第6話

薫は朝四時から桜、萌、五六、自分の弁当や朝食を眠い目をこすり食卓に並べた。

「これで完璧ね!なんせ私の料理はたぶんきっと美味しいから喜んでくれる!」

自慢げに薫はいいみんなを起こしにいった


数分後、五六、桜、萌が降りてきた

「じゃっじゃぁーん!今日は私が早起きしてみんなの分の朝御飯つくってあげたよ!」

五六たちは食卓に並ぶ物を見て驚愕した。

「こ、これ薫が作ったのか?」

「お姉さんがこれを?すごい、すごすぎます!」

「薫お姉ちゃんスゲー!」

三人はそれぞれ薫のことを褒め称えた

「ありがと!ほら早く食べないと覚めちゃうよ!」

四人はそれぞれの席に座り朝食を食べ始めた。


お昼

「まさか朝御飯までじゃなくお弁当も作ってくれてたなんて、薫スゲーな!」

弁当の中身は五六、桜、萌の三人別々に中身が違っていた。


五六の中身は肉、野菜、フルーツ、白米といったバランスがとれた食材で作られていた。


桜は甘いものが好きなのでイチゴジャムのサンドイッチ、ミカン味の寒天、そしてあらかじめ買っといたブドウ三粒


萌は無類の肉好きなのでタコさんウインナー、野菜炒め(肉多め)しょうが焼きといった肉しかない弁当だ


薫は入学してからずっと購買で買っているので作らなかった。



てかうまそうだなこれ


お昼、おれは薫の作ったお弁当を食べた。


「うわ、まず!なんだこれ!」

薫の手作りお弁当はすごく………美味しくなかった。


家に帰ったら俺の弁当だけがまずかったもよう、

「なぁ薫、俺のだけまずかったんですけど」

「え!そんなことはなかったはずなんだけど」

俺は残したおかずを薫に食べさせた

「うわ!マズ!なんだこれ!」

薫はお昼の俺みたいな台詞を聞いていたかのように同じことをいった。

「塩と砂糖を間違えたならいい、だけどそれ以前に卵焼きは辛いわ、お肉は生焼けだわなんだこの弁当」

おれは弁当の味を否定した。


否定したのだが薫は泣いてしまった。

「ごめんなさい、ごろ……お兄さん、お兄さんのために作ったのに、味がおかしくて……グズ……もう作らないから」

おれは泣かせてしまった罪悪感が半端なかった……

「………あー、えっと、別にもう作るなとはいってない、えっと、次の休み桜と萌と一緒に朝御飯作ってみるか?料理作りたいんだろ?」

「うん!」

薫は満面の笑みで笑った


お弁当事件から2日、週末に料理教室を開こうとおれは提案した


「みんな集まってくれてありがとう、今日は私のために料理教室を開いてくれた兄さんに感謝です」

ぺこりと挨拶をする薫

「はいはーい、今日はなにを作るんですか!」

元気よく質問した桜に俺は答えた

「えっと今日は家庭の定番『カレー』を作ろうと思いまーす」

「カレー!やったぁ!萌カレーすき!」

喜びすぎてはしゃぐ萌がかわいいのだが

「てかこーはい君、君カレー作れるの?」

ニマニマと笑いながら真希先輩が近づく

「もちろん!なんせ薫と桜が朝遅いとき作ってるもの」

「ほほぅ!それじゃあ美味しいね」


料理を作っている最中萌が

「なんで私たちのご飯はうまく出来るのに兄貴のやつは不味いんだ?」


「へ?」

薫が萌の言葉に肩を震えさせた

「どう言うことだ薫」

俺は薫をみた



「はぁ?美味しいご飯を作って俺の心をわし掴みして好感度アップしたかった?」

俺は薫を部屋に呼び話を詳しく聞いた

「うん、えっと、これは桜ちゃんから聞いたんだけど!真希先輩と結婚を約束したのって本当?」

「は?そんなことないじゃん、あれは嘘だよ………ってなにふくれてんだ?」

「ごろーくん、ほんとうに結婚を約束してない?」

「俺を信じろよ」


翌日からまた薫の美味しい弁当が俺に支給された。


復活した俺の美味しい薫の作った弁当は男子に人気でおれはおかずしかたべれなかった。



美味しい薫弁当が復活して二日後の昼休み、俺と薫はいつものように屋上で昼飯を食べていたそのときだった。


校内への非常扉が思い切り開いた


「笹倉薫!そしてその兄の笹倉五六!いい加減にして!」


屋上へ上がって来たのは生徒会長の泉京子先輩だった。


京子先輩は三年生、その証拠にネクタイの色が薫の赤に対し先輩は黄色。


「いい加減にして!ってなんですか?」

お弁当を食べていた薫が聞いた

「そのお弁当が原因よ!………くっ、今日もすごくおいしそ………は! 」

「おいし?」

「べつに美味しそうだとか考えてないから!」


といいつつも先輩は薫の弁当箱をガン見してよだれが垂れていた。

「というか本当になんなんですか?」

眉間にシワをよさ先輩をにらむ薫をみて「そうでしたね」といい取り乱した

髪型を直しこほんと咳払いをして



「私の人気があなたのお弁当のせいでかすむ一方なのです!」


とこの大空に届くぐらいの大声で先輩は叫んだ。


は?


「私の人気があなたのお弁当のせいでかすむ一方なのです!」


大声で先輩は叫んだ。


「「は? 」」


俺たち二人は同時に?がよぎった。


「どういうことですか?」


「よくぞ聞いてくれましたね薫さん!」

悪そうな目をして先輩はにひっとわらった


「わたしはこの学校の生徒会長ってのはわかりますよね?学校の生徒会長……つまり学校の人気者!そう!ここの学校の人気者こそが私、泉京子!……のはずが、そんなちっぽけなお弁当ごときに負けるなんてあってはならないこと!」

「ちょっと!ちっぽけなお弁当ってなに!このお弁当は私が朝早くから起きて愛情たっぷりに作ったおかずなんですから!」


ムキー!ムキー!という擬音が聞こえそうな足踏みをしながら薫は怒った。

「あ、あら失礼……私はなんて無礼なことを……」


ほら、変な感じに怒ったから生徒会長困ってんじゃん。


そのあと会長は律儀に薫の弁当を食べた。

「美味しいわね………で、でも認めないわ! 」

……と文句をいいながらちゃっかり弁当を食べてる会長、なんかかわいい。

「どうですか?薫のお弁当最高でしょ」

「美味しいのはわかった、だけど私のなかではこんなに小さい箱に負けられないって私のプライドがいってるわ! 」


え?なんて?私のプライド?


「プライド? 」

「そうよ!そんな美味しくて最高で心を鷲掴みされたお弁当になんて! 」


でも気に入ってるんだ


「来週の月曜から金曜までの私のお弁当と勝負よ薫! 」


泉先輩は満ち溢れてる顔で誇らしそうにそういった


……のだが


「めんどくさいです」


薫はジト目で先輩を見てブーブーいった。


「ちょ!……薫、それは! 」

「………くっ!」


へ?……くっ?


「この勝負はお預けよ!」


「だからやりませんよ」


ぐずりと泣きながら泉先輩は帰っていった。


なんか変な先輩にあっちゃったな……


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