第16話 旅立ち。

 はぁ……膝を抱えて、蹲ってまっても仕方ないのよカイト。


「カイト!取敢えず家においで」

「で、でも……おばちゃんの家には、マイクがいるから………」

「それは当たり前でしょ?なにカイトはマイク嫌いなの?」

「うん!大嫌い。すぐにおばちゃんの、自慢をして僕をバカにするから」

「あんた……マイクは私の子供なんだけど?」

「子供だからなに?なら、おばちゃんは、人をバカにする子は叱らないの?自分の子供だけは特別なの?兄ちゃんは、絶対そんなことしなかったよ?」

「……………(やられたわ……そうよね?子供に諭されたわ……)

「分かったわなら、マイクは私がちゃんと叱るし、カイトを馬鹿にするなと、言い聞かせるわ?」

「無理じゃ無いの?今まで人を散々馬鹿にしてきて。いきなりそれが、悪い事だって言われたってさっ。マイクだって納得しないんじゃないかな?」

「あんた……一体何歳なのよ!」

「僕は10才だよ?4月で11才になるけどね?」

「……………生意気ね10才児!」

「フフフでしょ?兄ちゃんにも、言われてたよ」


 仕方ないわね……、ならここで暮らす方が良いのかしら?旦那にもきて貰った方が良いのかしら?


「カイト?ならどうするの?」

「ここに居ることが出来るなら、この部屋でいいよ?駄目かな」

「ちょっと待ってて、旦那に確認して来るからそれとご飯食べたの?」

「うん、兄ちゃんが出してくれた。最後のご飯だって言ってたよ」


 あの子は………もう!


「そう……なら少し待ってて、ここ何も無いわね?布団とか居るでしょ?」

「ああ、そうだね?ベッドも枠しかないね?フフフ笑える。僕が兄ちゃんとここに来た時と同じだ」

「当たり前でしょ!全く……」

「お金ならあるから、明日買いに行くよ。ニルドおじさんのところに売ってるよね?」

「そうね、あそこなら有るわね。ならあたしが明日一緒に行くから、必要な物は買いましょうね?」

「だけどギルマスが、ここに住んで良いって言ってくれたらの話だよね?」

「………少し待ってなさい!いま連れてくるから!」


 それからフェルトおばさんが、ギルマスを連れて戻って来て色々と話して、兄ちゃんがもうこの町から出ていったと聞かされた。


「そうか……兄ちゃん出ていったのか……」


 なら、僕は僕でちゃんとしないとね?


 そして……ギルドの職員寮に住まわせて貰って、町の人に受け入れて貰い。

 13才に為った年に、冒険者登録をさせて貰ってランクの低い依頼をコツコツと、受けながら自分のランクを上げた。


 それから、16才に為り成人を迎えたカイトの身長は180cm迄伸びて、すっかり大人に為った。

 そして、冒険者ランクも何とかBランクまで上がった。

 一人で魔物も倒せる強さに為り、10才の時に別れたまま、音信不通と為ったジュリを探す旅に出ることにした。

 カイトは世話に為った町を一端出ることにするのだった。


「ギルマス、お世話になりました。兄ちゃん探して見つかったらさっ、二人でここに戻って来るから宜しくな?」

「おう、ったく。気を付けろよ?ランクが上がったとは言え…。まだお前は16なんだ、子供なんだからな!」

「分かってるって、何年掛かるか分からないけど……。必ず探して謝るって、決めてるんだ」

「そうかよ!なら、行っちまえよ!バカ息子!」

「フフフ、サンキュー。ギルマスなら、行ってくるな!」


 そう言うと、カイトは町を出てジュリを探す旅に出た。


 果たしてこの広い世界で、カイトはジュリを見付けられるのだろうか?


 それは神のみぞ知る……のだろうか。




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