第7話
聡子も雅彦も、己の姿に、驚愕し、狼狽える。
「な…嘘だ!!なんだよ!これえ!!!」
「いやあああ。」
「だから、思い出してみなよ。ここまでどうやって来たのか。ほら。」
お香の香りが、キツイ臭いから、芳しい香りに変わる。
「…え。へ?」
「いやああ!!」
錯乱する聡子と未だに状況が理解してない雅彦。無理もない。思い出した光景は、車に轢かれた自分たち。
「あなたたち、今、魂だけの存在で、ここに来てるんだよね。彼女への執着心がそうするのかは、知らないけど、諦めなよ。死んだら、もうそこで終わりだよ。来世で、今度は幸せになってね。」
「!!!??」
「〇〇#%*@#!!」
最早、気をおかしくしたのか、言葉が理解できない。
襲いかかるのを止めたのは、ヒミコである。
「子供相手になにをしてるの?見苦しいわ。アタシ、キライなのよね。そーゆうの。」
二人を掴む。
「お迎えが来てるから、さっさと、終わらせる。ヒミコ、離さないでね!」
「ハイハイ。」
「我、榛手鞠、この縁を切るために、今暫し、断ち切る!!〝ー縁切り”ー!!」
大きな鋏を持った娘は、近寄り、二人の前に立ち塞がる。
チャキン…。
何かが切れた…。
何かが、欠如したように、途端に大人しくなる。
「死んでるから、ややこしくなかった。お二人さん。…籠屋縁のご利用ありがとうございました。」
彼等を取り巻く、死の世界の使者たち。
抵抗空しく、引っ張られていく。
すると、一人の男がやって来た。
地獄の番人
佇まいが、常人ではない。が、籠屋縁にとってみたら、常連客だ。
「御協力ありがとうございました。」
「いーえ。また籠屋縁に遊びに来てくださいね。御待ちしてます。」
「はい。また来ます。閻魔様もそれはもう楽しみにしていますから。」
今度はプライベートで来ますと、にこやかに微笑み、引き連れ、闇夜に消えていく。
「呆気なかったね。」
イサメが三味線を持ちながら、出てきた。
「今日は、張り切って、弾いてたね?」
「何だか、気分乗って(笑)。」
「お二人さん。和気藹々なとこ、失礼だけど、早く、帰んなさい。」
駕籠に乗り込み、撤退。
水鏡から見ていた美織は、息をするのも忘れ、状況が、呑み込めない。
「へー。死んで、魂だけになっても、追いかけるなんて、どんだけ、強いんだよ。こわっ。」
「あの人たちは何故…?」
「死因は、どうも、飲酒運転の事故に巻き込まれたみたいだね。あんたを追ってる途中に、飛び出したんじゃない?飲酒運転だからね。ハンドルを切り損ねたかまでは、わからないけどさ。手鞠が魂だけと言えど、縁を切ったからね。もう、煩わしさから、解放されるよ。よかったね?厄介なのは、死んでも尚、今みたいに、想いを残す奴だよ。それは次第に呪いになるんだから。」
喜春の目が細くなる。
喜春の目から見たあいつらの執着心や負の感情の連鎖が断ち切れてるのがわかる。
「良かったじゃん。あんた、頑張ったよ。」
肩をポンと優しく叩かれ、励まされると、何度目かの安堵の涙が溢れた。
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