閑話 息子を追い出した母のその後 1

 時は遡りカレスを追い出した2年前に戻る。


 実の息子を追い出した母は?


「おい!ユイラ!飯は未だか!」

「ち、ちょっと待ってて下さい。今カレスが……。あら!」

「カレスが、なんだ?あの餓鬼は未だここに居るのか。早く追い出せよ、目障りだ!」

「お、追い出しましたわ貴方。少し前にね」

「そうか、なら、今夜はお祝いだ!ブランドと、レイリアを連れてこい!あと、豪華な料理を用意しろよ!ハハハ」

「分かりましたわ。料理人に伝えますわね?」

「あぁ、それにしても……執事、クロスはどうした?」

「さあ、昼過ぎから見えませんわね?」


 カレス『樹里』を追い出した母のユイラは、使用人達が居なくなっているのに気が付かない。


「仕方ないわね?厨房かしら。探してきますわね?」


 夫にそれだけ告げてそそくさと、厨房に向かい使用人達に怒鳴る。


「貴方達、なにしてるの?クロス!居ないのかしら?そろそろ……」

「……………」


 誰からの返事もない。厨房は、藻抜けのからになっていた。 


「あ、あら、誰も居ないの?何故……」


 厨房にはいつも三人の使用人がいた筈だ。

 メイドのマナと料理人パルセ、執事のクロス達がここにいて。食事の支度をしているのだが。

 今は誰れも居ない。


「あ、あら。使用人達はなにしてるの!速く食事の支度をして貰わないと、あの人の機嫌が悪くなるわ!」


 それだけは避けないと。


 機嫌が悪くなると困るのよ。

 あの人、怒ると厄介なのよ!


「何であんな人と再婚したのかしら?そう!それも来れも!カレスの父親のせいだわ!私達を置いて何処かに行って仕舞ったからよ!」


 カレスの顔を見るとあの人に似てきて、イライラしてしまって……。再婚相手と一緒になってからは、余計に辛く当たってしまう。


 そんな日々を繰り返ししていて、とうとう息子を追い出したのだが……。息子に屋敷の維持をさせてるのを、忘れている母と義父である。


 カレスが狩りをして獲物を持ち帰らないと、その日の食べる物が出てこないのを、すっかり忘れている。良民からの税などは全て、国に納めないと領地が没収されてしまう。

 それくらい、名ばかりの貧乏貴族の領地なのだ。


 しかも、使用人達の給金もカレスの狩りで仕留めた魔物の一部を売って、金にして三人の給金に充てていたのだ。


 屋敷の維持、使用人の給金や親と弟妹達の衣食は、カレスのお蔭だと言うことを認識していないのだった。

 なんとも愚かな家族ではあるのだが、カレスはそれを何も言わずに我慢して家族に尽くした。

 それでも追い出したのは実の母である。


 使用人達は、カレスが追い出されたのを知って慌ててこの屋敷を出ていったのである。

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