第11話

数ヵ月後…


以前よりまだ、ふっくらとしてきたような気がする。ご飯を食べ、ゆっくりと休んだことが功を奏したようで、気持ちも、以前より、穏やかになりつつある。

斎も環境の変化に戸惑いを見せず、元気にいる。たまにやって来る手鞠が、可愛いと世話を焼いてくれ、娘ではないのに、情が湧いてくる。手鞠が叱られる時は、ちょっとだけ、庇ってしまう。


その日は、喜春が、やって来た。

「今日は外に行ってみようか?いろんな店があるし、情勢もわかるよ。」

「うん。」

口調も初めの時に比べたら、柔らかくなっている。喜春が敬語で何時までも固い口調なのは、気まずいから、崩して構わないと言ってくれた。

喜春の話では、宿の通り沿いに、商店街が存在し、いくつもの店が連なってるそうだ。

一番最初に、迷いこんだのが、商店街のど真ん中だったそうで、灯りをつけてるのは、防犯の一種だったらしい。

彼処は良く、迷い込んだ人物が彷徨くので、珍しいわけではないらしい。そうなの?

喜春は、テーブルの上に紙を置いて、ペンでサラサラ、書いていく。

「簡単に、説明しておくと、宿がここで、この通り沿いが商店街の入り口。ここは、かなり人が多いから、迷わないようにしてね。うちを見たからわかってると思うけど、俺らを含めたあやかしとあんたみたいに人間もいる。大抵は、他の国から来た冒険者や商人が多いかな。」

「他の国?」

「割愛するけど、うちの国以外にも当然、国はあるよ。海を渡って、真向かいにある国は、ちょっと厄介で、うちとイザコザがある。ガーベラ王国って国で、腐敗してるような国だよ。ガーベラ以外は認めない感じ?他には、メビウス王国やテルミナ帝国とか、色々ね。」

海に渡るには、漁港の町まで行かないといけないから、少し遠いらしい。

「もっと、余裕が出来たら、いつか、行ってみるといいよ。俺のおすすめは、メビウス王国の大浴場。うちと違うんだ。岩盤浴?っていうやつがあって、なかなか、よかったよ。」

「へえ。」

「じゃあ、そろそろ行こうか。」

「うん…あれ。手鞠ちゃん。」

「えへへ。」

いつの間にか、現れた手鞠もちゃっかり、加わるようだ。


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