第5話 束の間の再会 2

 大技をぶちかました人物が、冒険者達に声を掛けた。


「よう!餓鬼ども、危なかったが……大丈夫か?そこのへばってんのは、生きてんの?まぁ、俺には関係ないがな?」


 声を掛けるとタンク役の餓鬼が返事を、してきた。


「は、はい!大丈夫です!助けて貰って、ありがとうございます」

「あ~べつに?見掛けたからさっ!邪魔したな?大丈夫なら…まっ、頑張れよ。仲間割れしてたら死ぬぞ?ちゃんと連携しないとな?じゃあな!餓鬼ども」


 それだけ言って、その場を離れようとしたら。

 突然剣士の……確かカイトと、呼ばれて居た餓鬼に呼び止められる。なに?うぜぇ。


「ま、待って!」

「んあ?なんだ餓鬼?」

「お、俺だよ!兄ちゃん探してたんだ!」

「………誰?お前……探してた?何で、だれを?」

「お、俺だよカイトだよ!」

「………悪い。人違いじゃね?それか目が悪いのか?どっかの…神殿でも行って目を治して貰えよ?じゃ俺急ぐから」


 すたすたと歩いて、その場から離れて行こうとするジュリをカイトは追いかけて、ジュリの腕を掴んで食い下がる。


「兄ちゃん!どうしたんだよ!忘れちゃったのか?(絶対兄ちゃんだと、あの時別れた人だ!

 俺が酷いこと言ったから、兄ちゃん俺の事忘れたのか?)」

 

「…つ!餓鬼、いい加減にしろよ?俺はお前なんか知らねぇし?見覚えもねえよ!ってかお前に、兄ちゃんなんて呼ばれる筋合いもねぇ!俺には身内なんて居ねえよ!しっけぇ餓鬼が!」


 離せ!と言ってカイトの手を振り払う。

 が、捕まれた腕が振り払えない!

 ジュリは鬱陶しくなり、どうするか考える。


「いい加減離せよ?餓鬼!人が助けて遣ったのに!」

「嫌だ!ここで会えたんだ、絶対離さない!なあ、兄ちゃん、レツ元気か?レオは?あいつら大きくなった?」

「なんだお前……気味悪ぃ。何でそんなこと知ってる?ってかいい加減離せよ!」

「嫌だよ!兄ちゃん離したら人目も構わずに飛んで逃げるだろ?」


 なんで、そんなことまで知ってる?

 何だってんだこの餓鬼は……気味が悪い。


 ってか何でこいつレツ達の事を知ってんだ?

 レツ達の事は誰にも教えてないし、知って?るのは神さん達だけだよな?


 まあ良いや知ってても、大した事ではないだろう。


「あ~なんだか知らんが?んでなに?俺に何か用なの?餓鬼」

「餓鬼餓鬼言わないでよ!俺はカイトだよ!」

「ん~なら、カイトくん?なに?早く用件言ってくれるかな?」


 んで、腕を離しやがれ!


「俺さ!あの時の事謝りたくて!そんで町に戻って兄ちゃんと、あの家で暮らしたいんだ!兄ちゃんとさ!探すのにもっと時間が掛かるかな?とか思ったけど。ここで会えた!兄ちゃんから預かった金も、ほとんど使ってないんだ!ギルマスに預けててさ!」


 ヘヘヘと笑うが……。

 …………困った、此の餓鬼の言ってる意味が1ミリも分からねぇ……なんだ此の餓鬼?

 俺に謝る?町で暮らす?

 金を使ってない?ギルマス?誰だよそれ?


 ってことで、ここは出任せ!言い逃れして逃げる。


「あっ……ああ、べつにあの事は、気にしてねぇよ?それに金は、お前に俺がやったんだろ。なら返す必要もねぇ!それから、俺は町では暮らせねえ。チビ達が居るからな。んでギルマス?には宜しく伝えてくれよ。カイトくん?ならアバヨ!腕離せ!」


「じ、じゃ兄ちゃん今何処に居んの?」

「それを教えて、どうすんの?お前」

「兄ちゃんとまた、一緒に」

「なにそれ?俺は独りが楽なんだ。それを邪魔すんなよ。ほら離せよ、いい加減にしやがれ!じゃないとぶち殺すぞ!」


 捕まれて居ない反対の手の平に、魔力を溜めて水を出すとそれをフワフワと浮かせる。


 用はウォーターボールを、ぶっ離すぞゴラだ!


「カ、カイト!その兄さんヤバイから逃げようぜ!魔物も回収するんだ!止めろよ!カイト人違いだよ!カイト」

「で、でも間違いないんだよ!従魔の名前も合ってるんだ!間違いないよ!」


 うぜえ……こいつ何なんだよ!

 さっきお前が言った話を、認めたらろ?

 なに未だなにかあんのかよ!


 勘弁してくれよ!


「なら、死にたいんだな?しつけぇ!餓鬼!【ウォーターボール!】」


 餓鬼目掛けてぶっ離した!


 そして、その衝撃で後ろに下がった餓鬼の手が俺の腕から離れ、その隙に空に舞い上がり瞬間移動で家に戻った。


 ふぅ~奇妙な餓鬼だった。


 何が謝るだ!勝手に俺から離れた癖に!

 餓鬼が!


 あ~気味悪いぜ!っくよ!


 ん?離れた……なにが?

 わからん…関係ねぇな、ふん!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る