第16話 神殿の無い町

「お兄ちゃん……」

「なんだ?」 

「喉乾いた」

「あ、そうだったね。朝から水しか飲んでなかったか。ならはいよこれ飲め」


 グラスにジュースを入れて、カイトに渡す。

 ついでに俺も同じ物を飲む。


「………おい!お前達?」

「なんですか。あ!決まりましたかね」

「決まったがな?お前、それなんだよ見たこともない物で。なにを飲んだんだ!」

「え、これ?」


 ガラスのグラスに、指をさしてこれか?と聞くとそうだと答えが返って来たが。やっちまったなぁ~!


「これは……ガラスのコップだよ?それと中身は果物の絞った物だな。ギルマスも飲むか、はい!どうぞ?」  

「お、おう……なら………んぐ。ゴクゴク……ゴクリ。ッハァ~!なんだこれはうめぇ~!」


 ギルマスの大声に驚いてカイトが泣き出す。


「こ、怖い!うわぁ~んお兄ちゃん怖いよぉ~!」

「お、す、すまん坊主、驚いたか?」

「カイト!ほら大丈夫だから。ほら、ジュースお変わりするか?ほら……」


 カイトにグラスを渡して泣き止ませる。


「グス……飲む……」


 ほっ!なんとかなったね?


「す、すまんね?」

「いえ、人見知りみたいで……」

「ん?みたい……みたいで。なんだそれは、兄弟なんだろ?」

「………あ!まぁ、良いか?実は……カイトなんですが……どうやら捨て子らしくて」

「は?」

「俺がこの町に来る途中で、迷子になってたのを保護したんですよ」

「こんなに懐いてて、拾っただと?」

「ええ、森で迷ってたらしくて」

「………それは……親に返した方が……」

「それなんですけどね?カイトが言うには、袋に入れられて。ガタンと音がしたら落ちたそうで……」

「……………落ちたね……?」

「ええ、名前もなかったので。俺が適当に付けたのですが」

「そりゃまた……困ったなぁ~。小綺麗な格好してたからてっきり、兄弟かと思っちまったよ!」

「まぁ、それでも構いませんがね?」

「施設に預ける気で居るのか?」

「それも考えては、いますが。2度も捨てられたとは、思わせたくは無くて……」

「だがよ、アンちゃん!世の中キツいぜ?子供を引き取るのは。アンちゃんまだ16だろ?」

「ええ、ですが……冒険者でなんとかなるかなと?」

「そうか?ならいいのかね、後はその坊主次第かね……」

「ええ、そのうちに段々分かって来るだろうから、その時に話しますよ?」

「それならなんとか、力になってやるから。暫くこの町に滞在したらどうだ?」

「え、良いのか?」

「実はこの町には子供を預かる、施設がねぇんだよ……」

「そ、それはまた……神殿もないのか?」

「ああ、隣の街に行かねぇとないな」

「変わった町だな?」

「町長が変わってんだよ!悪い人じゃないのだかなぁ~?」

「そうなのか?大丈夫なのか?子供達は?」

「ああ、なんとかな?#父無し子__ててなしご__#は、どっかの家が預かって育ててるからよ」

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