ハサミ女
オタク系コンテンツに出てくる女の子で人気が出やすいパターンとして「一見近寄りがたい」みたいなの、ありません? 俺はあると思う。滅茶苦茶性格が悪いとか、週に二日茶碗蒸しを食べないと気が済まないとか、男モノのAVにバカ詳しいとか。これは何故か?
すなわち、見た目の可愛い女の子と冴えない男子がくっつく説得力を持たせるために、女の子に一般的には受け入れられ難い欠点を用意させ、それを男が受容してあげることで関係の必然性を確保すること。これが大きい。普通に可愛い普通の女の子はオタクのことなんか普通に好きになるわけない。これはローソンぐらい普通のことだ。誰でもわかることだ。だから普通の「良い子」にオタクは萌えない。関係を夢想できない。そこであえて女の子にすっとんきょうな設定を付け足す必要が出てくる。女の子に一つでも突飛な個性を用意してあげれば、オタクくんはそれを受け入れてあげるだけでいい。「こんな女俺以外好きにならないだろw」感、これが重要なんだよ。わかる? えっわからない? ごめん。
これと関係ありそうであんまり関係ない話なんだけど、俺のクラスの隣の席に、雲崎まりかという同級生がいる。そこそこ可愛い風だと思う(注・俺の感性だけどね。目が良い。あと指が綺麗)なんだけど、可哀想にあまり友達がいる気配がない。何故か? それは彼女が超がつくほどのハサミオタクだからだ。鞄の中にはいつ何の用途で使うかわからないハサミが沢山入っているし、勿論それらは全部種類違うし、じゃんけんは必ずチョキを出すし、この間なんか俺の伸びすぎた前髪を切ろうとしてくる。なんなんだろうね。ハサミと結婚しそうな勢い。草。
そんなわけで昼休みは雲崎のハサミ語りを聞いて過ごしていた。俺の持ってるハサミを褒めてくれたときもあった(大して嬉しくないw)。何の役に立つかわからないけどハサミに関して俺もかなり詳しくなった。
時が経って、ひょんなことから雲崎の誕生日が近いことを知った。そこで友達のいない雲崎の為にサプライズでハサミをくれてやろうと思い、休日デパートに出掛けた。あいつのことだから誕プレ交換なんてする相手いないだろ。俺があげたら喜ぶかな。「携帯性と機能性を両立させたレイメイ藤井の新作」、欲しいって言ってたからな。目当ての品を買ってレジから出て目を疑った。
雲崎らしき人物(注・いや服装はオシャレしててらしくないんだけど、あの目は)と、同年代の背の高い男子が仲良さそうに歩いている。なんだよ。お前そういうの、ないんじゃないのかよ。あ、そう。ふーん。ふーーん。
翌日から、俺は雲崎と話をしなくなった。昼休み、雲崎は一人でハサミを研ぐようになった。俺は異世界ラノベを読んでいる。悔しい? いや、全然。
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