裏サークル『麻雀同好会』前編
理不尽なルールがあれば、破りたくなる。認めてほしい権利がある。悪しき寮則、それは『麻雀の禁止』だった。
◇
我らが大学寮では麻雀が禁止されている。理不尽だ。「麻雀をする権利を認めろ!」と一部の寮生から声が上がる。
だが、彼らは弾圧された。反抗するべく、共同部屋で麻雀をすれば、見回り番が寮長に報告し、麻雀用マットと牌を没収される。規則だからと、一方的に主張を取り下げることを強いられる。
『『『許せない。』』』
煮えたぎるような怒りを共有した幾人かは水面下で結託した。悪しき寮則を打ち破り、麻雀のできる大学寮にするために。
こうして裏サークル、『麻雀同好会』が組織された。
◇
なぜ麻雀が禁止されるのか? それを疑問に思う学生は多かった。麻雀同好会に所属しない学生も面白いゴシップの一つでも出てくればよいと、理由を探るのを手伝う。
そして彼らは二つの事実にたどり着く。
一つ目はこの大学にかつて『麻雀部』が存在し、彼らが部内で賭け事をしていたために廃部になったこと。二つ目は彼らは寮内に部室を設け、そこで活動していたこと。
同好会の方針は活動拠点として部室を手に入れることに決定した。
それらしい部屋は一つしかない。寮の2階、第1棟と第2棟を繋ぐ廊下にある開かずの部屋。その部屋は4桁のダイヤル式のナンバーキーで施錠されていた。
会員たちは協力して解錠を試みる。方法は単純。総当たりだ。全部で1万通り。見回り番と寮長の目を盗み、彼らは暗躍する。
――作戦開始から1週間。会員の一人が吉報をもたらす。
「開きました!」
それは約7千通りの試行を繰り返して得られた成果。この同好会の最初の成果だ。彼らは歓喜した。会員達はドアを再び施錠し、夜まで潜む。ここで見回り番にばれたら意味がない。慎重に、慎重に、事を進める。
深夜。誰もが寝静まった時間。会員たちが一日千秋の思いで待った夜が来た。彼らは開かずの扉の前に集合し、その封印を解く。
扉の中にはまず玄関があった。入って右手側には下駄箱。目の前には引き戸。まるで旅館の一室のような造りだ。もう一つの扉を彼らは期待を込めて引き開ける。
その中は和室だった。大きさは約6畳。部屋の中心には年季の入った、しかし立派な雀卓。その上には埃をかぶった牌が乱雑に散らばっている。そして雀卓の周りにはパイプ椅子が4脚。まさに麻雀をするための部屋だ。
会員達は歓喜に打ち震える。ようやく彼らは居場所を手に入れたのだ。2重の扉は音も光も外に漏らさないだろう。ここなら隠れて麻雀ができる。
◇
月光が差し込む部屋の中で、麻雀同好会は改めて誓う。悪しき寮則を打ち破り、堂々と麻雀ができる大学寮にすると。
大学寮の裏側。隠れた青春が始まる――。
中編へ続く
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