第3話 心が求めるもの

葡波くんの後をついていくと、大きなお屋敷の前で立ち止まる。

えっ、まさか…ここ?それは大きな門構えの西洋のお城のような家!

葡波くんてお金持ちの息子さん?なの?

びっくりするのは失礼だろうけど、だって制服はラフに着てるし、横柄な態度、それに口調だって、あんなだし…。

どっから見たってお坊ちゃんには見えない。


あれこれ考えているうちに玄関へ。

葡波くんがチャイムを鳴らす。

すると、中から使用人らしき気品のあるおばあさんが…。

「ただいま。チビは?」

「お帰りなさいませ。チビちゃんは坊っちゃんのお部屋でお元気にされてますよ。」

「こいつ…どうしてもチビをみたいってゆうから連れてきた…。」

とおばあさんと目が合う。

ゆっくり会釈をする。

「まぁ、坊っちゃんがお友達をお連れするなんて初めてじゃないですかー!まあまあ、どうぞ。」

と満面の笑みでいう。

その側で、葡波くんが額に手をやり恥ずかしそうにうつむいていた…。


葡波くんの部屋に入ると「キャンキャン!」とあの子犬が駆け寄ってくる。

ぎゅーと抱きしめ、顔をスリスリする。

「元気そうでよかったー!ほんとよかった!」

葡波くんはデスクの椅子に座り、優しい笑みを浮かべじっとこの光景をみていた。

ちょっと恥ずかしくなったので話かけた。

「葡波くんさ…もしかしてお坊ちゃんだったの?」

聞くなり、葡波くんはあわてて立上がり

「それをゆうな!外で絶対にゆうなよ。ひどい目みるぞ。」と私を見下ろす。こうやってみるとほんと大きい…。

かなり照れているのがなんだか可愛い。

普段はみんなにはかくしてるってことか…。


「わかったわよ。それとチビって…。もっとこう綺麗な名前…例えばローズとかジャスミンとかパール、サファイアとかー!」

「バーカ!こいつ雄だよ。」

あっそうなんだ…。そんなん考えてなかった。葡波くんと目が合い2人して笑った。


「ところであんた、犬好きなのか?それはみててわかるけど…。」

「ええ、犬ってゆうか、動物全部…かな。動物ってなんの見返りもなく癒しをくれるでしょ。そんな動物たちが元気でいられる世の中にしたい…私、獣医さんになりたいの。」


はっ!私なんでこんなこと…誰にもいったことなかったのに…。葡波くんにそっと視線をうつすと彼は黙って聞いてくれていた。


「なれよ。あんたならなれんだろ。」

「無理よ…お父様が許してくれないわ。もうお父様には逆らえないもの…。前の婚約破棄の件もあるし…これは私の妄想!もういいの…。」

そう…私はもうお父様には何もいえない…いってはいけない…そう感じている。いろいろ頭をめぐっていると自然と握った手に力が入る。

「ほんとにそれでいいのか?あんたは…。」

と葡波くんが少し険しい表情を浮かべながらいう。

「いいの!もう決めたことなんだから…。それよりチビって…」と私は話をチビの話題に変えようとしたとき…


「いつまでもそうやって父親のいいなりかよ!つまんねぇ人生だな…。」

私は本心を見透かされて悔しかったのか…

「葡波くんに何がわかるのよ!私の気持ちなんて誰もわかってくれない…勝手なこといわないで!」

声を荒げた瞬間、腕を捕まれベットへ押し倒された。

えっ!何?葡波くんが覆い被さってくる。

何が起こったのか理解するのに時間はかからなかった…

「そういうの見てるとイライラする。」

「や、やめて!なんでこんなこと…」

「だいたい無防備すぎんだろ!男の部屋にほいほいついてくるってのはこういうことOKってことなんだよな。」

といいながら強引に唇を重ねてきた…。

突然のことで頭は真っ白。

とっさに私は彼の頬にビンタをしていた。

そして、部屋から一目散に駆け出した。

ひどい…最低…。

葡波くんはそんなことする人じゃないって思ってたのに…。


私のファーストキス…返してよ…。

走りながら、目には涙があふれていた…。








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