宵闇(ヨイヤミ)

第1話

朝のホームルームが始まり、先生が教室へ入ってくる。出欠をとり、静かな教室内を見渡し、天井へ目を向け、それを教卓へ落とす。そしてまた正面を向き、室内を見渡すと、先生は急にチョークを手に取り、僕らの方へ背を向けた。

黒板と顔を合わせ、白いチョークを正面の板に“トン”いう音を立て打つ。そして、ゆっくりと“シャァ”という音を、静かな空間に響かせながら、板に削られた白い粉で何かを書いている。大きく、単純な線二本で作られたそれを書き終えると、少し動きを停止してからまたこちらを向いた。

「皆さん、何度か聞いたことがあるとは思いますが、人という字は、人と人とが支え合って成り立ってきます。」

今更そんなことを言って、その先生はどうしたのだろうか。生徒たちは皆、揃いも揃って先生の顔を見て首を傾げる。『先生は急に何を言い始めたのだろう』『何故そんな話をするのか』という疑問が全員の頭の中にあったに違いない。

「人はどんな時でも支え、助け合いながら生きているんです。だから、困った時やどうしようもない時は、周りを頼っていいんです。」

その時、先生の目付きが少し変わった。それはまるで、何かを決心したかのようなものだった。そして、それを見て僕たちは、先生が何を言おうとしているのかに気が付いた。

「他のクラスの先生や、生徒たちに見下されるのは、ここで終わりにしましょう。さぁ皆さん、必要な物を持ってください。今から他クラスに行きましょう。」

僕らは立ち上がり、各々が自分たちの鞄を開け色々と物を取り出す。それから、ロッカーを開け、そこからも色々と出してくる。それら全てを机の上に置き、いつでも使えるように準備をし始めた。

ここは学校だ。だが、誰か一人でも、ここが普通の学校だと言っただろうか。この学校は、某出版社で連載し、実写映画ともなった○○教室のようなものだ。ここは教室というよりも、元からそういった人を育てるための学校だ。

おわかりだろうか。今から先生は『他クラスに行こう』と言った。この学校では、他クラスへ行くというのは、ただの殺し合いをしに行くということだ。

明日の朝日が拝めるかも分からないというのに、僕らは先生と一緒に、自分たちの教室をあとにした。

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宵闇(ヨイヤミ) @zero1121

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