成長

バブみ道日丿宮組

お題:気高い大学 制限時間:15分


成長

「大学いくんだ?」

「あぁ、都心にあるところな」

「ふーん、わたしのこと放置してくんだ」

「いや、引っ越してもらうぞ。だから、これからも一緒だ」

「でも、わたし部屋から出れないよ?」

「医療器具ごときちんと引っ越してくれるところを選んだというか、国がやってくれた」

「国……ね」

「嫌そうな顔をするな」

「だって、医療費を無料にする代わりに薬と評した実験をしてくるんだもの」

「特異体質を治すには少し我慢してもらうしかない」

「検査と苦い薬は苦手だな。ずっと部屋の中にいたいよ」

「これからは都心になるから、医者もちゃんと部屋にきてもらうよ。むしろ、病院の隣といってもいいぐらいの場所だ」

「そうなんだ。病院近いとあれだよね。幽霊とか見そう」

「まぁ……よく聞く話だな。とはいえ、近くにいるからといって見えるものでもないだろう」

「それでどこの大学行くの?」

「薬学部」

「ふーん。お薬作る仕事に付きたいんだ」

「できるようになれば、ずっと一緒にいられるようになるからな」

「そっか。わたしのためにしてくれるんだ」

「そうだぞ。もっとふんぞり返ってもいいんだぞ」

「あはは、そんなふうにできたら、君がここに残ってくれなかったでしょ」

「両親だって、ちゃんと君を見てる」

「どうだか。たくさんの医療器具に囲まれた娘の部屋を見たくないからって、外国にいくような人たちだよ?」

「ちゃんと日常のお金はもらってるじゃないか」

「買い物は全部通販だし、できることは限られてるよ。家賃なんてそれこそ国が持ってるし」

「これからがあるよ。おじさんおばさんだってずっと海外に入れるわけじゃない」

「国からお金もらってるからどうだか」

「それでもたった一人の娘であることに変わらないよ。毎週電話だってあるんだろ?」

「そうだね。元気だとか、大丈夫かとか、あなたに酷いことされてないとか、いろいろ言われてるよ」

「なんで僕が酷いことをしなきゃならないんだ?」

「そりゃあなたがえっちな視線をわたしに向けてるからでしょ」

「否定はしないが、そんなふうに見えてたのか……」

「わたしは気にしないけど、気をつけたほうがいいよ。これからはお母さんお父さんになるかもしれないんだから」

「ちゃんとできるだろうか」

「わたしがこんななんだから、君がしっかりしてくれないと子どもが育たないよ」

「動けるようになれば、一緒に外で遊びたいね」

「そうだね……できたら、いいけど」

 規則正しい機械音が部屋に響いた。

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成長 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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