第12話 ボロ屋敷 1

 ギルマスの用意した馬車に乗せられて、ゆっくり走るがそれでも、ガタガタと馬車の中は揺れる。

 馬車で、俺とカイトとギルマスの三人で悪路を進むことおよそ10分。

 段々とカイトの顔色が悪くなってきた頃に、案内された屋敷が見え始める。


「ギルマス、ここで馬車を降りるよ。弟の顔色が悪くなってきた」

「お。そうか?なら、止まるな」


 馬車を止め貰いカイトを馬車から降ろして、声をかける……これは間に合わなかったかな?


「カイト大丈夫か?」

「う……うん……。み、水」

「ほ、ほら飲め」


 慌てて水を鞄から出して、カイトに渡たすが、その水をひったくる様して急いで水をカイトが飲む。

 そして案の定、噎せて咳き込むカイトだ……。


「ゴホ ゴホ ゴホゴホ コンコン ゴホ」

「カイト!大丈夫か?」


 カイトの背中を摩ってやると、落ち着いたのかな?カイトが大丈夫だと言って礼をいう。


「大丈夫だよ。水が変なとこに入っちゃっただけ。ありがとう兄ちゃん」

「おい、坊主は大丈夫か?」

「あぁ、平気だよ。にしてもギルマス、あそこが借りる屋敷か?」

「そうだぞ、屋敷を囲ってある柵はもうあの通り。屋敷もそんなもんだろなぁ」

「………その様だな……」

「ほら、こんな所で話してても仕方ねぇ。中に入って見てみろよ」


 なんだか、矢鱈親切にされてる気がするんだが……なんだ?


 ボロ屋敷の鍵も受け取ってるし、金も一ヶ月分は支払ってるから今更引くに引けないけど…。

 カイトと手を繋いで、屋敷の中に入る先ずは扉を預かった鍵で開けるのが先だが……。

 鍵は必要無かったね……開いてた。


「ギルマスの【管理してない】が良く分かったよ。鍵なんて必要ないねこれは」

「はぁ!壊れてるのか?」

「みたいだよ?ほら」


 余りにも汚れが酷くて、汚い扉のノブに触りたく無いので、足で扉を蹴りつけ「バン」と大きな音を発ててドアをぶち破った。


「お、おい。兄さんお前さんそれは…雑過ぎだろ!」

「なに言ってんだよ!ギルマスさん、ここで俺らが住むには、一から建て直ししないと、住めねぇじゃんかよ?屋根も全く屋根の役割してねぇじゃんかよ!」


 屋根も床も大穴が開いてて住むなんて無理じゃんか!


 んだよ!これは……一から建て直しなら、家賃とか取るなよ。


「アハハ!俺もここまで酷い状況とは…。思って無かった。全く管理してなかったからな、知らなかったよ」


 そもそもこの屋敷を買うなんて、物好きな金持ちは居ないしな。

 それにこの町の金持ちなんて町長くらいのもんだ。


「知らなかったねぇ……。カイトどうする?」

「何が」

「この屋敷を直して住むか?」

「別にどっちでもいいけど……ここならあんまり人は来ないから、良いんじゃない?それにほら、庭があるよ?」

「庭ねぇ……野菜でも育てるか?」

「うん、やってみたい」

「分かった。なら、建て直すか」

「そりゃ助かるよ!庭も広げて構わねえからよ。それに、町の職人を雇うなら俺が仲介してやるぜ?」


 仲介……職人?冗談……そんなん要らんわ。


「あ~。ギルマスの親切は有り難いが、大丈夫だ。俺らでなんとかするからさ。わざわざ紹介してくれなくていいよ」

「そ、そうか?でもよ、ここまでボロいなら……」

「おじさん!大丈夫だよ?僕と兄ちゃん困らないからさっ」

「そ、そうか?な、なら、俺はここで帰るが大丈夫か?」

「平気だぞ。明日またギルドに顔を出すよ。依頼の件もあるしね」

「お、おう。じゃぁな」


 面倒臭いから部外者は早めに返して、早速家をなんとかしないと、これじゃ住めないし。

 今夜は野宿になる。


「カイト、早めに屋敷を造るから少しここで待ってろよ?」

「うん。でもレツと、レオを出したい」

「そうか……なら、結界と認識阻害をこの柵の中に張るか?」

「うん!」


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