第四章:竜騎士王到達編

第24話 領主級への道

 「早過ぎじゃないのか、まだ一年にも満たないのに?」

 「むしろさっさと試練を終わらせて、史上初の最年少領主として盛り立てよう」

 「それもあるな、ならば竜也君達の竜騎士王到達を進めよう」

 パソコンを通じてリモート会議をするアーサーとクラウス。

 彼らは竜騎士としての成長が早い竜也達を領主級へ昇格させようとしていた。

 「問題は、因縁によりできた己の影を越える試練だね」

 アーサーが一番の難点を語る。

 「ああ、普通なら祖先の霊と対決させるのだがな」

 「会長はジークフリードの試練は、娘婿の竜也君ではなく実の息子に与えたいと」

 「ああ、竜也君も私の可愛い息子だが系譜は別だからな」

 「系譜か、僕からも竜也君にそういう因縁がないか聞いてみるよ」

 「頼むよ、私は老人達に根回しして回らないといけないからね」

 「頑張って下さいよ、会長何ですから」

 そうして、アーサーとクラウスは会議を終えた。


 「え? 領主級の試練ですか、俺達まだまだなんじゃ?」

 「お父さんがやった、ご先祖様の霊とタイマンすれば良いの?」

 後日、日本支部に呼び出された竜也達はアーサーから話を聞かされる。

 「経験的にはそうなんだが、内包する力は領主級だとの判断でね」

 アーサーも疲れたように溜息をつきながら語る。

 「受けろと言うなら受けます、それが俺とリンちゃんの為になるなら」

 「私もたっちゃんと私の為に受けるよ、大分早まった気がするけれど」

 竜也とジークリンデが手を握り合いながら受ける意志を見せる。

 「君達の力は二人の絆から来てるのかもな、承諾してもらったのはありがたいが

何か試練たりえる因縁の相手みたいなのは竜也君にはいないかな?」

 アーサーが竜也に尋ねる。

 「因縁か、だとしたら黒月の鎧こくげつのよろいかな?」

 竜也が答える。

 「何それ? もしかして白陽と関係があるの?」

 漢字の名前からして岸野流に関わるものだと勘付くジークリンデ。

 

 「ほう? それは、どんな物なのか興味深いね♪」

 アーサーも博物館の館長として興味を覚えたようで聞いてくる。

 「ご先祖が白虎の眷属である、虎の精霊の白牙様から貰った二つの鎧の一つでさ白陽と黒月ってのがあるんだ白陽は学に黒月は俺が継ぐみたいな予定で」

 と言い出した所でジークリンデが不安げな顔になる。

 「その前になんで君の家は、白虎の眷属と縁ができたのかな♪」

 アーサーがわくわくした顔で聞いて来た。

 「戦国時代浪人になった家のご先祖が、アユタヤに行ったけど挫折してタイから日本へ帰る途中に中国で白牙様を崇める人虎の里で村長の娘と結婚したそうです」

 竜也が伝承を思い出しながら語る。

 「なるほど、それは実に君への試練に相応しい相手だな」

 アーサーが頷く。

 「え? 支部長、まさか私達にその鎧と戦えって言うの?」

 ジークリンデが嫌そうな顔をする。

 「その通りだ、領主になるには己の影を乗り越えなければならない」

 アーサーが言い切る。

 「まあ、確かに後腐れなくするには決着は付けないけどさ」

 竜也は色々と思いながら納得した。

 「流石は英国王が見込んだ少年だ♪」

 「支部長、面白がってない?」

 「ところで、領主級りょうしゅきゅうについて強い竜騎士以外の事がまだわからないんですが教えてもらっても良いですか?」

 ジークリンデとアーサーの会話に混ざり竜也が尋ねる。


 「良いだろう、講義の時間だ♪」

 アーサーが活き活きとした表情になる。

 「支部長、嬉しそう」

 ジークリンデが睨む。

 「私は授業をするのが好きなんだよ、研究も好きだがね♪」

 アーサーがニコニコ笑う。

 「支部長、何か先生って印象ですよね」

 「うん、学校とかにいたら人気出そう」

 「これでも教員免許はあるよ、まあともかく領主と言えば何を思い浮かべる?」

 アーサーが竜也達に問いかける。

 「やっぱり、土地を治める人かな?」

 「偉そう、後うちのお父さんみたいに格好つけてる」

 竜也は普通に、ジークリンデは父親を思いながら答える。

 「ふむ、どちらも合ってはいるな♪ 土地を治めるには格好付けないといけない

所があるんだフランスの王様が部下の貴族に質素な格好をしようと言ったらみすぼらしい格好の奴に誰が付いて行くかと逆ギレされたりしてる」

 アーサーが二人の答えを認めつつ、例えを挙げる。


 「何と言うか、ヒーローにも通じる物がるな」

 「うん、ヒーローも見た目って大事だしね悪党に威圧ができないとイニシアチブが

取れないし相手の気を制せないと戦わずして勝つとかもできないよね」

 アーサーの例えに頷き自分達の考えを語る竜也達。

 「まあ、それはさておき竜騎士の領主というのはご当地ヒーローみたいに自分の守備範囲を持っている」

 「でも、お父さんとかあちこちいってるけど?」

 ジークリンデが疑問を言う。

 「まあ、持ってはいるけれど縛られてはいないのは正騎士と同じ」

 アーサーが答える。

 「じゃあ、土地と領主の関係って何だろ?」

 竜也も疑問を口にする。

 「うん、領主と土地の関係は領主が自分のテリトリーにしている土地と住民から税金を取るみたいに力を吸い取れるんだよ土地や住民の意思とは関係なく」

 アーサーが答える。

 「鬼、悪魔、税務署!」

 竜也が叫ぶ。

 「それだけ聞くと悪代官だね」

 ジークリンデが引く。


 「うん、引かれるよね? だから領主級の竜騎士は、悪代官にならないようにその力の行使に制限がある上に力を借りる為には地域に貢献をして住民からの支持を得ないといけないのでお金がかかる」

 アーサーが説明をする。

 「だから、半分スポーツ選手化してあれこれ競技をしてイベントをやって金を稼いでいると聞くと世知辛すぎる」

 竜也は、竜騎士の馬上試合やドラゴンレースが何故行われるのか納得した。

 「支部長、でもただお金稼いでるだけじゃないよね?」

 ジークリンデがないかに気付いた。

 「ああ、ジークリンデ君は気づいたか♪ 竜騎士とドラゴンがお金を貯める理由」

 アーサーが生徒が正解に辿り着いたかとニヤリと笑う。

 「竜也君もゲームとかでドラゴンが財宝をため込むって聞いた事はあるだろ?」

 アーサーが竜也に話を振る。

 「はい、RPGでドラゴン倒すと金や経験値がガッツリ入るんで」

 竜也がゲームの知識で答える。

 「そう、その元ネタが領主級の竜騎士と繋がるんだ♪ 答えはわかるよね?」

 「あ、稼いだお金に宿る人々の想いを吸い取って力に変えるんだ♪」

 「正解だ♪ お金には人の想いが魔力となって込められてれる、どこかの漫画みたいに力を分けてくれって叫んでも得られるがこの方が手軽に力を集められる」

 アーサーが喜びながら語る。

 「で、力を吸ったらお金を使って世の中に流通させて想いの魔力を人々に込めて貰いそのお金を稼いで集めて力を吸うっ……て、なんだか面倒だね」

 ジークリンデは疲れたような顔をする。

 「まあ、経済回さないと生きて行けないしヒーローは民に支持されてこそだから」

 竜也が苦笑いする。

 「世の中ただじゃないからね、さっきいた点が領主級が普通の竜騎士と違う所」

 アーサーも苦笑い。

 「と言う事は、領主級はそうして力を集められて集めた力で強敵を相手にするって事ですよね?」

 竜也が気付いた事を尋ねてみる、力を集められるならその力を使う必要がある敵が出て来ると言う事だ。

 「そうだね、滅多にはないけれど惑星を滅ぼすレベルの怪獣や異次元からの侵略者相手に使われるんだ」

 アーサーが室内のホワイトボードにペンで図を描きながら解説する。

 「そう言った大規模な脅威に対抗する時に、領主級の竜騎士は仲間の竜騎士だけでなく他のヒーローとも協力して対応するんだがそう言う戦いで領主級の騎士は自分が土地や人々から集めた力を他のヒーロー達にも分け与えられる」

 アーサーが領主級の竜騎士が他のヒーロー達に力を与える様子を描く。

 「自分が前に出るだけでなく、指揮官的な事もできるんですね」

 「本当にやる事が合戦の時の武将みたいだね」

 「ああ、戦いは数だからね♪ これが簡単ながら領主級の竜騎士のできる事だ」

 アーサーがまとめると竜也達は拍手をした。

 

 アーサーの講義が終わり、自分達に示された道を知った竜也達。

 「何というか、そうい事が出来るんだな竜騎士って」

 「う~ん、私は普通にフリーランスに悪党退治するのが好きだけど」

 「確かに、気ままにできるのが一番だよな」

 「そうだよね、けどそうも言ってられないんだよね私達」

 ファフナー邸に戻り今で話し合う竜也とジークリンデ。

 「学校もあるしな、とはいえその領主級になる条件が面倒だな」

 竜也が溜息をつく。

 「大丈夫だよ、私達ならその黒月の鎧もどうにかできるよ♪」

 「ああ、そこは心配していないんだリンちゃんが支えてくれるから」

 「頼ってくれて嬉しいけれど、何が心配なの?」

 「俺達が倒して、鎧を継承した後の継承者はどうしようかって?」

 「それなら大丈夫だよ♪ 私達が三人以上子供作れば問題なし♪」

 ジークリンデがポンと自分の腹を叩く。

 「いや、そういう問題じゃないような?」

 「そういう問題だよ♪ 面倒なのは邪悪な怪物を五百体倒せってのだよ!」

 ジークリンデがぶーたれながら呟く。

 「ああ、そんなゲームみたいにホイホイ敵が出てこられてもなあ?」

 「積極的に仕事して行くしかないよね」

 「ソシャゲの周回みたいなクラスチェンジの条件だけれど、こなすしかないよな」

 示された領主級への道。

 その条件は二つ、一つは因縁によりできた己の影を越える事。

 もう一つは、邪悪な怪物を五百体倒す事。


 竜也達はRPGのように与えらえた二つのクエストに挑む事となった。

 

 そんな竜也達が悩む一方、何処とも知れぬ薄暗い場所。

 戦陣の中でたたずむ武将のように飾られた漆黒の鎧。

 兜に金の満月の飾りが付いたその鎧の名は黒月。

 黒月の顔全体を覆う面頬の両目に青白い鬼火が灯る。

 「ついに我が下に来る気になったか、我が継承者よ」

 黒月に宿る魂が語り出す。

 「早く我が下へ来い、そして我に力を見せよ」

 竜也が自分と向き合う気になった事で目覚めた黒月の魂。

 誰もいない場所で一人語る黒月、その口調は何処か楽しげであった。

 竜也と黒月、鎧とその主になる者の対峙の時が迫っていた。

 

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