ツイート3つ分くらいの物語
雨野瀧
ピースは嵌まらない
天気のいい春の日に、駅から古本屋へ向かって歩く。瑞々しい草木を巡るように小さな蝶が舞っていて、あちらこちらの花壇にはチューリップが、みどりごをあやすかのように色とりどり揺れていて。
「今日は古本屋に行ってきます」
学生時代の先輩である彼へ、今日もLINEの続きを送る。すると仕事の休憩時間であろうお昼頃に返信が来る。
「いいね〜気をつけてね!」
既に本を買い終えていた私は、その返信に顔を綻ばせる。澄んだ爽やかな春を味わうかのように、往路を引き返す。
そっと、たわいない日常を共有し、褒め合える。それだけで十分。高望みはしない。
これだけができる関係が欲しくて。欲しくて。欲しかったはずなのに。
どうしても満たされないのだ。
強い風が吹き、タンポポの綿毛が空気に溶けた。
先輩、ごめんなさい。
なんだか、ちょっとだけ、形がズレてしまうみたいです。
ツイート3つ分くらいの物語 雨野瀧 @WaterfallVillage
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