閑話【 情と、苛烈さと。】

閑話かんわ【情と、苛烈さと。】



鳥人side


ウチは、鳥人族の『ケイラン』

──恵爛という字面だけれど、面倒なのであまり書いたことがないね。前腕の部分に白い羽が生えているものの、飛行することは出来ない。けど、『人間』より高いところに跳び上がったり、風を操ることができる第六感が発達した異種族の端くれさ。

一応『花街』で、そこそこ名の知れた『鵜天ウテン』という陰間茶屋の店子をしてる。二次性は、オメガさ。



「旦那、またのお越しをお待ちしておりますね」


ウチは、おしとやかで儚げな印象らしいから、お客の前ではねこを全力で被っている。意味ありげに絡ませていた腕を解き、微笑んで手を振る。昨晩の旦那が、『花街』の大門から遠ざかっていくのを見送る。泊まりだった客だ。腕を解く瞬間までサワサワ、ナデナデと触れてきて心底、ウンザリだった。門番に会釈してから小さい戸から内側へ戻る。一呼吸してから髪をまとめていたかんざしを引き抜く、はらりと髪がさがって重りも落とせた気がする。ウチの髪は、白なのだが真ん中だけ赤だ。『花街』の住人だった産みの女曰く先祖にニワトリがいるようで、隔世遺伝で成長したら髪色が変わっちまった。幼い頃の金髪に戻りたい気もするが、これはこれで気に入っている。


「はあー!たまらんよ、全く!!」


猫かぶりをやめて、声を張る。手八丁口八丁なんてのは技でしかない。

こんな姿を通い客に見られたら、今までの猫かぶりも無駄になるけれど、気持ちのオンとオフは大事だろう。一応、チラリと後ろを見やる。門番達のほうを。旦那の見送りを済ませた女郎や陰間の性格が一変する状況なんて『花街』の門番たちには慣れっこなのだろう。一人も反応していない。安堵の息をく、その足で一番 水が澄んでいる川へと歩く。昨晩も、お客相手に散々と弄られた尻を洗らえる場所だ。


──澄んだ川の水で洗う行為を『ミソギ』という。他の見世では、この行為を神聖なものだから手を抜くなと言われるようだが、ウチが籍を置いてる見世では入浴前の下洗いくらいに思われているし、見世の経営者によって、シキタリも店子の扱いも変わってくる。


日が上がってきたばかりだから、誰もおらず、貸切状態だ。とても優しい風と澄んだ川の水がキラキラと光っている。草履を投げ、いそいそと羽織を脱いで大きめの岩の上に置く、裾を腰の辺りまでまくり、下帯もずらす。足先で水温を確かめ、冷たすぎなきゃザバザバと浸かっていく。冷たいと、それこそ鳥肌もんだし、しばらく水温に慣れないと動けない。鳥人族ってのは、体温の変化に敏感なのさ。


よく洗わなきゃ、夜の営業に支障が出ちまう。


指を尻の中へ進め、腸壁を傷つけないように掻き出していく。発情期ヒートじゃなけらば孕むことはないと言っても出されると気分はよくない。元々、出口でしかない器官に挿入されて、ガンガンに掘られて淫液を出される。一応、お客が寝けこている間にちり紙で垂れてきたのを拭う。奥に出されちまったものは、諦めて朝まで待つ。体調によっちゃあ、腹痛で耐えらんない日もあるけれど。ウチとて、陰間として売り出されてから十年?いや、もっとかもしれない。通い客のいるものの、プライドがあるもんで弱さなんて見せない。か弱いのは身振りだけで十分さ。まあ、何はともあれ。鳥人族ならではの、老化の遅さから成人してても見た目が整ったまんまなのは有難いもんさ。客の足が遠のかずに済む。


遠のかずに済む、と言えばウチなんかより売れ続けている陰間を知っている。『花街』きっての高級店『桜廉オウレン』の店子である『ベニ』だ。

彼が言うには、『半魔人』なんだそうだ。たしかに、呪いかと思うくらいに怪我の治りも早いし、風邪をひいても二日でケロリとしている。しかも、中性的な美形に育って、成人を迎えるってのに肌のハリもツヤツヤなまんまで、誰もが振り向く美貌だ。顔も見たことない親の血が、すべてを物語ってんなー…と会う度に思う。


そんなベニとは、かなり古い仲だ。ウチが『花街』生まれだけにベニとその片割れが門の外からやって来たのは赤子の頃だった。その時分での見習いの立場である禿かむろは、それなりに居たけれど二次性が決まる年齢──十一から十三歳──で街の女郎や陰間になるか、いなかの選択を迫られる。ならないを選べば、奉公人として商いの道に進むこともできただろう。けど、六歳か七歳で既にオメガとしての兆候があったウチに外の世界なんてのは無縁となった。当時の『桜廉』は、代替わりの時期もあったのか経営の手腕を振るうのが若旦那だったし、『鵜天』なんかも大旦那から今の女将に代わってた。若いもの同士でウマが合うことがあったようで、トントン拍子。見世を越えた遊び相手としてウチが選ばれた。そう、あんなにふにゃふにゃで言葉も発せなかった赤子が今となっちゃ売れっ子の名を保ち続けているんだから、凄いもんだ。

振袖新造ふりそでしんぞの頃まで、ウチのことを 『ケイちゃん!』と呼んで後ろを歩いていたベニがなぁ…なんて親心のような気分になるけれど、今や、生意気だし素直じゃない。諸事情で水揚げができなかった片割れの借金も背負って身売りをするようになってから尚更だ。ウチと顔を合わすと『んだよ、鳥人じゃん』くらいのノリだから少しだけ寂しい気もするけれど、言葉を交わしてくれるだけ良しとする。望みすぎちゃいけない。手を伸ばして、届かない場所に行っちまった時に耐えらんないからね。


──川から上がる。尻の中の洗浄を終えたから水気を拭おうとしたものの、タオルを忘れてきちまったみたいだ。仕方ない。ちょいと気になるが、下帯で拭う。見世までの距離もさほど遠くないし、無問題ってやつだ。着物を着直して、草履も履き直す。元より女物の着物ってのは下帯をつけないのが作法とすることもあるとか。けれど、下帯があったほうが安心感がある。オメガだから子種液を出す機能が欠如してもイチモツはあるからさ。


──カラン、コロン…地面を軽く蹴るように来た道を戻る。

表通りへ出てみたら、ひとっこ一人も出てなくて少しだけ不安になった。何せ、この街ではちょっとした事件が横行してるからだ。


『藤の』事件。

辻斬りに思える犯行だが、偽善的な殺人事件とも呼べる内容に街の警務も調査を急いでいるとか。(それでも、今みたいに早い時間帯は警備も手薄になりがちのようだ。)

見世に所属してない身売り──の夜鷹よたかやら線香女郎せんこうじょろう──なんかが絞殺だか刺殺されることは度々あるけれど。なんで、わざわざ見世の看板を背負ってるものや、背負うはずのものが襲われなきゃいけないのか。理解し難い事件だ。ちなみに、シキタリや客へ規則を課すことができるのは、名の知れた見世だけ。他所の、特に大門の付近にある安く女郎を売り出している見世なんかに、女郎たちを守る術なんてなければ、替えがきく消耗品くらいに思われてるのだからたまったもんじゃない。女郎が一人いなくなろうが、二人消えようが外から売られてきたブスを買いつけたり、価値の下がった年増が卸されてくる。この街を廃れされさせない為の循環ができあがっているわけだ。けれど、『鵜天』がそこそこ名の知れた見世だからウチの身も保証されるってもんで。ひと握りの恵まれた環境がある。少しでも長く、名の知れた見世に居続けて年季明けまで過ごすことを望む。『♀』を売っている女郎屋と違って、陰間茶屋の賞味期限ってのは早いもんで、大概が、一八だかでとうが立ちすぎるを理由に陰間を引退して裏方業務に回される。それをマワシとか金剛なんて呼び方をするわけだが、成人が済んでいる陰間を買いたい、抱きたいという物好きってのは一定数いる分、ウチは今んとこ大丈夫で安心している。


──見世への帰路を急ぐ、忙しなく地面を蹴るからカラン…、コロン…草履の音が朝方の表通りに響く。すると、段々と大きくなっていく人影がポツンと立っていて、妙に怪しく見えた。たぶん、体格的にどこかの見世にいるマワシの男衆だろう。

時間的にも、人がいないよりマシだ。やはり、どこにでも居そうな顔で軽く会釈だけして横を素通りする。顔と名前が一部で知れているから、見世の価値の下げないようにしなきゃならない。常連付きは、常連付きで大変なのさ。


難なく素通りできて、安心した。のも、つかの間だった。ガッ!と手首を掴まれ、前のめりに歩を止める。一気に血の気が遠のき、寒気が足先から上がってくる。恐る恐る振り向いて──


「な、なにをなさるんですっ」


言葉では抗ってみた。けれど、かけ登ってきた寒気と恐怖がカラダの動きを鈍くさせる。手首を掴んできた相手を見やって、呼吸がとまる。過去に、ウチとの心中を迫ってきた元 通い客にソックリだからだ。けれど、ソックリとしたのは女将が当人を出禁にしたから『花街』にも通っていなかったはず。なのに、今、目の前にいるのは他人の空似なのだろうか。

唯一、違うのは生気のない濁った眼差しであきらかに心在らずといった状態なのが見受けられること。逃げなきゃ、逃げなきゃ。脳が指令を下す、心臓が早鐘をうつ。暗唱する。


──風よ、術者の声に応え!この不届きものを吹き飛ばしたまえ!!


ザザザザ…ビュオオオオ…!!


突風が吹き、男の呻きとともに手首が解かれた。今だ!と走り出す。あと少し、あと少しで見世の入り口だ!と駆ける。


「あっ……」


カクン、と膝から崩れ落ちる。途端に力が入らなくなって、無様に地面へ倒れ込む。なんで、どうして。あと少し、あと少しで見世なのに、なんで…今なんだ…!術の対価で、体力が削られたのだ。転んだのは、そういうこと。元より第六感が使えるといっても制限つきで、感情の昂りから威力を間違えた。──地面を這いつくばって、腕の力だけでほふく前進をしてみる。けれど、いっこうに近づいた気がしない。ザッ…、背後から足音がした。視界がにじむ、呼吸がつまる。


ああ、なんで。どうして、ウチなんだよ。他にもいるだろ。よりによって、なんで!なんで!


「ああ、ナサケサマ。お情けを」


息が詰まって、ひしゃげた声だけが喉から漏れた。頬をぬるい液体で濡れるのを、最後に。ウチの意識がそこで途切れた。





────────

──────




鼻をすする音が聞こえる。誰かが泣いている。誰だい、何かあったのかい?そう、慰めてやりたいのに全くと言って声も出せないし、カラダに力が入らない。


「しっかりしろ…、あなたが終わるには早すぎる…」


震えた声で、そう告げられる。聞き慣れた声なのに、聞き慣れない。

ウチはおんぶされているようだ。しかも、泣いている人に。

どこかで、一度だけ嗅いだことのある香り──ツツジの花の匂い──に包まれながら揺れる。誰かに背負われるのは、かなり久しぶりだ。そういえば、ウチは何がどうしたんだっけ。頭もダルいし、カラダの至る所が痛むし、尻の中が落ち着かない。何だか、ヤボな客に当たった時と似た感覚だ。


騒がしさが近づいてくる。けど、ウチの意識なんて未覚醒で、そのまま脱力して熱いくらいに汗ばんだ背にもたれた。



「ケイっっっ!!!」

「ケイランさんっ!」

──どういうことよ?

──うわぁー、今度は『鵜天』のとこか

──まさか、あのヒトがねぇ…

「早くハーメルン女医を連れてくるんだよ!!」

「おまいら!ぼさっとすんない!湯を沸かせ!」




────────

─────




ゆっくりと、マブタをあげる。とても長い眠りについていた気がするし、短くもあった気がする。


ここは、どこだろう。いや、見世の奥の間だろう。周囲との音の距離、ヒトの気配はない。

ウチは、助け出されたのか。散々だった。本当に散々だ。泣いて喚いて、痛くて辛くて。手解きで初めて異物を尻の中に受け入れた時より、痛くて、あのまま死ねたら良かったのに。いったい、誰に?助け出された?......ツツジの花の香りだけが思い出せる。とても仄かな蜜の匂い。


──深呼吸をする。ヒリヒリと渇いてひきつる喉をいち早く潤したい。重だるくて、寝返りを打つのも億劫だ。水が飲みたい、水を。枕元に置いてある水の入ったガラス製の容器が視界に入るものの、動けそうにない。容器に反射してうつる自分の顔に、美しさなんて見る影もなくて何でか涙が溢れてきた。ああ、何でこうなった。ズキンッ、首に痛みがはしる。痛みを感じるにしても寝違えたわけじゃない。なのに、首の後ろ側──うなじだ。オメガにとったら痛むということが人生の絶望ともなる。怖々と触れて、デコボコとした半円が上下にあるのが理解できた。ああ、嘘だ、こんなの、まさかだろ。嫌だ、嫌だ、消えろ。なくなれ。


──眠っている間に伸びきった爪で掻きむしる。鉄のニオイが嗅覚を刺激しても、手が止まらない。どうして、こんなに苦しい。こんなんじゃ、店に出られないじゃないか。ウチがつみあげてきたもの、耐えてきたもの、堪えてきたこと。

全て無駄になったじゃないか。誰だよ、噛んだやつ。ふざけやがって、最悪だ、こんなの終わりだよ。


──ああ、死にたい。

──いいや、死のう。


驚いた。すんなり、起き上がれるじゃないか。

ガラス製の容器から水をがぶ飲みする。それから、真っ先に手を伸ばしたのはキレイな模様の入った半透明のグラスだ。水を飲む為に用意されただろうものを今から壊す。これなら割るにも苦労しない。振りかぶって壁に投げつける。けど、そう上手くいかない。割れずに転がった。失笑する。一度失敗しただけなのに、急に馬鹿らしくなった。どれだけ鋭く割ることが出来れば、死ねるだろう。ああ、そうだ。あの子が、逝ったやり方を真似すればイイ。寝間着の浴衣、帯を解く。窓際に備えてある文机の脚に帯を結びつける。勢いつけて寝っ転がれば上手く絞まるはずなんだ。だって、ウチより早く逝ってしまった子がやった方法なんだから、大丈夫だよな。死ぬ前に一筆、書き残しておこう。物言わないウチを見つけた人が可哀想だ。ご丁寧に用意されている紙、万年筆、インク瓶。


──おかあさん、見世のみんな。

お世話になりました。不出来なやつで、最後に迷惑かけてすみません。もう、疲れたので。

この機に、終わります。

肉体は、燃やして骨にしてください。どっか、空気の澄んだところにでも撒いて。


恵爛、自身の名を漢字で書く途中で涙が溢れてしまった。喉がひきつる。なんで、泣いてるのか。


ウチは、死にたいって思ったはずだ。強く、今すぐ消えてしまいたいって。


手が震える。それでも、帯で輪っかにした部分を首に引っ掛けた。なのに、寝っ転がるまでの勇気が出ない。なんでさ。こんなに、苦しいのに。辛くて、今すぐに終わりにしたい。なのに、なのに。──死にたくない。


「死にたくない……誰か、助けておくれよ……」


弱々しくて、なんて声を出してるんだろうと思いはした。けれど、漏れちまった声を取り込むことなんて無理だ。弱音が、嗚咽に変わる。

嫌だ。死にたくない。助けてくれ、救ってくれたなら、もう一度、救っておくれよ。


助けて……、タスケテ……


襖が開いた。

泣き濡れた視界じゃ、まともに入室してきた人を認識できない。

ガチャンッ……、何かが畳の上に落ちた音がする。


「何をやっているんだ!!」


押しのけられ、弾かれるように輪っかから追い出された。せる。まだ寝っ転がるまでいってないし、絞まってなんかいないはず。

なのに、こんなにも酸素を肺が欲している。咳き込むなか、唸って怒鳴る声が聴覚に届く。


「そんなに嫌か!!死にたくなるほどに!?俺は、待っていたというのに!!」


いったい、何のことだ。

この人は、何を言っている?


「なあ、ケイさん!なんで、死のうとしているんだ!?あなたを、助けたいっていう偽善で噛んでしまったことは謝る!!だが、生半可な気持ちじゃないんだ!ずっと、一目見てから惹かれていた!あなたに釣り合う男になりたくて、金が稼げるように商いを学んだ!!あなたは、俺の『運命』なんだよ!!」


──運命?そんな、おとぎ話みたいなことがあってたまるか。なんで、簡単に運命とか言えるんだ。というか、噛んだのはオマエさんか。よくも、ぬけぬけと白状できたな。その潔さに感心するよ。


そう言い募ってやりたい。なのに、声にならなかった。──ツツジの花の匂い。抱きしめられて、痛いくらいで。熱が伝染うつる。鼓動が強く跳ねて、激しく血を送り出す。

また、情けないくらいに涙が溢れて止まらない。なんで、こんな知らない相手に抱きしめられて嬉しいなんて思ってるんだよ。意味わかんないよ。なんで、ウチはこの人が愛しいって思えちまうんだ?


相手の肩をおしのけて、顔を拝んでやろう。やっぱり、通い客にはいない。見たことない顔だ。優しげな目つきが、力強さを感じる眉にバランスよくあっている。そこそこの男前ってやつだ。顔のいいやつなら、マワシにたくさんいるから見慣れてる。いったい、どこで知り合ったのか。でも、今更だろう。


──視線が合わさっただけで、吸い寄せられ、惹かれるように口付けていた。相手の唇に自身のをくっつくけて、呼吸を奪う。唾液の交換とまではいかないけれど、くっつけては離してを繰り返す。喉が潤っていく感覚がするし、何かが満たされていく。はぁっ……、熱い吐息を零して見つめ合う。


「……ケイさん」

「…おまえさん、名前は…?」

「え、俺の名前、いや、俺をお忘れか?!」

「……ほら、いまいちどだよ」

「登希助。……トキスケ・ナグモ、呉服屋のミナミサワで番頭をしている」

「そうかい、トキスケ。ウチは、恵爛ケイランさ。よろしくね、運命さんとやら」

「絶対に運命だ。これから、同じ時間を過ごして、ちゃんと自覚してもらう」


笑えちまう。なんて、熱烈な殺し文句だろうか。そういう熱いのは、嫌いじゃないさ。


「なあ、トキスケ。もういっかい、くちづけしよう」

「いっかいなんて言わずに、何度でもする」


後頭部に添えられたてのひらが力強いのに、優しくて。歯がぶつからないように角度をもって、唇を重ね合わせる。なんて、甘い口付けなんだろうか。これは、花の匂いも関係しているのか。なんだか、胸の奥がムズムズするよ。



──ああ、愛しい。恋しい。

これが、つがいになるってやつか。やっと理解できたよ。……あの子も、祝ってくれるかな……



これは、孤独だった一羽が、折れぬ寄木を見つけ、生涯の道標とした話である。



──あなたは、なにが好きだ

──なにって、なんでも好きさ

──そうではなくて、食べ物とか好みの話だ

──そうだねぇ、ウチは鮭の雑炊が好きさ

──いいな。ちょっと、刻みネギと醤油をたらすと美味いよな

──ふふっ、そうだね。その食べ方は、ウチも好きさ

──初めての共通点だな

──これから、たくさん増えていくんだろ。楽しみにしているよ

──ああ、手放してなんかやらないからな。覚悟して傍にいてくれ

──大事にしておくれやす

──喜んで




熱く強い抱擁、契りの口付けを。









閑話 【情と、苛烈さと。 】



最終更新

▷2022年6月25日

▶2022年7月5日

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