第10話 相談する。

 全く………。


「さて、ジュリ?」

「な、何ですか」

「ここには?いつ迄居るの?それとも帰ってきたの?」

「さ、さあ、どうかな?」

「あら、決めてないの?」

「ああ、取り敢えずカイトの手が負えなくて、戻っただけ……」 

「手に追えないって?」

「ギルマスから聞いてないの?」

「聞いては居るけど……詳しくは聞いてないわ」

「そう……」


 それだけに答えると、リリエラやアルガス達に目を向ける……と覚ってくれる。

 流石大人!


「アルガス、リリエラ、自分の部屋に戻ってて?話しが終わったら呼ぶから?」

「ええ!折角ジュリが居るのに?」

「そうよ!まだ話があるわよ!」

「良いから、少しよ!ねっ」


 ニッコリ笑って子供に圧を掛ける!流石母です。

 俺には経験がない。

 怒鳴るだけでなにもしなかった母。

 叱るでもなく、唯々男の目を気にして怒鳴るだけで、なにもしてくれなかった。

 父親が出ていく迄は、優しかった記憶があるが……。

 父親に引っ張り回された記憶しかないな。

 それに前世でも……。

 俺ってば、つくずく運がないのかな?


 このフェルトさんの優しさは、俺にもカイトにも与えて貰えなかった優しさだよな……。

 これは……カイトには欲しくて堪らないものだ。

 マイクに何を言われたのか知らないが、……カイトよく耐えたな。


 フェルトさんの一言で、子供達がリビングから出ていく。


 そして話しを始める。

 まあ、大した話では無いのだが…。


「さて、お子様が出て行ったから、話しを聞きましょうか。カイトが、どうしたのジュリ?」

「まぁ、子育てしてるフェルトさんには、俺なんかの話しなんて、大した話ではないのだろうがね?」

「フフフ、良く分かってるじゃないの?」

「だけど俺には、しんどいんだよね……」

「まぁ、思春期って誰にでも有るからね?」

「まあ、普通の家で育てば?有るよね?それに俺は餓鬼だぜフェルトさん」

「……あ、あら、ごめんなさいね?そ、そうよね…フフフ」

「良いよ?本当の事だしね。それにフェルトさんが、話すのは一般論だし」

「相変わらず……ジュリは、難しい言葉で話すわね?時々こっちが、付いて行けなくなるわよ!」

「すまんすまん、これでも貴族の端くれだったからね」

「そうでした。で?カイトの反抗で、手に追えないの?」

「そう、それだよ。何聞いても『好きにすれば?』とか『勝手にしたら?』とかだ。あとは、鼻で笑うとか?話さないと、何で話しをしないと言って来る。参ってるよ、どうしたら正解なのかさっぱりだよ」

「フフフ。独身のジュリが、カイトのパパをしてるんだもの。それは分からないわね?」

「だろ?」

「うちはマイクが反抗期ね。でもあっ、とうとうきたな!と思う事にしてるわ。そして、あまり話し掛けない事にしてるわ。まぁ大事な話は一応するけどね?聞いてないのは聞く側の自由だから、一応ね?それなら勝手に決めてと責められても、話したって言えるから」

「ふぅ……それは一度やった」

「そしたら?」

「都合の良い言い訳を言われて、喧嘩に為った」

「もう、体験済みなの?」

「そうだよ、全く……」

「それで、どうするの?ジュリはどうしたいのかしら?」

「俺?」

「そう、ジュリはよ?」

「俺、俺ねぇ……」

「ジュリ……あんた」

「なに?」

「いえ、なんでもないわよ。カイトが手に負えないなら、預かるわよ。そのうちカイトも収まるわ!反抗期なんて直ぐに過ぎるわよ!」

「そう?そうだと良いけどね」

「フフフ。困り顔のジュリをみるなんて……」

「なにそれ?」

「いえ、何でもないわよ!さて、マイクの事は良いから、カイトの所に行って上げて頂戴!」

「ん~行かないと駄目か?」

「そうよ!行って上げて!それでまた、喧嘩に成るなら私を呼んで頂戴」


 フェルトさんを呼んで、どうなることでも無いとは思うが……。


「了解!なら少し、顔を出してくるとするよ」


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