第16話  必中! 能力クレー射撃!

 「マシンレース、惜しかったな」

 「申し訳ありません、会長」

 「千鶴、結構やるじゃん♪」

 「先輩、お疲れさまでした」

 第一競技、王道館は三位と言う結果であった。

 「負けたら悔しいだろうが、他校生との友情は財産だぞ♪」

 千鶴に笑顔でサムズアップする牛田。

 「会長、笑顔が暖かいです」

 落ち込んでいた千鶴が微笑む。

 「さすが会長ね♪」

 「いや、マジで男前っすね」

 ミサキと学が会長に感心する、仲良し生徒会な王道館であった。

 「じゃ、次の競技は私ね♪ 千鶴はバトルジョストがチャンスよ♪」

 「うん、今度は負けない」

 「イエ~イ、その意気♪」

 千鶴とミサキが拳を突き合わせる。

 

 そしてミサキは待機場所である生徒会室を出て、競技場へと向かった。


 サリ女の面々は自分達の控室でお茶会をしていた。

 「おめでとう、ジョー♪」

 エリザベスがジョーを祝う。

 「次はフィーナだね、頑張って♪」

 ジョーが頷きフィーナに話を振る。

 「ええ、頑張って来るね皆♪」

 フィーナが仲間達全員の顔を見て言う。

 「ま、次も家の勝ちで決まりなのだ♪」

 ヴァネッサが板チョコをかじりながら呟く。

 「ヴァネッサ、駄目ですよ油断してわ!」

 メイがヴァネッサに注意する。

 「メイこそ、ジョストで油断するななのだ」

 ヴァネッサがメイに叫ぶ。

 「わ、私だって油断しませんよ!」

 「油断しなくても負けそうなのだ♪」

 言い返してきたメイにヴァネッサが笑う。

 「貴方達、品がなくてよ?」

 エリザベスが笑顔でメイとヴァネッサの二人に注意する。

 「ま、せいぜい頑張りなよ二人共♪ 私は仕事は終えたから♪」

 ジョーは関心がなさそうに笑う。

 「家のチームワーク、こんなだけど大丈夫かな?」

 フィーナが汗を流しながら乾いた笑いをこぼす。

 「大丈夫、家は属性がぶつかり合いながら進むのが伝統だから♪」 

 エリザベスが微笑む、仲良しだけがチームではないと言外に言っていた。


 他の控室の様子などを知らぬ椿原チーム。

 「次は射撃、夢田君の出番ね♪」

 山津会長が希に話を振る。

 「うん、光線のエネルギーは万全だから♪」

 希はサムズアップで答えた。

 「変身前は飯でエネルギー充填か、便利だな」

 レースでは二位だった飛車が呟く。

 「変身後も周囲からエネルギー吸収して補えるけど、一気に全快とかは無理だよ」

 飛車の呟いた疑問に対して答える希。

 「まあ、まだ家は二位だし夢田君はのびのび参加してね♪」

 山津会長が希に言葉をかける。

 「うん、そうするよ会長♪」

 会長に同意する希。

 「俺らは応援してるから」

 「ま、負けても私達が他の競技で補填すれば良いし♪」

 竜也達も気楽に行けと伝える。

 「勝ち負けも大事だけど、楽しむのも大事だからね」

 マルタも竜也達に同調した。

 「そうだね皆、リラックスして楽しんで来るよ♪」

 仲間達の言葉に希が頷くと、彼らも控室を後にした。


 王道館の校内のあちこちにある案内板に従って進み、次の会場へと転移した。

 「今度は、自衛隊の椿原基地の射撃訓練場か?」

 竜也が会場を見回して呟く。

 今回の会場は自衛隊の射撃訓練場だった。

 観客席は白テントの下に並べられたパイプ椅子。

 「ほう、流石は岸野流と言う事か?」

 「え、王道館の生徒会長?」

 観客席が近かった椿原と王道館のチームが顔を合わせた。

 「牛田だ、うちの書記の従兄弟だそうだが転校して来ないか♪」

 「ちょっと牛田君? 彼はあげないわ♪」

 「山津さんか、それは残念だな」

 竜也に声をかけてきた牛田、その間に割り込む山津。

 「そこのお三方、そろそろ開始ですわよ?」

 そこへエリザベスがやって来て会話に混ざる。

 「そうだな、席について応援しよう」

 空気が微妙になった所で、牛田が自分達の席へと戻った。

 それに合わせて竜也達も席へと戻る。


 勝負の場である射撃のレーンに、三つの光が灯ると選手達が姿を現した。

 

 椿原の代表、体に星型の結晶が付いた人間サイズの銀の超人ヘリオスマン。


 王道館の代表は、赤い着物を着た紫の毛皮の猫人間に変身した猫目ミサキ。

 彼女は化け猫の半妖怪であった。

 

 最後はサリエル魔法女学院代表のフィーナ、彼女の服装はピンクのサーコートを纏い頭に黒い羽付き帽子を被り腰にはサーベルとフランスの銃士隊をイメージした魔法少女服を纏っていた。


 選手が揃った所で競技がスタート、飛んで来る的をどれだけ能力で破壊できるか?

 ルールはシンプルだが、ライバルの的を破壊しても得点になるのが能力クレー射撃

のミソだ。

 「マジカルロック、シュ~~~ト♪」

 フィーナが虚空からマスケット銃を召喚し、緑色に光る魔力のビームを射出する。

 「妖術、猫目ビーム!」

 ミサキも黄色い瞳を輝かせ、目からビームを出して自分の的を破壊する。

 「ヒュペリオンシャワー!」

 そして、ヘリオスマンは胸の結晶から金色のビームをシャワー状に放出して一気に

他のレーンの的も纏めての撃破を狙う。

 ヘリオスマンの狙いを読んでいたミサキ達も、ビームを分裂させたりライバルの光線を念力で曲げたりと射撃と妨害を同時に行うという高等テクニックを繰り出していた。

 「これはもはや根競べだな、技を出しつつ対戦相手の妨害を迎撃するのは脳の処理が追いつかん所業だ」

 観戦しながら牛田が呟く。

 「たっちゃん、ヘリオスマンの額の星が点滅してるよ?」

 「え、あれってエネルギーが減ってるんじゃね?」

 竜也達が仲間のヘリオスマンの様子がおかしい事に気付く。

 だが、様子がおかしくなって来たのは他の二人もだった。

 

 「フィーナちゃん、変身が解けかけてる!」

 「魔力が切れかけてるのだ!」

 メイとヴァネッサが仲間の身を案じる。


 シューティングゲームの如く弾幕を打ち合う選手達、電光掲示板の得点も変動していく。

 やがて最初にフィーナが八十点の記録を出して倒れた。

 次に、九十点の記録でダウンしたのはヘリオスマン。

 最後に、百点の記録を出したミサキが勝者となって倒れた。


 倒れた選手をそれぞれの仲間が助け起こしに行く。

 「お疲れ様です、ミサキ先輩」

 「見事だったぞ、猫目君」

 「ミサキ、ありがとう♪」

 勝利を喜び仲間を労る王道館。


 「夢田君、しっかりして!」

 「会長、魔法で助けてやってくれ」

 「取り敢えず、動かさない方が良いわ」

 「希、しっかりしろ!」

 「え? 大丈夫なの?」

 「任せて、すぐに起きるから」

 山津会長が元に戻った希へ手をかざして光を出し、回復の魔法をかける。

 椿原チームも仲間を案じていた。


 「フィーナ、お疲れ様」

 サリ女はジョーがフィーナへと駆け寄り抱きかかえて連れてくる。

 「フィーナは頑張ったわね、休ませてあげましょう」

 エリザベスも、ジョーに抱きかかえられたフィーナの額に手をかざして魔法をかける。

 「う、会長? 申し訳ありません」

 目覚めたフィーナが誤る。

 「大丈夫ですよ、私達が逆転しますから♪」

 メイがフィーナを励ました。

 「そうなのだ、後は任せるのだ♪」

 ヴァネッサもフィーナには優しかった。


 三校戦の二つ目の競技は、王道の勝利となった。

 総合順位は、どの競技も二位の椿原が一位でサリ女と王道館が同率二位。

 

 三校戦の一日目がこれにて終了となった。

 参加者達がそれぞれ帰宅するとなった時に、ジークリンデが驚きの声を上げた。

 「え、こういう大会ってどっか泊まるんじゃないの?」

 ジークリンデが残念そうな顔をする。

 「いや、リンちゃんここ地元だから普通に家に帰ろうよ」

 竜也がツッコむ。

 「あ~♪ ごめんなさいね、三校戦は県内だからそこまでの規模じゃないの♪」

 ご飯代くらいしか出ないのと、山津会長がジークリンデに謝る。

 「リンちゃん、他校生にアホの子を見る目で見て来るから帰ろうぜ」

 竜也がジークリンデをなだめる。

 「僕、先に帰りますねまた明日~♪」

 元気になった希は我先にと家路へ駆け出した。

 「私も帰ります、学君と一緒にいたいけれど!」

 マルタが血の涙を流しながら帰宅する。

 「あ~、学にはフォローするように言っておくよ」

 そんなマルタを見送る竜也。

 「それじゃあ、岸野君達は明日はお願いね♪」

 山津会長も空を飛んで帰って行った。


 サリ女チームも馬車に乗って帰って行った。

 「お、椿原の皆も下校か♪」

 王道館の牛田が校門から出て来る、学やミサキに千鶴も一緒だ。

 「会長、お好み焼き屋で作戦会議しましょう♪」

 ミサキが牛田に提案する。

 「ミサキ、まだ期間中だから駄目!」

 千鶴がミサキに注意する。

 「そうですよ、他校生も見てますし」

 学が竜也達を見て言う。

 「ふむ、では各自一旦帰宅したのち商店街の焼きモンジャーへ集合だ♪」

 牛田が笑顔で提案する。

 「やった、ラジャー♪」

 ミサキが喜ぶ。

 「会長は甘いですよ、ラジャー」

 千鶴はため息をつきつつも承諾する。

 「おっす、ラジャーです」

 学も同意した。

 「それでは、各自一旦解散だ♪ 椿原の皆さんもごきげんよう♪」

 牛田が明るい笑顔で纏める。


 「あら、相変わらずナイスガイね牛田君♪」

 山津会長が微笑む。

 「会長~? 私達も打ち上げとかやらないの?」

 ジークリンデが山津会長に尋ねる。

 「家は家、そういうのは岸野君と二人でしなさい♪」

 山津会長が竜也を見て微笑む、言外に連れて帰れとの圧だ。

 「リンちゃん、今日は家で飯食って行ってくれよ」

 竜也がジークリンデに声をかける。

 「ぶ~! わかった、じゃあたっちゃん帰ろう!」

 竜也とジークリンデが帰宅したのを見て、山津会長も家路へと向かう。


 そして帰宅した竜也は、ジークリンデと自宅で食卓に着いていた。

 「明日は俺達の出番だな、頑張ろうぜリンちゃん♪」

 「任せて、私がたっちゃんを勝利へと連れて行くから♪」

 山盛りご飯を食べる手を止めて拳を握るジークリンデ。

 「一年生で、三校戦に出るって二人共流石ね♪」

 竜也の母である姫子が、笑顔でジークリンデの分の追加のカツオを捌く。

 「たっちゃんと一緒に頑張ります、お義母様♪」

 追加で出されたカツオのたたきを一気に平らげてから誓う、ジークリンデ。

 「ああ、俺も誰が相手になるかわからないけれど全力で頑張るよ」

 竜也も母に健闘を誓う。

 「学君と当たる事になっても頑張りなさいね、身内だからこそ全力で勝負よ♪」

 姫子が武術家の娘らしく竜也達に諭す、母の言葉に竜也達は頷くのであった。

 

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