第9話 委員長のヒミツ
昼休みも終わりに近づいた頃、
「もりり~んっ、ことと~んっ」
食堂から戻ってきた舞川さんが急に顔の前で手を合わせた。
「ん?」
「な、なんですか?」
「実は、二人にお願いがあるんだけどー」
「お願いですか? 私達に?」
「うんっ!」
――お願いか……なんだろう……
――嫌な予感がするのは、気のせいでしょうか……
「二人が協力してくれれば、鬼に~……えっとーなんだっけ?」
「鬼に金棒……」
「そーそーっ! それ~っ♪」
と言いながら大振りを披露する舞川さん。
可愛い声なのに、物騒に聞こえるのは何故だろう。
「……で、お願いというのは……」
と委員長が言った瞬間、舞川さんは涙目になって言った。
「二人にねっ、数学を教えて欲しいんだよ……っ!」
「「数学?」」
話を聞くと、どうやら前回の数学のテストで赤点を取ってしまい、もし明日の小テストで赤点を取ってしまった場合、居残りで大量の問題プリントが出されることになったらしい。
「助けて~、お願~いっ」
委員長に抱き着き、胸元におでこを擦りつける。
「頼れるのは二人だけなんだよー!!」
「っ!! 他の人が見ていますから、離れてください……っ!」
「二人がいいって言うまで離れない~」
「なっ!? もっ、森野君、助けてくださいっ!」
「え。えーっと……」
――…僕にどうしろと……
「……舞川さん、委員長が困っているみたいだから――」
「えぇーん、えぇーん」
――うわっ、わざとらしい……。
「あ、あのさ……」
すると、今までこの様子を見ていた柊木さんが、珍しく小さな声で言った。
「あたしも、その……勉強を教えて欲しいというか……」
そう言ってポリポリと頬をかく柊木さん。
「……柊木さんたちは、毎回ちゃんとノートを書いているんですよね?」
「うんっ」
「なら、それを見ながら勉強すれば――」
「それがダメなんだよねー」
「え?」
「アタシら、ノートを書くだけだからさっ!」
と言ってキランッと白い歯を見せてきた舞川さんだが、正直なところ全くカッコよくなかった。……口には出さないけど。
……まあ、書いて満足しちゃう気持ちはわからないでもない。
「「………………」」
――どうします?
――どうしようか?
――私は別に構いませんが、森野君は?
――力になるかはわからないけど、僕でいいなら……
――じゃあ、決まりですね……
「いいですよ。私たちでよければ」
「マジっ!? やったー!」
「二人ともありがとーっ!!」
大喜びでハイタッチを交わす二人。
――さて、どうなることやら。
放課後。
柊木さんの席を中心に集まると、早速、勉強を始めるために筆記用具を並べようとしたのだけど。
「もりりんは、どこがいい?」
「え。ここじゃないの?」
「…………こととんは?」
――あれ? 今、スルーされた?
「森野君と同じく、私も教室を使った方が集中できると思います!」
キラキラな瞳が舞川さんを
「…………恋〜、どこにしよっかー」
「え、私の案は無視ですかーっ!?」
「どこにしよっかねぇー」
「柊木さんも!?」
二人は委員長の視線からそっと顔を逸らす。
――ふ、二人とも……。
あの反応だけで
「うーん……教室かぁ……」
「授業以外で勉強しようって気にはならないんだよねー」
「あぁー、わかるっ」
――わからないでもないけど、教室でやるのが一番いいと思うよ……?
わからないところを先生に聞きに行けるし。
「どうしよっかー? 早く決めないと時間なんてあっという間に経っちゃうよ」
「だなー。二人は他にないの?」
「「え、うーん……」」
中々決まらず、僕と委員長が唸っていると、突然、舞川さんが両の手のひらを叩いた。
「あっ。いいこと思いついちゃった~♪」
舞川さんがパァッと明るい表情を浮かべたとき、それは…………。
あれから学校を出た僕たちの目の前には、どこにでもある一軒家があった。
「へぇ~、ここが――」
「もりりんのお
「そ、そうだよ……」
――…どうして、こうなったかな……。
数十分前の教室、舞川さんが名案を思いついたというから、何かと思えば……
『もりりんのお
まさか、僕の家で勉強会を開くことになるなんて……。
――はぁ……。
「ねーねー、早く入ろ~!」
ルンルンな声の舞川さんが腕を引っ張ってくる。
「早く、早く♪」
「今開けるから……」
ズボンのポケットから出した鍵で扉を開けると、三人を先導する形で中に入った。
「「おおぉ……っ!!!」」
ごく一般的な家の玄関で驚かれても……。
ガチャリ――バタバタ――
「にぃ~たーんっ!」
「ん? あっ、鈴――」
ぎゅっ♡
「おかえり~♪」
「あはは。ただいまっ」
頭を優しく撫でると、鈴はリラックスした猫のように頬を緩ませた。
「えへへへっ♪」
「「「………………」」」
「……ん?」
ふと視線を感じて顔を向けると、三人がじーっとこちらを見ていた。
どうやら、小さな女の子が僕に抱きついた状況に思考が追いついていないようだ。
「? あっ。鈴、お姉ちゃんたちに挨拶しようか」
「んー? ――――…っ!!?」
鈴は柊木さんたちに気づくなり、慌てて後ろに隠れてしまった。ズボンにしがみつくその様子は、まさに震える子猫。
……まぁ、初めて会うのだから無理もないか。
「怖い人たちじゃないから大丈夫だよ」
「…………っ」
鈴はゆっくりと前に出ると、お行儀よくお辞儀をした。
「こ……こんにちは……」
「「「――ッ!!? こ、こんにちは……っ」」」
三人も同じようにお辞儀したのだけど。そのぎこちなさに思わず笑ってしまいそうになる。
――絶対に笑わないけど。
「妹の鈴です」
「鈴ちゃん…………もりりんの妹ちゃん、可愛すぎなんですけどーっ!」
舞川さんは徐に鈴と目線が合うようにしゃがむと、
「可愛いお名前だねっ♪ 鈴ちゃんって呼んでいい?」
「っ……い、いいよ……っ」
「いいの~!? 嬉しいぃぃぃ~っ」
名前を褒められてまんざらでもない様子の鈴。
初対面の子供と話すときは、上からではなく目線を合わせることが大切だ。
「やった~♪ じゃー鈴ちゃんは~、何才なのかな~?」
「うーんっと……いち……にー……さん……よん……よんさいっ!」
「へぇー。ちゃんと答えられてえらいね~っ♪」
「……えへへっ」
「「「…………っ!!?」」」
鈴の眩しい笑顔に、三人の心は射抜かれ――
「か……可愛いぃぃぃ~~~~~っ♡♡♡」
柊木さんも同じようにしゃがむと、カバンからチョコやポテチなどのお菓子を出し始めた。
「お菓子食べる? どれがいい? どれでもいいよ~」
「え、いいの~!?」
――あはは……柊木さん……
「んとねー、んとねー……うぅーん……」
「ああぁー可愛い……マジ天使……っ」
両腕で抱えるほどの量から選ぼうと悩んでいる姿に、キュンとする柊木さん。
「…………可愛い」
「? どうしたの、委員長?」
「へっ? な、なんでもないですよ!? 森野君の妹さんがあまりにも可愛くて私が触れるなんてそんなこと……考えたこともありませんからね!?」
――なんでもないことは、ないよね……。
「あらっ、なんだか賑やかな声がすると思ったら、もしかして、お客さん?」
「「「?」」」
三人が開いていたリビングの扉の方を見ると、一人の女性がひょこっと顔を出した。
「ふふっ、お帰りなさいっ」
「た、ただいま――――母さん」
「「「お、お母さん……っ!!?」」」
息ぴったりな三人の顔を見れば、なにを思っているのかは察しがつく。恐らく『わ、若いっ!』と思ったのだろう。
とっくに四十を過ぎているのにも関わらず、童顔ということもあってか、初対面の人は
「こんちわーっす」
「はじめまして~♪」
「お、お邪魔しています」
「いらっしゃい、ゆっくりしていってね」
「「はぁーいっ!」」
二人の元気な返事に、母さんは口元に手を当てて「ふふっ」と微笑む。
「へぇー、息子にも遂にモテ期が――」
「――か、母さんっ!! そんなんじゃないからっ!」
「またまた~♪」
「……それより、財布持ってどうしたの?」
「あぁー、実はさっき買い物に行ったんだけど、卵を買い忘れちゃった♪」
「電話してくれれば買ってきたのに」
「電話したわよ?」
「え? ……あ」
スマホのトーク画面を確認すると、そこには着信の通知が表示されていた。それも十分前に。
『悪いんだけど、近くのスーパーで卵買ってきてくれなーい?』
――あれ? どうして気づかなかったんだろ……。
「ふふふっ。もしかして、緊張してたのかな〜?」
「!! は、早く行ってきなよっ!」
「はいはい、ごゆっくり~。あ、鈴の面倒お願いねっ♪」
と言いながら靴を履いた母さんは、ニヤニヤした顔で出かけて行った。
――はぁ……まったく。
その後。
リビングに移動すると、僕はキッチンに入って飲み物の準備を始めた。
「私も手伝いますよ?」
「大丈夫だよ。委員長はお客さんだから座ってて」
「ねぇー、もりりーん」
ソファーに座って足をバタつかせていた舞川さんが、クルンっと体をこっちに向ける。
「中学の卒アルってないのー?」
「え? あるにはあるけど」
「卒業アルバムがどうしたのですか?」
「人の家に来たら、卒アルを見るのが定番でしょー」
「……どういう定番?」
「まあーいいから、いいから、見せてよ~」
「あっ、あたしも見たーい」
「えぇ……」
「ダメですよ! ここに来たのは勉強するためなんですから」
「「ええぇーっ」」
そんな会話を挟みつつ、コップにオレンジジュースを注ぎ入れ、おぼんの上に乗せた。そして、それらをテーブルの上に並べると、真ん中に柊木さんのお菓子が置かれた。
「ねーねーにぃーたん。このほん、なーに?」
鈴が指さしたのは、僕がカバンから出した数学の教科書だった。
「ああぁ、これはお勉強をするための本だよ」
「おべんきょー?」
「あははっ。鈴ちゃん、最後は伸ばすんじゃなくて『う』だよっ」
「お……おべんきょ……う?」
「ピンポーンっ♪」
「さあ、これより、勉強会を開催します!」
委員長の声を合図に、勉強会の幕が上がった。
リビングのローテーブルを囲うようにして始まった勉強会。
「よしっ! がんばるぞーっ!!!」
気合十分の舞川さんがペンを走らせる…………が、僅か一分後。
「ああぁー疲れたぁー……」
と言ってお菓子の山の中からスティック状のチョコスナックを一本手に取り、ポリポリと食べていく。
また一本、また一本と食べていき……そして、
「やっぱりこれが定番だよねー。あ、なくなっちゃったー」
あっという間に小袋の中身が空っぽになった。
「ま、舞川さん! まだ始まったばかりですよ!?」
「糖分が切れちゃったんだからしょーがないじゃーん」
「そんなにすぐ必要になるほど勉強していないじゃないですか! テストは明日なんですよ!? そもそも――」
と早速始まった口論の隣で、柊木さんはというと、
「ふんふんふ~ん♪」
「えへへへっ」
心地いい鼻歌を奏でながら、膝の上に乗せた鈴の頭を優しく撫でていた。
どうやら、鈴には癒し係の任務が与えられたらしい。
「鈴ちゃんはー、今日幼稚園でなにしたのー?」
「えぇーとねー、おえかきーっ!」
「お絵描きかー。ねぇ、その描いた絵、今度お姉ちゃんに見せてくれるかなー?」
「うんっ、いいよーっ!」
「ホント!? 嬉しいぃぃぃ~っ」
ペンをノートの上に置くと、満面の笑みで鈴の頭を撫でる柊木さん。
撫でたくなる気持ちはわかるけど。
――このままだと、勉強会の意味が……はぁ。
そんなこんなで勉強会が始まって二十分が経過しようとしていた頃、
「なあー森野、ここなんだけどさー」
隣に移動した柊木さんが、教科書の問題文を指さして尋ねてきた。
ちなみに、鈴はソファーの上でクマのぬいぐるみと一緒に遊んでいる。
「ここってどうやって解くの?」
むにゅっ……。
「あ……」
「? どしたの?」
「いや、べ、別に……っ」
「? なら早く教えてよ」
「う、うん……」
腕に当たる感触と、ふんわりと香る女の子の匂い。
その至近距離に、心臓はバクバクと高鳴っている。
――や、柔らか……じゃなくて!
「――ふふっ」
ふと前を見ると、テーブルに頬杖をつく舞川さんがニヤァーとした顔でこっちを見ていた。
――み、見られてたっ!?
「舞川さん! よそ見をしないで次の問題に集中してくださいっ!」
「はぁーい♪」
――次は、これでイジられるんだろうな……。
「うぅ~ん、この問題は……」
じーーーーーっ。
「……? 鈴ちゃん、どうしたの?」
名前を呼ばれると、鈴はソファーから下りて舞川さんの隣に立った。
「おねーちゃんの……おっぱい、おっきぃいいいーっ!」
「へっ?」
舞川さんの口からは珍しく素っ頓狂な声がこぼれた。
「お、おっぱい?」
「うんっ!」
「おっぱい……おっぱいかー……」
舞川さんは、机の端に乗せている自分の胸と……なぜか柊木さんを交互に見ると、ニヤッとあの笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん、いいこと思いついちゃったー♪」
「いいことー?」
「ふふっ」
――あの顔、なにかが起きるような……そんな予感が……
「アタシの『これ』と~
――やっぱり……って、ええぇ……っ!!?
「ま、舞川さんっ! 今はそんなことをしている場合では――」
「じゃあ最初は、恋お姉ちゃんからねー」
「えっ? ――…あんっ……!」
突然、柊木さんの口から喘ぎ声が漏れた。
鈴が、その小さな手で胸を揉んだからだ。
「すごーいっ。モチモチ~っ」
「あっ……鈴ちゃん……ダメ……っ」
まず学校では見ることのできない……頬を赤く染め、身じろぐその姿……。
――…ぼ、僕は、一体なにを……見せられているんだ……。
……ほんとは、お兄ちゃんとして『ダメだよ』と注意しなければならないのだけど。
横で繰り広げられる仲睦まじい? 光景から目が離せない。
「んっ……」
鈴の純粋な好奇心に、柊木さんはただじっとしていることしかできなかった。
そして一分が経過したところで、鈴は舞川さんの膝の上に移動すると、さっきと同じように胸を……
「んんっ……♥ 鈴ちゃん……上手だねっ……」
柊木さんのときとは違う、なんというか……イケない雰囲気を感じる。
「おや~? もりりん、どうしたの~……っ?」
「…………ッ!!?」
「ふふっ。気になるなら、後で揉ませてあげよっか~……?」
「なっ……」
――揉む? 今の鈴みたいに……
「そ、そんなことはダメですっ! 不純です!」
「ええぇー、ダメー?」
「ダメに決まっていますっ!」
委員長は立ち上がると、腰に手を当てて言った。
「とにかくっ、そんな破廉恥なことは一刻も早く止めて、勉強を再開してくださいっ!」
「「はぁーい」」
委員長の一声で、“乳比べ”という幸せなイベントは幕を閉じたのだった。
次の日の朝。
「あの、舞川さん」
いつものように席でお喋りをしていた二人に、委員長が声をかけた。
「こととん、どしたのー?」
「えっと、これをお返ししようと思いまして」
そう言って委員長が出したのは、一冊の本。それは、昨日、舞川さんから没収したファッション誌だった。
「え、もういいの?」
「はい。次から気をつけてくれれば」
「こととん……。ありがとーっ♡」
「いいんちょー!!!」
「わぁっ! く、苦しいぃいいいーーーっ!!」
嬉しさのあまり抱きついてきた二人に首を絞められ、慌ててそれを振り解こうとする委員長。
没収とは言え、返さないというわけではないようだ。
……厳しいけど、本当は優しい。こういうことを、ギャップって言うんだろうな……。
――ギャップ……ギャップ…………ギャップ? ――――…あ。
キーンコーンカーンコーン。
「チャイムも鳴りましたし、私は席に戻り――」
「ふふふっ♪」
「な、なんですか?」
二人は顔を合わせて不敵な笑みを浮かべた。
このとき、直感的に嫌な予感がしたのだが、果たして……。
――…ま、まさか……
「いいんちょーってさ……」
「実は……ダ・イ・タ・ン♥ だったんだね~」
「えっ?」
委員長は、寝耳に水と言わんばかりに不思議な顔を浮かべている。
「あたしら知らなかったなぁ~」
「ど、どういう意味ですか?」
「ことと~ん、アタシら知ってるんだよ~♡」
「なにをですか!?」
二人は目を合わせると、委員長の両端に立つ。
「こととんが、実は……とてもエッチなパンツを履いてるってこと……っ♡」
「えっ――」
「「それぇぇぇぇ~♪」」
二人が息の合った動きで委員長のスカートの裾を、思いっ切り捲り上げた。
――あ、今日は紫……
「きゃっ、きゃああああああああああーーーーッ!!!!!」
絶叫に近い叫び声を上げた委員長は、顔を真っ赤にしながら慌ててスカートの裾を手で押さえた。
「「あははははっ!」」
教室中からなんだなんだと三人に視線が集まったが、どうやら具体的になにがあったのかは、わからなかったようだ。
委員長からすれば、救いとしか言いようがない。
――だって……
あれは、勉強再開から三十分が経過した頃、
「もりり~んっ! ここわかんなぁーい!」
「どれ? ああぁ、その問題はさっき教えた公式を――」
「忘れちゃった♪」
「……じゃあもう一回、最初から――」
「っ……も、森野君。あの……」
教科書から顔を上げると、委員長がムズムズと体を小刻みに震わせていた。
――その
「廊下を進んで左だよ」
「お、お借りします……っ」
そう言って、委員長は急いで扉の方へと向かおうとしたのだけど。
「――――え」
「おおぉ……っ!」
「へぇ~」
僕たちの目は、扉の方に向かう委員長の下の方へと向けられていた。
スカートの裾が…………捲れ上がっていたのだ。
恐らく、座っている間に裾が変な曲がり方をしたのだろう。それによって、ショーツがまる見えになっていたのだけど。
――委員長が……そんな……
そのショーツが、セクシーな黒のレースで、なんと……透けていた。
それだけでも、普段のイメージとはかけ離れているというのに、まさかの――――…『紐』という。
「「「………………」」」
無言で委員長を見送り、そして…――――――ガチャリ。
その姿が見えなくなったところで、二人は自ずと目を合わせると、
「「え……えっろ……ッ!!!」」
「…………っ!!?」
あまりの声の大きさに、一瞬、委員長が戻ってくると覚悟したのだけど。幸い、聞こえてはいなかったようだ。
ホッと一安心……というわけにもいかず。
「ねぇ、今の見た?」
「見た見たー♪」
ローテーブルを挟んで盛り上がる、二人の楽しそうな声。
――…はぁ。さっき鈴を部屋に寝かしつけておいてよかった……。
さすがにあれは……まだ早すぎる。
それにしても、委員長×セクシー下着という組み合わせから、そこはかとなく禁断の香りがするのは、きっと僕だけではないはずだ。
結局、委員長がトイレから戻ってきた後も、すぐに勉強を再開することはできなかったのだった。
――それにしても、まさかあの委員長が……
「………………」
……なんだか急に、痛い視線が自分に向けられているような……そんな気が……
「……見ましたね?」
「!!? み、見てないよ……っ!?」
「……本当ですか?」
「本当です!」
僕が抗議の声を上げていると、
「森野ヤラしい~」
「もりり~ん、パンチラゲットおめーw」
「……っ!! 森野君ッ!?」
あ、あれ……? いつの間にか、僕が完全に悪者扱いみたいになっているんだけど。
「あはは……はぁ……」
ちなみに、二人の小テストの結果は………………言うまでもないだろう。
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