第29話 新天地に期待を

 錆びれた町の門を出てから暫く歩く。

 人気は無いのだが……何となく歩く。

 理由?理由は、ここのところ運動不足が否めない樹里だからだ。


 特に宛もなく、てくてくと歩く事かれこれ1時間半……。

 カイトの体力不足も気になるので歩かせる。

 そして2時間ひたすら二人で歩く。


「に、兄ちゃん……」

「ん?なんだ」

「疲れた!一休みしたい」

「お、そうか?なんか飲む?」

「うん、何でこんなに歩いてるの」


 何時もならすぐに、空へ飛んでどこかの森にキャンプとか言い出す癖に……。


「ほれ、スポドリ飲むだろ」

「うん!ありがとう。これ好きだ兄ちゃん」


 スポドリを渡すと、よっぽど喉が乾いてたのか一気に500mlを飲み干した。


「カイトごめんな、喉乾いてたんだな。なら鞄に何本か入れとくか?」

「うん、後コーラも欲しい」

「コーラね……なら一本だけな、あんまり飲むなよ?トイレ近くなるぞ」

「あ、そうだった……」

「なら、ここからは空の散歩と行くか?」

「散歩はもう良いよ、疲れた!それより、魔物の素材を売りに行こうよ」

「そうだった……忘れてた。だったら町を探さないとな」


 マップで町を探す……何処が良いかなぁ~。

 一度帝国に行ってみるか?あそこは……確か安定した国だった筈だ。帝国の王都へ向かうか。


「カイト決まったぞ、帝国に行くぞ」

「帝国?」

「そう、海を渡ってルマルス帝国の王都に行く」


 そこで魔物の素材を売って換金して、何処かの国で家を買う!それでプランは決まりだ!

 と、安易に考える樹里である。


「まぁ、任せるけどさぁ……」

「なに?」

「嫌な予感しかしない」

「何処に行っても、同じだろよ。こうも不運が続けばもう、それ込みで!覚悟して行く」

「あぁ兄ちゃんと行くと……トラブル多いよねぇ……」


 今更ながらにトラブルが多いと、しみじみと言うカイトだ。

 ……なに?その大人目線、しかもいつの間にかトラブルって言葉覚えてるし。


「お前……俺の話し言葉を覚えるのはいいけど、トラブルって言葉は誰にも言うなよ?」

「え!なんで?」

「俺以外に言っても意味が通じないぞ?」

「あ……そうだったね気を付けるよ」

「そうしてな?さて、カイトこっちにこいよ、空に上がるぞ」

「OK!」

「お前……OKも通じないからな!」

「分かってるよ!抱っこ」


 両腕を広げて俺の前に立つカイトだ。


「はいよっと!お前重くなったなぁ……ソロソロ魔法覚えるか?」

「え!良いの?」

「まぁ、浮く魔法だから少しづつな」

「やった!」

「移動して金作って、住める場所を探してからだけどな!」

「えぇ!それじゃいつ迄経てっも教えて貰えないじゃんか!」

「フフフ、カイト君。世の中は甘くないのだよ」

「…………むぅ」

「さて、巫山戯けてないでいくか」


 そして、カイトを抱え直して空に上がり目的の帝国に向かう二人だった。


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