第10話 みんなで町に出かけて買い食い

 次の日、僕がみんなとの待ち合わせの為に早起きをすると、いつも僕の世話をしてくれる専属メイドのサラがいなくて、代わりに別のメイドさんに着替えを手伝ってもらった。


「あれ?」

 サラがまだ来ていないなんて珍しいなあ。まあ、でもそのうち来るだろうけど。


 そう思っていたけど、僕が出かけるまで、更に出会うことはなかった。

「なんだ、出かけんのか。おい、俺を連れて行かないつもりか?」


 イグナイトスティールが、不満げに僕にそう言ってくる。

「だって、今日は買い食いに行くだけなんだもの。武器なんて持って来る人いないよ。」


「けど、護衛はいねえんだろ?女3人連れて何かあったらどうすんだ。守れるところを見せてやらねえと、カッコ悪いだろ。」

「う、そう言われると……。」


 確かにあの3人はとっても可愛いから、万が一にも絡んでくる奴らがいないとも限らないよね。念の為持って行くか。

「わかった、そうするよ。」


「それが懸命だ。お前は俺なしじゃ、まだまだ勝てねえんだからな。」

「一言余計だよ!もう!」


 イグナイトスティールをたずさえて、馬車に乗って町につくと、約束の時間より少し早く、僕は待ち合わせ場所の広場に到着した。


「ねえ、君!俺たちと一緒に遊ばない?」

「あの、や、やめてください……!

 はなしてください!」


 そんな声が聞こえて振り向くと、僕の後ろからこちらに向かってくる途中だったのだろう、1人でいたアリシアが、いきなり現れた3人組に腕を掴まれていた!


「ほら、こっち来て!」

「ね、いいでしょ?」

「え?どこに連れて行くつもりですか?私友だちと待ち合わせしてるんです!」


 3人の男が強引にアリシアをどこかに引っ張っていこうとする。

「いや、やめてくだ……」


 アリシアが恐怖に震えているのを見て、僕は慌てた!

「おい!お前たちなにしてるんだ!その子は僕の連れだぞ!手を離せよ!」


 3人組に向かって叫ぶと、男たちが僕を振り返る。その隙をついて、アリシアが逃げ出して僕の後ろにササッと隠れた。


「なんだあ?お前。急に出て来てよぉ。」

「邪魔してんじゃねえよ!」

「俺たちが遊んでやるんだからよお。」


 3人が僕を睨みつけて脅してくるけど、僕も負けじと睨み返す。

「彼女は嫌がっているじゃないか!」


「うるせえ!やんのかっ!」

 3人でいることで強気なんだろう、男たちが僕の方に寄ってきて、僕の胸ぐらを掴む。僕は怯まないように男たちを睨みつけた。


「やめなさいよ!」

 その時だ。僕の後ろから声がした。

 僕が振り返ると、そこにはゾフィーとエリザベートが立っていた。2人とも冷たい目で男3人を見ている。


「……え?おい、か、可愛いぞ……。」

 男3人が固まる。アリシアも可愛いけど、庶民的だからね。そこいくと、ゾフィーとエリザベートは、高嶺の花の美人系だ。


 日頃接することのないであう美人2人を前に、思わず固まってるみたいだ。

「あんたたちみたいのがマクシミリアンに勝てるわけないけど、それでもやるというのなら、先に私たちが相手になるわよ。」


 どうやら2人も武器をたずさえているようだ。必要ないって思っていたのは僕だけだったみたいだね。日頃から貴族は狙われることがあるから、護衛もなしに歩くなら、武器は必要不可欠ってことかもね。


「……な、なんだよ!?」

「俺たちに喧嘩売ろうってのかよ!?」

「女のくせして生意気だぞ!」


 口々にそう言って見せるけど、貴族の女の子特有の2人の迫力に、平民の彼らはどこか気圧されているようだ。


 ゾフィーとエリザベートが、冷たい目で男たちに言い放つ。

「あんたたち……、本気でやる気なの?」

「いいわよ、相手してあげる。」


 2人が男たちをバカにしたような目で見ると、男たちはゾフィーとエリザベートに殴り掛かった!ああもう短絡的思考の人間を刺激するから!僕は慌てて2人に向かって叫ぶ。


「だ、だめだよ!君たちは女の子なんだから!!逃げて!」


 2人は一歩下がって男の拳を避け、それぞれに魔法を放つ!


「──風の刃ウインドカッター!!

 ──炎の礫ファイアーボール!!」


「──聖なる斬撃ホーリーブレイク!!」


 エリザベートの放った風と炎の魔法が男2人のそれぞれの顔に命中し、ゾフィーの聖魔法を込めた剣が男の1人の肩に命中する。


「うぎゃああああっ!!」

 2人の魔法は男たちを吹き飛ばし、男たちはそのまま逃げていった。


「大丈夫?マクシミリアン?」

 ゾフィーが僕に尋ねる。

「アリシアも無事で良かったわ。」

 エリザベートがアリシアの手を握った。


「……うん、ありがとう!君たちのおかげで助かったよ!」

 僕は2人にお礼を言った。


「でも、危ないよ?ああいう時は衛兵を呼ぶとかしないと。君たちは貴族なんだから、最悪捕まったら身代金を要求されちゃうよ。」


「心配してくれてありがと。でもだいじょうぶよ。」

「ええ、実は護衛が影に潜んでるから。」

 2人は笑顔でそう言った。


 そうかあ、さすがにバイエルン姉妹ともなると、常に変な奴らに絡まれかねないし、護衛は必須ってことだね。公爵家なのにプラプラ1人で出歩くなんて僕くらいってことか。


「じゃあ、改めて買い食いに行きましょ!」

「すっごく楽しみだったんだから!」

「はい、私も楽しみでした!」

 アリシアが嬉しそうに微笑んだ。


 僕たちは4人並んで、町に買い物に向かったのだった。町の中は興味を惹かれるものでいっぱいだった。目移りしちゃうなあ。


「はい、マクシミリアン、これ持って!歩きながら食べましょ!」

 そう言って、ゾフィーがイチゴに飴をかけて固めたものを1つ僕に手渡す。


「あ、うん。ありがと。」

 みんなでイチゴを飴で固めた物を食べながら、露天を冷やかしてまわる。


 4人で町の大通りを歩いていると、果物屋さんがあり、そこには果物が山ほど積まれていた。どれも新鮮でツヤツヤしているね。


「うっわー!美味しそうなリンゴ!」

 ゾフィーもエリザベートも、アリシアも、それを見て喜んで駆け寄ってくる。


「わあ、どれもすごく大きいですね!」

「これだけあったらどれを買うか悩むわね。どれが1番甘いかしら……。ううん。」


 僕は悩んでいる3人をよそに、リンゴを4つ手に取ってお金を支払うと、エリザベートとアリシアが驚いたような顔をする。


「……え?マクシミリアン?」

「そんなに早く決めちゃってだいじょうぶ?他と比べてすらないでしょ?」


 僕は笑顔で2人に答えた。

「絶対甘いから。食べてみてよ。」

 僕がそう言うと、3人はリンゴを齧った。


「んっ!蜜たっぷり!あまーい!」

「ほんとね!美味しいわ!」

「凄いです!一発で見抜いちゃうなんて!」

「へへ……。そ、そうかな。」


「スキルのおかげだろうが、お前。」

「シッ。黙っててよ。」

 イグナイトスティールが突っ込んでくるので、黙っているよう人差し指を立てる。


 相手が一番喜ぶプレゼントが分かる、というスキルが発動したんだ。それでみんなが欲しがっていた、1番甘いリンゴがわかったんだよね。このスキル、使えなくもないかも。


 戦闘にはまったく役に立たないから、僕の欲しいスキルとは違うけどさ……。


「ありがとうございます!」

「意外な才能ね!」

「ほんと、見直しちゃったわ。」

 3人は嬉しそうな顔で笑った。


 その後僕たちは屋台で串焼きを買い食いしたり、お菓子屋さんで甘い物を食べたりして楽しんだのだった。


「あー楽しかったです!」

「うん、楽しかったね!」

「またみんなで来ましょうよ。」

「ね。絶対またこの4人でよ?」


 楽しそうなアリシア。僕の言葉に、また来ようと言ってくれるエリザベート。念を押すようにそう言ってくれるゾフィー。随分とこの3人と親しくなれたんじゃないだろうか。


 僕のお嫁さん探しも、一歩リードだね!


「今日は本当にありがとう。楽しかったよ。

 でも……2人とも、あの時どうしてあんな無茶をしたの?あんな派手に戦ったら、いくら護衛がいるって言っても、奴らの仲間が集まって来たかも知れないよ?」


 そう言って別れる時、僕はゾフィーとエリザベートの2人に尋ねた。それを聞いた2人が顔を見合わせてニヤリと笑う。


「私たちにマクシミリアンを害そうとする相手への手加減をする理由がないわ。」

「うん。そういうことね。」

 2人は笑顔でそう言ったのだった。


「え?」

 僕が思っているよりも、ずっと2人は、僕との関係を大切に思っていてくれてるっていうことなの……かな?だとしたら嬉しいな。


「へへ、ありがとう……。」

「ふふ。」

 次の瞬間強い風が吹いて、アリシア、エリザベート、ゾフィーのスカートがまくれた。


 3人のパンツは見えそうで見えなかった。それなのに、僕の頭の中には、“アリシア:白と青の太い縞々”、“エリザベート:白と赤のリボンのついたもの”、“ゾフィー、ピンクのレース”と、彼女たちのパンツの柄が、まるで見ていたように頭に浮かんできたんだ。


 僕は思わず真っ赤になった。きっとこれはこの間手に入れたスキル、ラッキースケベが起きる確率が上がる、パンツが見えそうになる、パンツの種類を言い当てられる、だ!


 見てもないのに、

「マクシミリアン……見たわね?」

 とゾフィーに疑いの目を向けられる。


「み、見てないよ!」

 正直にそう言ったんだけど。

「正直に言ったら許してあげようと思ったけど、許してあげない。行きましょアリシア。」


 そう言って、バイエルン姉妹は、アリシアを連れて去って行ってしまった。

 これって、次の約束もなくなっちゃったってこと?そ、そんなあ……。


 うう……。せっかく3人との距離が、少し近付いたと思ったのに。

 やっぱりこんなスキル、使えないよ!

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 マクシミリアン・スワロスウェイカー

 年 齢:15歳

 性 別:男

 種 族:人間族

 レベル:23

 H P:184

 M P:152

 攻撃力:98

 防御力:88

 俊敏性:80

 知 力:103

 称 号:

 魔 法:

 スキル:勃起不可、逆剥けが治る、足元から5ミリ浮く、モテる(猫限定)、目薬を外さない、美味しいお茶を淹れる、体臭が消せる、裸に見える、雨予報(15秒前)、カツラを見抜ける、塩が見つかる、上手に嘘がつける、快便になる、他人の才能の芽が見える、相手がほんの少し素直になる、植物が育ちやすくなる、おいしい水が手に入る、悪口が聞こえる、肩もみがうまくなる、寝坊しなくなる、ラッキースケベが起きる確率が上がる、パンツが見えそうになる、パンツの種類を言い当てられる、相手が一番喜ぶプレゼントが分かる、魚が寄ってくる

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 まだ冒険を続けますか?

 ▷はい

  いいえ



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