第26話 こいつは馬鹿だった……。
「カイト!ほらそこじゃねぇ~、こっちほら!手はこうだ。分かるか?」
「こっちって何処だよ!兄ちゃん!よくわからないよ……」
「手はこうして、こう…腰を入れて揺するんだ、ほら早くしろよカイト」
「ま、待ってってば……んっ……はぁ~」
「そこで休むな動け!アホ」
「アホってなんだよ!兄ちゃん……俺は動いてるっだろ!腕が痛い!」
「ったく、足りぃなぁ~。お前才能ねぇなぁ……料理の。あぁ~卵が焦げてる勿体ねえなぁ。ほれ貸してみろ!」
フライパンを取り上げて、見事に焦げた卵を皿に取り出すと、フライパンに油を入れ玉子を流し込み手早くオムレツを作りカイトに手渡した。
そして、自慢だ!
「どうだ!カイト、旨そうだろ?フフフ」
「うん、旨そうだな!んで、俺には作れないって事で、兄ちゃん俺のも作って」
「………仕方ねぇ、先にそれ食ってろ。ほれ、パンはこれだ」
「やったぁ~!頂きます」
全く……図々しく為ったな……。
今はマーサおばさんの宿屋の部屋から、瞬間移動して自分の寝蔵に戻って来ている。
それで、夕飯の支度の最中というか!
支度を始めると、カイトも手伝うと言い出した。
それならと、簡単なオムレツをカイトに教えたのだが…不器用なカイトには無理な様だな。
お前不器用……あ!俺が教え無いからか?
「カイト、それ食いながら聞けよ」
「ん……ムグムグ……ング…。な、なに?兄ちゃん?」
「これから、お前どうする?」
「え?俺は兄ちゃんと一緒に居たいけど?」
「……そうか……とはいえ、ここの家を見たろ?」
「うん……無駄に広いね?なにここ寝室にやたらとばかでかい部屋と、リビングしか無いじゃん!それとなに、リビングににあるばかでかいTVだっけ?あれはさっ」
「レツと、レオ用の部屋を大きくした。そしたらこうなっただけの事だ。それにTVは俺の暇潰し用だな」
「そ、そうか……。TVはともかく、あいつらでかく為ったよね」
「だよ!飯の量も半端ないからなここで暮らしてるんだよ」
「そ、そうなの?俺はてっきり引き籠ってるんだとばかり…」
「まあ、引き籠っては…居るがな…。こいつらを連れて歩けないし。鞄に入れとくのも気の毒だろ?」
「まあそうだね…」
「それでだ、お前ここに越してくるか?それともここを出て、また放浪してトラブルに巻き込まれたいか?」
「そりゃ~トラブルはごめんだけどさっ、もっと外をみたいなぁ~」
「移動はどうする?お前、飛べないだろ?」
「そうでした…。俺は、歩くしかないけど……」
「お前相変わらず馬車は苦手なのか?ってか酔うのかよ」
「……よく分からない」
「なんで?」
「え、だってリリデアの町から出なかったし?馬車には用がなかったし?」
「お前さ、Bランクの冒険者なんだろ?」
「……うん、そうだけど?」
「盗賊とか?討伐してランク上げるんだろ?遠征どうしたんだよ。確かパーティー組んで馬車で移動だろがよ」
「あ!……アハハ忘れてた。乗った、乗ったよ。そんで酔った!匂い駄目だった!」
こいつは馬鹿だった………。
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