Banana's feelings

宵闇(ヨイヤミ)

第1話

僕は気が付いたら、テーブルだと思われるものの上に置かれていた。平で冷たく、部屋は電気が着いていないのか、薄暗くなっている。じめっとしていて、とても居心地が悪い。

ここが何処なのかも分からないものだから、とりあえず部屋の中を見て回ろうと思い、起き上がろうとする。しかし、体が動かない。どれ程頑張っても、動くことが出来ない。周りを見渡すと、そこには鏡があった。だが、そこに映るのは、黒塗りの机にある、一本のバナナだけだった。僕は、どうやらバナナらしい。

“ガチャリ”と、誰かがドアノブを回す音が聞こえる。“キィ”という耳障りな音を立てながら、扉が開く。少し大きめの足音がこちらに向かって来ているのが分かる。

『誰が来るのだろう』『僕は何かされるのだろうか』そんなことを考えていた。だがしかし、僕が一番恐れていたのは“皮を剥かれ、食べられてしまう”ことだ。

皮を剥かれる時、繊維が裂け、中の実に歯を刺され、そのまま切断される。きっとその痛みに僕は耐えられないだろう。

入ってきた人間の手が迫る。逃げることも出来ず、僕はそれに捕まった。持ち上げられ、両手で握られる。片手が次第に上の方へいくのが分かる。

無いはずの心臓が“ドクッドクッ”と、音を立てているような気がした。恐怖に支配されそうだ。

すると、人間が急に口を開いた。

『いただきます』

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Banana's feelings 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121

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