第11話 使えるスキルを手に入れ……た?
この間の初心者向けダンジョンが、イレギュラーの出現で封鎖されてしまったので、僕は別の初心者向けダンジョンに来ていた。
……というか、ほんとは3人と、次はここに来ようって話してたのになあ。
僕は今1人だ。3人のパンツを見てしまったというあらぬ疑いにより。
と、思ってたんだけど。
「アリシア!」
アリシアがダンジョンの入り口で、武器を手に僕を待っていてくれた。
「来てくれたんだね……。」
「だって約束しましたよね?」
アリシアはキョトン顔だ。うう、優しい。
「私たちもいるわよ?」
「ゾフィー!エリザベート!僕もう呆れられて、来てもらえないかと思ってた……。」
「あの時はね。確かに正直に言わないからと思って呆れちゃったけど……。」
「ね。ほんとに見てない可能性を、考えてあげられてなかったなって思ってね。」
「うう……。ありがとう。ほんとに見てないんだよ!だから疑われても、そうとしか言えなくてどうしたらいいかわからなくて……。」
「泣かないで、マクシミリアン。」
「そうですよ。これからちゃんと関係をきずきなおせばいいんです。」
「ありがとう……みんな……。」
3人の言葉に僕はホッとした。やっぱり3人とも優しいなあ。
今日のダンジョンは、ダンジョンボスがロック鳥というCランクの魔物だ。今の僕らにはまだ倒せないけど、成長すれば倒せる可能性のあるレベル。それがCランクだ。
下位の階層に降りるまでに、少しでも強くなれていれば、パーティーで挑むなら少しだけ倒せる可能性があるんだよね。ただし初心者の場合6人パーティーなら、だけど……。
今日は無理でも倒せるようになりたいし、どの程度強いのかは、出来れば肌で感じておきたいなって思っているんだ。
「ロック鳥はね、風属性の鳥型魔物で、羽がとても硬いんだ。だから、その羽をどうにかしないと攻撃が通らないんだって。」
「そうね。」
「だから、まずは羽をどうにかしたいんだけど、たどり着くまでに少しでもレベルを上げておきたいって思う。それとね……。」
僕は3人に作戦を説明する。3人は僕の作成を聞いて頷いてくれた。
「じゃあ、今日はダンジョンボスが倒せるようになるまで、みんなでレベル上げだね。」
僕はニコニコとそう告げた。
「じゃあ、行くよ!」
僕たちはダンジョンに入っていく。
今日のダンジョンは前回のダンジョンと違って、1階層から10階層まである。特に1階層には弱い魔物しか出ないから、最初心者向けのダンジョンと言われているね。
「ロック鳥は10階層のボス部屋にいるはずよ。」
エリザベートが僕に言う。
「うん、そうだね。」
僕たちのレベルなら、もちろんレベル上げをしつつにはなるけど、9階層までは問題なく行けるはずだ。
僕たちは慎重に1階層ごとに進んでいく。
1階層目は普通にゴブリンで、2階層目はゴブリンとスライムだった。問題なく切り抜けて3階層目まで降りた時だった。
「あっ!」
エリザベートが驚いて声を上げた。
見ると、ダンジョンの奥からゴブリンたちがこちらに向かってくるのが見える。ゴブリンが上の階層よりもたくさんいるのはまだ良いとして、問題はその種類だ。
この3階層目からは普通のゴブリンじゃなく、魔法を使うゴブリンメイジが出るんだ!
しかも1体や2体じゃない。20体はいる。きっとここはゴブリンの集落なのだろう。
「ちょっとまずいわね……。」
エリザベートが呟くように言うと、3人は武器を構えた。
「私が魔法で援護するわ。」
「私は、ゴブリンメイジの相手をします。」
「じゃあ、僕は普通のゴブリンだね。」
僕らはそれぞれの相手を決めると、ゴブリンたちに向かっていった
エリザベートは魔法を使ってゴブリンメイジを1体ずつ確実に倒していく。エリザベートは風属性の魔法が使えるから、風で切り裂いたりして倒すことができるんだ。
前回のダンジョンの時よりも、エリザベートの魔法の扱いがとても上手い。
ゾフィーはゴブリンメイジの攻撃をかわしながら、剣で1体ずつ確実に倒し、最後は魔法剣でとどめを刺す。ゾフィーの剣術は、力強さと素早さを兼ね備えたものだ。
ゾフィーの戦い方はとても綺麗で、見ていて惚れ惚れする。
そしてアリシアだ。アリシアはゴブリンメイジの魔法を剣で防ぎながら、ゴブリンたちを倒していく。アリシアの剣技は力強さが持ち味だ。さすが勇者候補という感じがする。
普通のゴブリンの相手もしながら、ゴブリンメイジを容赦なく倒していく。
「はあ!」
僕は剣を振る。1体、また1体とゴブリンを倒していく。だけど、正直数が多い!
やっぱりどこかにコロニーがあるよ!
「いたっ!」
アリシアが声を上げて右腕を押さえてる。見ると腕から血が流れていた。きっとゴブリンメイジの攻撃でできた傷だろう。
「きゃあっ!!」
振り向くとエリザベートも魔法を跳ね返せずに、魔法をモロに受けてしまっている。
まずい!このままじゃ、みんながやられてしまう! そう思った瞬間だった。急に身体が軽くなり、力がみなぎり始めたんだ!
きっとレベルが上がったんだろう。なんだか今なら何でもできそうだ!僕は剣を横薙ぎに振るう。すると、剣から斬撃が飛んでいき、ゴブリンたちを切り裂いた!
「え?何これ?」
僕は思わず呟く。そしてもう一度剣を横に振るうと、また斬撃が飛び、ゴブリンたちを切り裂いた!なにこれ、凄い!
「やったあ!」
僕は思わず叫んだ。
「凄いわ!マクシミリアン!今の何?」
エリザベートが興奮気味に言う。
「わからないよ……急に身体が軽くなって、それで……。」
「きっとレベルアップしたのよ。」
ゾフィーが言う。
確かにそうかもしれない。でも、どうしていきなりこんないい攻撃方法を手に入れたんだろう?今までこんなことなかったのに。
「とにかく、これで4階層の魔物と戦えますね!」
アリシアの言葉に僕は頷いたのだった。
4階層の魔物は、ウルフ系の魔物で、鋭い牙と爪が武器だ。1体ずつなら、今の攻撃方法が使えるのなら大丈夫だろう。
僕は次々と斬撃を飛ばした。斬撃の形をした衝撃波みたいなものだと思う。一度に何体ものゴブリンを切り捨てることが出来た。
「マクシミリアン!凄い!」
ゾフィーが僕の方を振り返りながら言う。
エリザベートもアリシアも驚いた顔をして僕を見ている。僕、レベルアップで凄いスキルを手に入れたのかも!?……あれ?
レベルアップの福音が聞こえなかったな?
聞き逃した?でも……。
「──どうやら久しぶりにレベルアップしたようだな。いい気分だぜ。」
とイグナイトスティールの声が聞こえた。
「え?今のイグナイトスティール?」
「俺がレベルアップしたことにより、新たな力を手に入れたようだ。」
「ちょ、僕じゃなかったの!?」
なんだよ!やっといいスキルを手に入れたと思ったのに!ガッカリだよ……。
でも今はそんな話をしている場合じゃない!僕は次々とゴブリンたちを斬り伏せる。そして最後の1体を斬り伏せた時、僕はようやくレベルが上がった!
神の福音の音がする。
レベルが24になりました。
HPが1上がりました。
MPが2上がりました。
攻撃力が3上がりました。
防御力が1上がりました。
俊敏性が2上がりました。
知力が2上がりました。
スキル、〈中身が確認出来る〉を習得しました。
うん……安定のしょうもなさだね。
うん、知ってた。
第3階層のすべての魔物を倒すと、壁があいて中に入れる空間が現れた。こういう時は中に宝箱が入っていたりするんだよね!
「さ、中に入りましょう?」
僕たちはワクワクしながら、宝箱があるであろうスペースの中に入って行った。
宝箱はもちろん罠の可能性もある。ミミックっていう、宝箱に擬態した魔物もいるし、コインムシっていう、金貨に偽装した魔物もいたりするからね。慎重にいかないと。
「あ、マクシミリアン!この宝箱、ぜんぶ鍵がかかってるわよ。」
エリザベートが宝箱に触れて声を上げる。
「ほんとだ!鍵がかかっているってことは、罠の可能性もあるってことだね!危ないから僕が開けるよ!魔物だったら倒して!」
僕は宝箱に駆け寄り、宝箱の鍵を開けた。すると……。ギィイイ〜ガコン!と大きな音がして、宝箱がパカッと開いた。
「え?」
3人が驚いている。
「どうしたの?3人とも。」
「宝箱が……開いたの……?」
「すごい……。」
3人は驚いている。
「え?すごいことなの?」
僕はすごく疑問に思ったので聞いてみた。すると。
「そりゃそうでしょ!宝箱は鍵がかかってると、罠じゃない限り、鍵開けスキルを持ってる人がいないと、絶対に開かないんだから。」
エリザベートが説明してくれる。
「だから、マクシミリアンは凄いのよ!」
エリザベートとゾフィーは手放しで褒めてくれるけど……。これは偶然なのかな……?
たまたまだよね?こんな都合のいい能力ってあるのかな? 僕はそんな事を考えていたけど、3人は僕が宝箱を開けたことがよほど嬉しいのか、僕の能力を褒め続けていた。
でも、なんであいたのかなあ……。
──あ!ひょっとして、新しく手に入れた〈中身が確認出来る〉のおかげってこと?
いつも通りなら、てっきり中身がわかっておしまいってだけのスキルだろうと思ってたんだけど、くだらないスキルじゃなかったんだ!これは凄いぞ!ようやく人に言えるよ!
僕の求めていた剣士のスキルでこそないけど、盗賊のスキルだってことにすれば、鍵開けが出来るのは需要があるからね!
……まあ、ほんとの鍵開けじゃないから、宝箱以外には通用しないんだろうけど……。
もしもこれが罠のあるものだった場合、盗賊の鍵開けスキルはそれを看過出来るんだ。
そこまでのことが出来たら最高なんだけどなあ……。そう思っていると、蓋が開いたはずの宝箱が、目の前で再び音を立てて閉まってしまった。え?どゆこと?
蓋に触っちゃったのかな?そう思ってもう一度開けようとすると、今度は開かない。
「どうしたの?マクシミリアン。」
「開いた筈なのに開かなくて……。」
さっき中身を確認して、ミミックでもコインムシでもなかったから、どうにかして中身を手に入れたいのにびくともしない。
「ま、まさか……。中身を確認して終わり?」
僕のスキルを読んで字の如く考えると、そういうことになる。
「ごめん、僕のスキルで開いたみたいなんだけど、中身を確認出来るだけで、実際に開いたわけじゃないみたいだ……。」
そう言うとみんなガッカリした顔をした。
せっかく使えるスキルが手に入ったと思ったのに!やっぱり使えないじゃないかあ!
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マクシミリアン・スワロスウェイカー
年 齢:15歳
性 別:男
種 族:人間族
レベル:24
H P:185
M P:154
攻撃力:101
防御力:89
俊敏性:82
知 力:105
称 号:
魔 法:
スキル:勃起不可、逆剥けが治る、足元から5ミリ浮く、モテる(猫限定)、目薬を外さない、美味しいお茶を淹れる、体臭が消せる、裸に見える、雨予報(15秒前)、カツラを見抜ける、塩が見つかる、上手に嘘がつける、快便になる、他人の才能の芽が見える、相手がほんの少し素直になる、植物が育ちやすくなる、おいしい水が手に入る、悪口が聞こえる、肩もみがうまくなる、寝坊しなくなる、ラッキースケベが起きる確率が上がる、パンツが見えそうになる、パンツの種類を言い当てられる、相手が一番喜ぶプレゼントが分かる、魚が寄ってくる、中身が確認出来る
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