第4話

頭が追い付かない。…え?

「あんまり、脅かすのは、嫌だけど、こっちも客商売だから、きちんとしとかないと、お客様に、迷惑かかると、困る。だから、素直に話して貰うよ。あんたを…あんたらを追いかけてる男とハバアに、心当たりない?」

息が詰まった。



滝森美織は、平凡な家庭の娘であったが、社会人になって、勤めていた会社の社長息子に、気に入られた。

両親の勧めもあり、お見合いを経て、二人は付き合い、そのまま、結婚。

しかし、結婚した途端、変わった夫は、一々、細かいことで叱咤し、義両親は何かと、責めてきた。

子を産めと、何度も、催促するような真似。

神経が擦りきれていた。

人はあんなに、罵倒される日々を送ると、正常な判断が出来ず、やっと、授かった我が子で大事にしたかったのに、どんなに、腹が膨れようが、悪阻で苦しんでいようが、嫁に来たからにはと、休むことも、ままならず、食べることも出来ず、弱っていった。

それでも、斎は、無事に、産まれてくれた。涙が溢れるぐらいに嬉しくて、終わった出産を切っ掛けに、私は、この子と生きると決めたのだ。

荷物を持つと、逃げ遅れる可能性が高いため、斎だけを、抱え込み、夜泣きで泣いてるからあやしてる風を装い、家を飛び出した。


「義実家は、その土地では、有力者でしたから、裸足のまま、逃げ出す嫁が赤子を連れて、家から飛び出しただけで、スキャンダルです。」

見栄を張る義実家は、何かと、美織を見下していた。三流の学校の出身が恥ずかしいやら、何も知らないのかとか、これだから、育ちはとか、散々、嫌みを言われてきた。

「実家に帰らなかったの?」

「夫と結婚をするのを諸手あげて、喜んだのは、両親です。私が帰れば、義実家に戻るように言われるだけです。」

娘の頬に、アザがついても、気持ち悪い笑みを浮かべ、頑張りなさいとしか、言わない両親。はじめから、味方ではなかったのかもしれない。

「そいつらとしたい?」

「顔を二度と見たくありません!!斎を奪われるなんて、嫌です!!」

心からの叫びだった。

すると、何時の間にいたのか、少女がいた。

「そのお願い、聞いてあげる。」

ニカッと笑った少女は、お人形みたいに、整った顔だった。

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