第27話 決断。
「それで、どうするんだ?カイト」
「なあ、兄ちゃん」
こいつ質問を質問で返しやがった!
「なに」
「拠点をここにしてさっ」
「ん」
「んで、あちこち廻らない?あの車だっけ?あれで?」
ニコニコ笑って、訳が分からない事をほざくカイトだ。
嫌…訳は分かるが……。
「まず、拠点がここなら、車等要らんだろうがよ!」
「ええ、だってリリデアは出てくだろ?マイクあいつ五月蝿いしさっ!」
「そうなのか?お前はあの村が良いんじゃねえの?」
「まぁ、長く住んでるし、見知った人も多いけど……。毎回マイクに絡まれてさっ!俺の顔を見る度に言う言葉が、孤児やら親が居ないからどうのと、言って来ると腹が立つんだ。何度、ぶちのめしてやりたいと思った事か!」
「まぁ、そうだな……」
しつこくねちねち言われれば腹も立つか…。
「俺があいつを相手にしないから、マイクは余計腹が立つらしくてさ。ってかさ!相手にしたってあのデブ!全然お話に為らないくらい弱いんだよ?それなのに俺は、ギルマスの息子だからとか言って威張り散らす。笑えるだろ?」
出来の悪い最低野郎の台詞だな、全く子供の言う台詞は何処の世界も一緒か。
勝手に絡んで来て、分が悪くなると自分の親の身分出す餓鬼……最低だ。
なまじ親の権力が有ると、勘違いするんだよなぁ~。
ギルマス、フェルトさんどうしたんだ?育て方を失敗したのかな?
「だったら、町は出るんだな?」
「うん、ここに家が有るならここに居たいけど……。いいかな?兄ちゃん」
へへへと笑うがなぁ……。
「まぁ、餓鬼の頃の様な我儘を言わねぇと言うなら構わないぞ?」
「え?我が儘…そんなの言ってないよね?」
「…………お前は!どの口がそう言う事を言うんだ?教えてみろ!餓鬼」
カイトの頬を思わずつねって、どの口が言うんだ?とつねる指に力を入れる。
「いは……いはぃよ!にひぃちゃ……。はら離しひてぇ!」
「なら聞かせてみろ、誰の所為で6年も離れたんだ?言ってみろ!」
カイトの頬から指を離して聞いてみる俺だ!しかもこっちは記憶まで消して暮らしてたのに。
何が、我儘言ってないだ!
「…………すみません……調子に乗りました…。全て俺の我儘が原因でした……。兄ちゃんごめん」
「ふん!分かれば宜しい!で、ここで暮らすんだな?」
「うん!いいの?」
「仕方ないだろ?お前あの町でも、馴染めなかったみたいだしな」
「エヘヘ分かるの?」
「ああ、まあね…マイクが原因だろう?」
「ハハハ、分かっちゃったか」
「ったり前だろ?あんだけ敵意向けられてたら、町の居心地も悪くなるだろ?」
「まぁ、皆取り合わない様にしてくれてたけどね…?あんな狭い町で、マイクと顔を会わせないようにするのも限界があってさ。そんで、兄ちゃんにも会いたかったから、ギルマスに話して旅に出たって言うのもあるんだ。だけどやっぱり、兄ちゃんの顔を見たらリリデアが懐かしくてさ…」
それでリリデアに帰ろうね…。
全くこいつは世話が焼けるったら。
「分かった、ならカイトに預けた金でリリデアに家を買うか?」
「買ってどうするの?」
「ここの家と転移門で繋いで往き来する。んで、リリデアから依頼や魔物退治に向かうふりして、他の国をみて回るか?ってか、お前が子供の頃には、結構他国に行ってるんだが?」
「え!転移門?なにそれ、それに子供の頃って……あんまり覚えてない国もあるよ?」
「まぁ、そうか…で、どうするんだ?」
「兄ちゃんが、そう言うならそうするよ。でももう、リリデアには居たくないかな」
「お前よっぽどマイクに嫌がらせ受けてたんだな?」
「当たり前だろう!あのデブ」
「分かったよ!ならここで暮らすかね。なら少しここで待ってろ。俺はマーサおばさんに。挨拶したら戻って来るから。カイトはもういいな?用は無いな?」
「うん、ギルマス達には挨拶したいけど…。また、騒がれるのも面倒だから良いや」
「そうか……なら行ってるな。カイトはレツ達とここでまってろよ?良いか、俺が戻るまでは結界から出るなよ?すぐに戻るからな?」
「了解!なら兄ちゃん、ベッド貸してよ俺眠い」
「……その前にお前は風呂だ!先に入ってろ!」
「了解……じゃあ、兄ちゃん宜しくね?」
「………全く……」
そうして俺は、リリデアに一旦戻ってマーサおばさんに挨拶をして。
マーサおばさんに、ギルマス達に伝言を頼むとこっそり町の門を出た。
そして、瞬間移動でカイトが待つ俺の家に戻ったのだった。
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