第12話 (コメント採用回)スキル定着スクロールの発見

「なんだ、その宝箱を開けてえのか?」

 イグナイトスティールが突然僕に質問してくる。ずいぶんと当たり前のことを聞くな。

「そりゃあね、せっかくの宝箱だもの。」


 しかも中にはレア度の高そうな剣と、薄い紫色のスクロールが入っていたんだ!

 紫色のスクロールは、スキル定着スクロールだ。欲しいに決まっているよ!


 ちなみに濃い紫のものがレア度が高いものだから、薄い紫色となるとそんなに期待は出来ないけど、僕の目標は人に言えるようなスキルを手に入れることだからね。


 そこまでレアである必要もない。人に言えればいいんだ。だから絶対に手に入れたい!

「どうにか出来るの?」


「──俺の名前を言ってみろ。」

 突然変なことを言い出す。

「え?イグナイトスティール、でしょ?」


「そうさ。俺の名前は硬質な鋼という意味であるのと同時に、盗みに特化してることを表してるのさ。鍵開けくらいお手の物だぜ。フェルディナンドと冒険してた時は、よく俺が鍵を開けてやったもんさ。」


「おじいさまと!?おじいさまは高難易度のダンジョンばかり潜っていたものね。つまりそのレベルでも開けられるってことだね?」

「まあそういうことだな。」


「みんな!イグナイトスティールが、宝箱の鍵をあけられるって!」


 それを聞いたみんなが、わあっと盛り上がる。僕らのパーティーには盗賊がいないからね、諦めるほかなかっただけに嬉しそうだ。


「さすがはわたくしのイグナイトスティールさまですわ!」

 アリシアの喋る武器、ストームホルトも何やらウットリしている。


「俺の先端を鍵穴に差しな。」

 イグナイトスティールがそう言うので、僕は先端を鍵穴に突っ込んでみた。


 イグナイトスティールが光って、カチャリと音がしたかと思うと、

「──開いたぜ。」

 とイグナイトスティールが言った。


 さっき中身を事前に確認出来たから、ミミックやコインムシでないことは確認済みだ。

 僕はさっそく宝箱の蓋を開けてみた。


 中にはやっぱり薄紫のスキル定着スクロールが入っていた!僕のお目当てはこれなんだよね!凄い嬉しいよ!


 さっそくワクワクしながらスキル定着スクロールを開いて、なんて書いてあるのか確認した。そこには一言こう書かれていたんだ。


 <鼻がスーッとする>


 ……。

 く、くだらない。せっかくのスキル定着スクロールなのに、こんなのってアリ!?

 僕がガッカリしていると、


「それ、スキル定着スクロールでしょ!?どんなスキルだったの?早く見せてよ!」

「あ……。」


 僕の手からスキル定着スクロールを奪おうと手を伸ばしたゾフィーが、僕の手にぶつかったことで、僕の手からスキル定着スクロールが離れて空中に舞い上がる。


 すると放り投げたことになったのか、スキル定着スクロールが紫色に光って、紫色の炎とともに燃え尽きてしまった。


 神の福音の声が聞こえる。


 スキル<鼻がスーッとする>を習得しました。


「あ、ご、ごめんなさい、使ったことになっちゃったみたい……。」

 ゾフィーが申し訳なさそうに言う。


 スクロールは空中に放り投げることで使用可能になるものなんだよね。魔法を使った契約書と同じ仕組みらしいけど。


「で、でも、マクシミリアンさんに定着したことで、無駄にはならなかったわけだし!」

 アリシアがそうフォローする。


「そ、そうね!どんなスキルだったの?」

 ゾフィーが尋ねてくる。

「鼻がスーッとする、だって……。」

「え……。」


 ゾフィーも思わず二の句が継げなくなる。

「せっかくの貴重なスキル定着スクロールなのに、そんなことってあるんですの?」

 エリザベートが驚いている。


「うん、そういうのもあるみたいだね、残念だったけど……。」

 僕は力なくそう言った。


「ま、まあでも、風邪を引いた時にはいいんじゃない!?鼻が詰まることがなくて困らなそうで!」

 慰めのつもりなのかゾフィーが言う。


「う、うん、そうだね、ありがと……。」

 未だかつてない期待をした分、ガッカリ感が今まで以上だよ。


「あ!宝箱の中に剣が入ってるじゃない!」

 エリザベートがもう1つ見つけた剣を、宝箱の中から拾おうとすると。


「待って!エリザベート!」

 ゾフィーが止める。

「え?」

「その剣……何かおかしいわよ……。」


 ゾフィーは剣の異変を感じ取っているみたいだ。でも僕には何も感じ取れない。

「……そう?」

「ええ。」


「じゃあ……僕が触ってみるよ。」

 僕は剣を拾う。すると……。

 バチバチバチバチィッ!!

「うわっ!」


 僕の体に、電撃が走った!

「マクシミリアン!?」

 ゾフィーとエリザベートが駆け寄る。アリシアが僕を回復魔法で癒す。


「ありがとう……。」

「ちょっと見せて?」

 ゾフィーは僕の体をチェックする。そして突然顔色を変えると……。


「やっぱり……この剣、呪われてるわ!」

 それを聞いたエリザベートとアリシアと、ゾフィーの3人は僕から距離を取る!

「え!?なんで!?」


 僕は距離を取られたことに驚く。

「あ、危ないですわ!近づいたらみんなも呪われてしまいますわ!」

 エリザベートが叫ぶ。


「え?僕、もう呪われてるの!?」

「ええ……。その剣を触ったことで、呪いが移ったのよ……。」

 ゾフィーが言う。


「そ、そんなぁ……。」

 僕はガックリと項垂れた。まさかこんなことになるなんて……!僕のスキル定着スクロールが無駄なスキルだったばかりか、剣に呪われちゃうだなんて!


 おまけにみんなに距離を取られてしまった。僕はショックで泣きそうになる。

「そんなに落ち込まないでマクシミリアン!呪いは解呪出来るらしいわ!」


 エリザベートがそう慰めてくれるけど……。

「大丈夫よ!最悪、解呪師に頼めばいいじゃない!」


 ゾフィーもそう言ってくれる。でも解呪師に頼むにはお金がかかるからね。今は貧乏だし。おじいさまやお父さま、お金出してくれるかなあ?自力で解決せいって言われそう。


 ていうかそもそも、この剣の呪いってなんなの?

「ねえ、この剣に付いてる呪いってなんなの?ゾフィーはわかる?」


「わからないわ、聖属性と反発する、強い力だってことくらいしか……。」

 僕が尋ねると、ゾフィーが答えてくれる。


「わたくしわかりましてよ!」

 とストームホルトの声がした。

「わかるの!?ストームホルト!!」

 アリシアがストームホルトを見る。


「わたくしの名前、ホルトは、権能を持つ神の名前。呪いを看破するくらいわけありませんわ。……んん……。その武器の呪いは、ランダムで持ち主のスキルを封印することですわね。他の人に影響はありません。」


「え?それだけ?」

 僕、封印されて困るスキル、ひとつも持ってない。思わずホッとしてしまう。みんなはとても可愛そうな目で僕を見てるけど。


「レベルが上がれば、ランダムではなく、指定したスキルの封印も出来るようですわね。それに、更にレベルが上がれば、他人のスキルも封印出来るようになりますわ。」


「なにそれ、凄いじゃないか!」

 敵のスキルまでもいずれ封印出来るようになるなんて、むしろ最高じゃないか!


「いいもの手に入れちゃった!」

「ええ?いいの?マクシミリアン。スキルが封印されちゃうのよ?武器のレベル上げを、スキル無しでやることになるのよ?」


 ゾフィーがそう言ってくるけど、

「うん、僕は問題ないかな。」

 日頃からスキル無しで戦ってるしね!


 なんなら発動されたくないエッチなスキルを封印してくれようものなら、それこそ願ったり叶ったりだよ!


「ストームホルトのおかげで、人に移らない呪いだってこともわかったし、マクシミリアンがそれでいいなら先に進みましょうか。」

 エリザベートがそう提案する。


「そうね、そうしましょう。もっと良い宝箱にも巡り会えるかも知れないわ!イグナイトスティールがいれば、盗賊がいなくても鍵が開けられることもわかったしね!」


 ゾフィーが明るく言う。

「そうですね!行きましょう!」

 アリシアがそう応じて、僕らは4階層のフロアへと降りる階段へ向かった。


 先程までの森や草原エリアと違って、空が薄暗くて、腐りかけたようなツタが木の間から垂れ下がっているような、なんとも陰鬱な気分になる、暗いエリアだった。


「ウッ、なにここ、ひどい臭いね……。」

 ゾフィーが思わず鼻をつまむ。

「泥溜まりの湿地帯みたいですね……。」

 エリザベートが言う。


「そう?僕感じないけど……。」

「スキルのおかげなんじゃないですか?」

 アリシアがそう言ってくる。


 鼻がスーッとするってやつ?

 ……地味に使えてるのが悔しい。

「こういう場所によくいる魔物って言うと、やっぱり毒を持つのが多いけど……。」


 そう言っていると、ポコン、ポコン、と空気の塊のような大きな泡がいくつも浮かんで着たかと思うと、弾けた大きな泡が、毒属性の泥の魔物、ベトベトへと変換した!


 緑のスライムは衣服だけを溶かして食べるけど、ベトベトはそれこそなんだって食べるんだ。武器だろうとなんだろうと。だから近接職にはとても戦い辛い相手なんだ。


「ベトベトだわ!」

「ここはエリザベートに任せて、私たちは援護に回りましょう!」

「はい!」

「うん!」


 魔法使いのエリザベートを攻撃の要とし、エリザベートを守る布陣を敷いた。ベトベトは魔法耐性が弱いから、魔法使いが天敵だ。


「うう……、それにしても臭くて、呪文が唱えづらいわ。」

 エリザベートが顔をしかめる。


「いつまでも息を止めてらんない!エリザベート!早く倒してよ!」

 ゾフィーが泣き言を言った。


「僕が衝撃波の斬撃で援護するから、頑張って!エリザベート!」

「やるのは俺だろ。」


「イグナイトスティールはちょと黙っててよ!わかってるから!」

「私もストームホルトで援護します!」


「じゃあ私がエリザベートに向かってくるベトベトを、近付けさせないようにする役目ってことね!」


 それぞれが役割を決めて、僕らは配置についた。その間にも、泥溜まりからは大きな空気の泡のようなものが浮かんで、新しいベトベトたちが姿を現していた。


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 マクシミリアン・スワロスウェイカー

 年 齢:15歳

 性 別:男

 種 族:人間族

 レベル:24

 H P:185

 M P:154

 攻撃力:101

 防御力:89

 俊敏性:82

 知 力:105

 称 号:

 魔 法:

 スキル:勃起不可、逆剥けが治る、足元から5ミリ浮く、モテる(猫限定)、目薬を外さない、美味しいお茶を淹れる、体臭が消せる、裸に見える、雨予報(15秒前)、カツラを見抜ける、塩が見つかる、上手に嘘がつける、快便になる、他人の才能の芽が見える、相手がほんの少し素直になる、植物が育ちやすくなる、おいしい水が手に入る、悪口が聞こえる、肩もみがうまくなる、寝坊しなくなる、ラッキースケベが起きる確率が上がる、パンツが見えそうになる、パンツの種類を言い当てられる、相手が一番喜ぶプレゼントが分かる、魚が寄ってくる、中身が確認出来る、鼻がスーッとする。

 状 態:呪い〈ランダムでスキルを封印する〉

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 まだ冒険を続けますか?

 ▷はい

  いいえ



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