籠屋縁の日常

第8話

籠屋縁は旅館である。

当たり前だが、お客様が泊まっていて、籠屋縁の自慢の接客と設備…温泉や部屋。

料理長が作る自慢のご飯。

お客様は、お忍びで来られる神々や妖怪、他の土地から来る冒険者や商人など、様々。

従業員の朝は早い。

客より早く起きて、掃除をする。

隅々まで、完璧に。特に我が旅館は、拘っていて、掃除の総支配人と言う立場がある。

掃除への拘りが強く、責任感のある人物が務めている。

柳女の梅子は、キビキビと、指示を飛ばす。

「あの人が柳女の梅子。うちの自慢の掃除のプロ。だから家は、ピカピカで清潔。」

喜春が、預かった美織に、旅館内を案内する。

梅子の指示のもと、従業員たちが、雑巾掛けをしている。

「掃除が終わったら、朝飯。配膳は自分でね。従業員専用の食堂はこっち。」

大勢の従業員を抱える籠屋縁では、従業員専用の食堂があり、大きく、広く、席を確保している。

従業員の為に、作られた出来立ての美味しそうな朝御飯の香りが鼻を擽る。

「おかわりは自由だけど、献立は決められないから。そこは勘弁して。」

「いえ。」

「あんたはまだ、従業員じゃないからさ、家族専用のご飯を部屋に用意させるから。とりあえず、腹減ったね。部屋戻ろうか。」

こっくり、頷く。


部屋に用意されたご飯は、御膳である。

白い炊きたてのご飯とワカメと豆腐のお味噌汁に、ピンクの焼き鮭。おぼろ豆腐には、餡が掛かっていて、美味しそう。

「あんたが最優先すべきは、まずは、健康になることと、次は、どうしたいか、考えること。家で働きたいなら、家の母に会うことになる。家は、労働基準に関しては、良いと思う。赤子を抱えても問題ない。もし、家以外を見たいなら、遠慮せず、言って。選択肢は多い方が良い。」

ここでなくとも、働き手は、歓迎される。

里には、色んな店もあるし、里以外でも、隣の街など行けば、繁華街もあるから、仕事場の斡旋自体も、見つかりやすい。

少し行ったところには、漁港の港町もあるから、困ることもない。

「まずは、ご飯を平らげられるまで、回復することが先決だね。」

喜春は気遣って、ここで、一緒に食べてくれる。弟は居なかったが、こんな感じだろうか。

弟にしては、しっかりした子だけど。

「美味しい…。」

「だろ?腹空いてたら、何も出来ない。」

喜春が笑った。

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