第12話

一重にこんなに、いるのかと、唖然するぐらいに、人々が行き交い、賑わいを見せている。

あちこちで、呼び込みをしている。

「いらっしゃい。見てってよ!今日の売りは、このデカイキャベツだよ!」

「らっしゃい。そこのお嬢さん。おひとつ、いかが?」

活気溢れるとはこう言うことか。


生活圏の必要な店通りを真ん中にずらりと店が並び、スイーツなどの甘味処は、合間にある感じ。

手鞠のおすすめのあんみつ屋は、行列で、大人しく並んでる人ばかり。

あとは、外側に金物屋や生活雑貨屋が並び、外から来る冒険者たちの為の防具類を扱う店などがある。

「里の中心がここになるんだけど、少し離れたところに農民たちが住む集落があって、家畜を飼ったり、野菜を育てたりして、生計を立ててる。」

「そこにはね。美織たち以外の迷い人がいるよ。一家族と…集団?」

「私たち以外に…!?」

目を見開く。確かに、喜春が前に言っていた。度々、迷い込んだ人物がいて、保護してから、選んだ先を紹介してるそうだ。

「興味があるなら、今度、会わせてあげるよ。里だけじゃなくて、街にもいるし、港町にもいる。」

そう珍しいことではないと呟く。

「今じゃ、根を張って、順応してる。最初はあんたみたいに、戸惑ったり、価値観が違うから、混乱してたりしてたけど。」

それでも選んで、生きていくことを決めたのだ。

「腹減った。お蕎麦屋行こう。」

案内された蕎麦屋は、あちらと変わらない極一般的な蕎麦屋に近い。

違うとすれば、店員はやはり、あやかしで、お歯黒と呼ばれるあやかしやここの店主は狸らしい。

打ち立ての蕎麦は美味しかった。

出汁の聞いた蕎麦つゆが、特に美味しい。

「とろろそば、美味しい。」

ツルツルと、手鞠は、とろろそばに夢中で、時折、山芋のネバネバが口の回りについて、かゆっといいながら、口を拭く様に笑った。

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