第27話 下らない呼び出し

 寝落ちで元の場所に、戻ろうとしたら神さんに止められた……なによ!


「ちちちちょ、ちょっと、待って下さい!まだ、用は済んでないのですよ」

「なに?俺はそろそろ起きて、旅支度だよ」

「そう言わず、用があるのですよ」

「なに?嫌な予感しかないんだけど?」

「嫌なって……まぁ、樹里さんにとっては、そうかもしれないですねぇ……」

「だろ?なら帰る!」

「まって!」

「んじゃ……用ってなに?」

「君の父君が、君を呼んでます」

「………だからそれは断ったろ?」

「そうですが……お困りの様子ですよ?」

「知らんわ!こっちだって、親父が居なくなってから!苦労したんだよ。それを伝えろよ知らんわ」


 親父は自分で言ったんだ!


【いいかカレス、俺はここを出ていく】

「父さん?なにいってるのさ、今出ていかれて俺はどうすんの?母さんは」

【済まない、俺は死んだ者のだと思って探すな】

「なに、無責任な事を言ってるんだよ!」

【と、言うことで、俺はもうお前の父ではない!じゃあな!母さん守ってやれよ】


 そして、親父は出ていった。

 ……軽い考えで出て行きやがって。

 その後の母の悲しみの思いは言い表せない。

 あの当時俺がどれだけ苦労したか!子供の俺が頑張って、母親を支えてたと思ってたさっ!

 ふん!その勘違いで家から追い出されだがな!

 あの当時の俺の苦労ってなんなんだ?


 ムカつく、突然馬鹿みたいなこと言い出して出て行ったのに。

 俺を振り回すのもいい加減にしろってんだ!


「死んだって、会わないし会いたくない!向こうが先に縁を切ったんだから。それまでだよ」

「………そうですか。ならそうお伝えします」

「そうしてよ!んで、女神さん何かしら欲しいなら、見返りってのは大事だと思わん?」


 毎回へらへらして出て来ゃがって。

 胸くそ悪いったら。


「後は用はあるの?」

「な、無いです」

「あっそ、なら……さいなら!」


 それだけ言ってスッと樹里の姿が居なくなったた。


「あ~樹里さん、激おこでしたね?パルミア……」

「……そうねぇ……あたしも激おこだけど!なにあの子!」

「パルミア……貴女、樹里さんに何か恩恵もたらしましたか?」

「いえ?なにもしてないわよ?そもそも神ですもの……人を依怙贔屓なんて出来ないでしょ?」

「それで、私達は樹里さんから物を貰うのですか?」

「………そうよ?当たり前………じゃないわね」

「そうです。私達は樹里さんの、旅路を面白ろおかしく見てますが……本人達はきっと大変なのです。それを見ても、貴女は樹里さんに物をねだるのですか?彼は貴女に何か願いましたか?」

「う!それは何も……」

「だけど……グランには願ってるじゃないのよ!」

「私に願う?なにを彼は願いましたか?それに私に願いをして、なぜ貴女がその見返りを?」

「そ、それは……」

「フフフ、でしょ?なら今回は諦めてください」

「仕方ないわね……なら、少し加護授けるわよ……」

「そうして上げてください、彼も喜びますよ?次に来たときは、何か有るかもですね?」

「………ふん!」


 美の神パルミアが、不貞腐れてスッと消えていった。


「ふぅ……また逃がしてしまいましたね……これは困りました。意固地な所がそっくりですねぇ」


 ま、彼の自業自得でしょうから諦て貰いましょう。

 それにしても樹里さん……少し不運続きですねぇ……。


 これは誰か邪魔をしてますか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る