第14話 カイトとフェルト。 1

「カイト!」

「バン」


 と、部屋の扉が大きな音と共に突然開くと誰かが部屋の中にズカズカと入ってきた。


「な、な、な、なに?だれ?」


 兄ちゃんが置いてった、お金が入った袋を抱きしめちゃったよ!だれですか?


「カイト!」

「な、なんだ、フェルトおばちゃんか?ビックリした。なに?」

「なに?じゃないわよ!カイトあんた。なに、その余裕は!ジュリが出て行っちゃうわよ!何で止めないのよ!バカなの?」

「ああ、その事か」

「その事ってなに?あんた冷たいわね!子供が何してるのよ!」

「子供だからさっ、兄ちゃんの足枷に為りたくないんだよね。へへへ」


 と、愛想笑いを浮かべるカイトに腹が立つが、なんとか押さえた。

 ……これはジュリも、手を焼いたわね?

 なにこの子……これが10才?

 ジュリ、あんたどんな教育したのよ!

 この子、ちっとも子供っぽくないじゃないの!とフェルトは思う。


「な、なに子供が生意気な事を」

「だってさ、兄ちゃんてね?全部僕を優先するんだよ?他人の僕をさっ」

「だからなに?それは当たり前なのよ?ジュリが、カイトの面倒を見る覚悟をして。貴方をここに連れて来て、カイトを育てるって!そう決めたのよ?そう聞いてるわ」

「……ほら、僕が優先じゃんか!それが嫌なのに」

「だったらちゃんと、言いなさいよ!それを!」

「もう、遅い。兄ちゃんに、言っちゃったよ。一緒に居たくないかって、兄ちゃんに聞かれてさっ!『うん』て答えちゃったよ」

「なに!大人みたいな事をしてるよのあんたは!早く追い掛けなさい!ジュリ行っちゃうわよ!居なくなるわよ。あの子は、そう言う子なのよ?カイト!あんたは子供なの、甘えて良いのよ!」

「無理だよ、おばちゃん。兄ちゃんもうこの辺に居ないと思うよ?」

「なにそれ?一瞬で消えた、みたいな事を言うのは止めてよ」

「アハハ……おばちゃん勘がいなぁ~?」

「なにそれ?本当にあのこの子、そんなことが出来るの?」

「兄ちゃん、勇者みたいに強くてさっ、何でも一人で出来ちゃうんだよ?凄いんだ。だからもうこの辺に居ないよ」

「あんたは、それで良かったの?カイト?」

「仕方ないよ、僕がちゃんと謝れなかったんだ」

「分かってるじゃないのよ!カイトなにしてるのよ!もう!バカなんだから」


 全く大人と話してるみたいな気分になるわよ!

 腹が立つわね!


 カイトを怒鳴ってしまったけど、目の前の子供は言い訳も言わずに、静かに目に涙を溜めて話を続けた。 

 だがとうとう泣き出してしまう。

 おばさん子供が泣くのは弱いのよ?

 ジュリ……あんた子供泣かせてなにしてるのよ!


「そうだね……バカかも。お金も、こんなに貰っちゃったよ。これは全部兄ちゃんの、お金なのにさっ。僕の取り分だっていって、こんなにいっぱい置いてった。………っ!泣き虫の僕に、こんなにさっ……ヒック。兄ちゃんのお金なのに……だ、大事に使えって」


 泣き出したカイトを、抱きしめて……泣き止むまでそのままで居た。

 ジュリ……あんた諦めが早すぎるわよ。

 カイトはこんなに話ができるじゃないの。


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