第15話 三校戦、開幕のマシンレース

 「お、お城だよたっちゃん! 学校の周りに石垣がある!」

 ジークリンデが王道館高校の正門を見て驚いた。

 「この学校、明治に殿様がお城を学校に改築して作ったんだよ」

 竜也が地元の歴史を語る、王道館の正門周りは日本の城の城門と

壁で囲まれていた。

 「お城の学校王道館ってな、古けりゃ良いってもんじゃあねえさ♪」

 飛車が椿原かるたの一句を詠んで笑う

 「高速先輩、他校への敬意は払いましょうね!」

 マルタが飛車の脇腹へ鉤突きを入れる。

 「ちょ、鉄鋼寺さん! うちの戦力を減らさないで!」

 山津会長が慌てて、飛車を魔法で回復させる。

 「外でも風紀の鬼だよ鉄鋼寺さん」

 希がガタガタ震える。

 そんな椿原チームの背後からパカパカと馬の足音が響く。

 

 「お~っほっほ♪ サリエル魔法女学院のお通りよ~♪」

 エリザベスが美声を響かせバラの花弁を巻きながら、巨大な馬車を走らせて来た。

 椿原チームは全員が飛び退いて難を逃れる。

 「相変わらずサリ女はアホみたいに派手ね~♪」

 山津会長は、微笑みつつも呆れる。

 「会長、俺らも行きましょう」

 「あ、待ってよたっちゃん!」

 竜也が駆け出すと、それをジークリンデが追いかけ出す。

 「え、先行かないでよ~!」

 「あらあら、元気ねえ♪」

 「俺は足でも速いぜ~!」

 「風紀を乱すな~!」

 残りの全員が竜也達を追いかけて突入した。


 かくして、選手達は王道館の校庭に集合した。

 朝礼台の横には王道館の代表チームが控えている。

 校舎側から、紋付き袴と言う古風な出で立ちの精悍な顔つきのスキンヘッドの老人が校庭へと歩いてきて朝礼台に上がった。

 「王道館理事長、椿原権八つばきはら・ごんぱちである! 各校代表の選手諸君の健闘を期待する、競え! そして楽しめ! これも青春である!」

 権八理事長はスピーチを終えると台を降りた。

 権八と入れ替わりで登壇したのは、王道館チームの代表である牛田猛だ。

 「王道館代表の牛田です、正々堂々全力全開で競いましょう!」

 牛田の言葉に、サリ女からエリザベスだけが猛烈に拍手した。

 

 主催側の挨拶が終われば三校戦のスタートだ。

 一通りの説明を受けた後勝負の場へと向かう一行。

 「最初の競技はマシンレースか」

 「俺がぶっちぎってやるぜ♪」

 「今度は事件を起こさないでね、高速君♪」

 山津会長が笑顔で釘を刺す。

 第一競技会場入り口と書かれた立札を目指して歩く。

 「地面に何か書かれたテープが張ってあるだけですね?」

 マルタが訝しむように突いた場所には、地面に黄色いテープが張られて囲われただけだった。

 「あれは次元移動の魔法のテープね、あの中に入れば出で王できるわ♪」

 会長が真っ先にテープの中へ入ると姿を消す。

 「会長が消えちまったぞ、大丈夫か?」

 「大丈夫ですよ、俺達も行きましょう」

 「そうね、後れを取るわけにはいかないし」

 「僕も行こうっと♪」

 椿原チームは全員テープの囲いの中に入って姿を消した。


 次の瞬間、彼らが現れたのはどこかのモトクロスのレース場だった。

 「お、マシンウェイダー♪ 行くぜ、ウェ~~~イ♪」

 気が付くと自分のマシンに乗っていた飛車はハイウェイダーに変身した。

 彼の隣には、王道館の会計の千鶴が白い鶴を模したヒーロースーツを纏って

同じく鶴を模したボートに似たマシンに乗っている。

 変身後の彼女の名は、バードクレーン。

 鳥忍戦隊ちょうにんせんたいバードニンジャーの一員だ

 「マシンクレーンで突っ切ってやる!」

 千鶴はスーツを着てマシンに乗ると好戦的になるようだった。

 「二輪にボートモドキ? レースならカートだろ♪」

 そう言って二人を見て笑うのは赤いドレスに白フリルが付いた魔法少女のジョー。

 彼女が乗るのは、真紅のレーシングカート。

 この三人で勝敗を競う。

 

 一方、竜也達はレース場の観客席に転移していた。

 「ここは、隣の市のレース場か? 選手以外は客席に飛ばされると」

 「そう言う事、皆の分バーガーセット買ったから食べながら見物しましょう♪」

 山津会長が、人数分のドリンクとバーガーとポテトを持って席へときた。

 「会長、ありがと~♪」

 「ありがとうございます、会長」

 「たっちゃん、生徒会長って良い人ね♪」

 「おいおい、まあありがとうございます」

 観戦に回った椿原チームは、山津会長に奢られたのであった。

 

 「あっちは、思いきりフードコート活用してるな」

 「ふ♪ こっちは俺の家の焼肉重弁当だ、千鶴の分もある♪」

 「流石は会長、全国展開してる焼肉店牛丸ぎゅうまるの経営者一族♪」

 「ミサキ先輩、その弁当何個目ですか?」

 牛田から渡された弁当を受け取る学はミサキを見て呆れた。

 「何よ、私のは自腹だもん♪」

 ミサキは三個目の弁当箱を空にしようとしていた。

 「はっはっは♪ 食いっぷりが良い女子は素敵だぞ岸野君♪」

 後輩達の様子を牛田は豪快に笑っていた。


 「牛田さん、男らしくて素敵♪」

 カップとソーサーで優雅に紅茶を味わいながらエリザベスが牛田を見つめる。

 「会長、ジョーさんを応援しましょう!」

 メイがエリザベスに訴える。

 「大丈夫♪ ジョーなら勝つから♪」

 フィーナがメイをなだめた。

 「アイスが美味いのだ~♪」

 ヴァネッサは仲間達を放っておいて、客席で三段重ねのアイスを食べていた。


 客席はワイワイ楽しんで知る中、シグナルが鳴りレースが始まる。

 「行くぜ、ウェ~~~イ!」

 アクセル全開にしたハイウェイダー。

 「鳥忍法ちょうにんぽう湖水遁こすいとんっ!」

 バードクレーンが怒涛の勢いで水を噴出し、サーキットだけを水で満たして飛び出した!

 「忍者汚いっ! でも、こんな水で私の火は消えない!」

 「何処だろうと俺の道だ!」

 だが、ハイウェイダーもハンドルのスイッチを入れて水上走行で追いかける。

 ジョーも魔法で炎を燃やしロケットの如く爆走する。

 「ち! あいつらも大概ね!」

 自分を棚上げするバードクレーン、出だしは良かったがすぐに追いつかれて横並びになる。

 「は♪ こんな水、蒸発させてやるプリティーファイヤー!」

 ジョーが掌から出した火球を水に浸すと、一瞬で水が消え元のサーキットに戻る。

 そして、水に浮いていた状態の全マシンが一気に落下する。

 ハイウェイダーとジョーは無事に着地、バードクレーンもマシンから水を噴射しながら着地し再スタート。

 ハイウェイダーが一位、バードクレーンが低空飛行で二位、三位はジョー。

 「モトクロスのサーキットなら、バイク型の有利だぜ♪」

 そんなハイウェイダーの背後から風を切る音と同時に、バードクレーンの載るマシンクレーンの嘴型の衝角が迫る!

 「貫け、ピックスティンガー!」

 空を飛び回転するドリルとなったマシンクレーン。

 「舐めるなよ、ウェイダー爆熱キーーーック!」

 ハイウェイダーはマシンを自動操縦に切り替えて跳躍。

 エネルギーを込めて赤熱化した足での必殺のキックで迎え撃つ。

 空中で両者が爆発し、互いに吹き飛ばされる。

 マシンごと飛ばされたクレーンに対し、ハイウェイダーのマシンは主人をキャッチして再び走り出す。

 「漁夫の利は貰うよ♪」

 ジョーが争う二人を抜き、一位に繰り上がる。

 それを追いかけるハイウェイダーとバードクレーン。

 二人が追いつきゴール前で横並びになる。

 だが、マシンクレーンが燃料が付きて停止。

 マシンウェイダーも燃料切れで急停止し、ハイウェイダーが投げ飛ばされた。

 ジョーのカートがゴールへたどり着き、マシンレースはサリ女の勝利で終わった。

 

 「千鶴先輩、無茶しやがって!」

 学が額に手を当てる。

 「そういうな、帰ってきたら千鶴を労ってやろう」

 牛田は冷静に振舞う。

 「まだジョストも相撲も射撃も組手もあるから挽回よ♪」

 ミサキもまだ次があると、負けは負けと割り切り次を目指す王道館。


 「あらあら、高速君残念だったわね」

 頬に手を当てハンバーガーを頬張りながらつぶやく山津会長。

 「先輩、大丈夫かな?」

 高速を案じる希。

 「ま、高速先輩なら大丈夫でしょう」

 特に気にしていないマルタ。

 「サリ女、手ごわいね」

 不安げな顔をするジークリンデ。

 「大丈夫だよ、俺らも負けないように頑張らねば」

 自分達は勝利を掴もうと思う竜也。

 椿原も次の競技に意識を向けた。。


 「流石ジョーね♪」

 笑顔で紅茶をお代わりするエリザベス。

 「ジョー先輩、流石です♪」

 メイはジョーの勝利に感動していた。

 「まずは一勝だね♪」

 フィーナは笑顔で喜ぶ。

 「このまま家の学校が総合優勝なのだ♪」

 最後にヴァネッサが意気込みと、サリ女は勝利を喜んでいた。


 それぞれの学校の客席側が次の競技へと想いを馳せる。

 「痛ててて、やられちまったぜ」

 ハイウェイダーが立ち上がり、バードクレーンの方へと向かう。

 「うう、しょっぱなから負けちゃった!」

 マシンの傍でうなだれるクレーン。

 勝者であるジョーも、クレーンの所へと向かった。

 「おい、お前のマシンは大丈夫か?」

 ハイウェイダーがまず声をかける。

 「いや、あんたの蹴りのせいだろ?」

 ジョーがチョップでハイウェイダーにツッコむ。

 「何よ? 次の競技では負けないんだからね!」

 自分の所にやって来た二人に叫ぶクレーン。

 「それはそれ、だが今は勝負が終わった俺達はダチだ♪」

 「うわ、暑苦し~♪ ま、良いけどさ♪」

 ハイウェイダーの台詞に笑うジョー。


 「だから何よ? 私はそんな気はないんだけど?」

 クレーンが訝しむ。

 「うるせえ、俺がダチだと思ったらダチだ♪ お前のマシン、運んでやるよ」

 ハイウェイダーが提案する。

 「あんたって、ヤンキー♪ 、ま、こっちは勝者の余裕で手を差し伸べるだけ♪」

 ジョーもバードクレーンに手を貸すつもりらしい。

 「何、勝手な事言ってるのよ他校生の癖に!」

 バードクレーンが拒絶する。

 「余計なお世話を勝手にやるのがヒーローなんだよ」

 ハイウェイダーが自分のマシンから牽引用のツールを取りに行こうとする。

 「待ちなよ、私の魔法でやった方が早い」

 ジョーが指を鳴らし、白とピンクで彩られた剣のようなアイテムを手に取り振る。

 すると、マシンクレーンを真ん中にジョーのカートが後、マシンウェイダーが前の形で三人のマシンが魔法のロープで繋がれた。

 「魔法って、便利だなこれで行けるぜピットは何処だ?」

 ハイウェイダーが自分のマシンに跨る。

 「ありがとう、この借りはいつか返すから」

 バードクレーンが二人に礼を言いつつピットの方向を指さす。

 「勝者の施しは貸しじゃないから気にしないで♪」

 ジョーもカートに乗って笑う。

 「友情はプライスレスなんだよ、覚えときな♪」

 ハイウェイダーも気にするなと伝えて牽引を開始する。


 こうして、三人の間に友情の種が蒔かれたのであった。

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