで、自己肯定感が少しでもなければ、自分のことをほんの少しでも愛していなければ、人のことを好きになれないんじゃないかな、と思った。


 もう何年も、人を好きになれない私。

 それは自分に自信がないから。劣等感があるから。私なんか、って思っているから。

 そう気付くことができた。


 二瓶氏は、現実の中での「恋愛をしよう」という意図で、この詩を書いたんだろうと思う。

 でも私みたいに、頑張ってもずっと人を好きになれない人は、無理やり誰かを好きになろうとしなくても、

 同性でも、芸能人でも、アニメのキャラクターでも、それはいいんじゃないかなって思った。


 ひとを好きになることは、自分が自分であるために必要な感情であり、経験であるんだと思えた。



4、

 最後に、誰もが知る名曲、岡本 真夜 氏と真名 杏樹 氏の『トゥモロー』



 トゥモロー


 涙の数だけ強くなれるよ

 アスファルトに咲く 花のように

 見るものすべてに おびえないで

 明日は来るよ 君のために


 突然会いたいなんて

 夜明けに何があったの

 あわててジョークにしても

 その笑顔が悲しい


 ビルの上には ほら月明かり

 抱きしめてる 思い出とか

 プライドとか 捨てたらまた

 いい事あるから


 ~


 涙の数だけ強くなろうよ

 風に揺れている花のように

 自分をそのまま 信じていてね

 明日は来るよ どんな時も


 明日は来るよ 君のために




「抱きしめてる 思い出とか プライドとか

 捨てたらまた いい事あるから」

 幸せだった頃の思い出とか、上手くいっていた過去のプライドを、抱きしめ続けているから幸せになれないの?

 全部捨ててイチからはじめたつもりだったけど、もう一度全て捨ててゼロから始めれば、私は幸せになれるのだろうか。


「自分をそのまま 信じていてね」

 のところも、前を向いて生きて行く上で、大切なことだと思う。



5、

 この詩集を読んで、文学を自分の中に取り入れること、自分を文学として表現すること、の大切さを改めて感じることができた。

 文学と共に生きる人間になりたいと思った。




※学者でも専門家でもない筆者の、学生の読書感想文に毛が生えたような、大人の読書感想文である。

 間違った箇所がある場合は、暖かく指摘していただけるとありがたい。


二瓶 弘行(2007)『いまを 生きる あなたへ 贈る詩50』,株式会社東洋館出版社

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