きょじんとわたし

バブみ道日丿宮組

お題:複雑な巨人 制限時間:15分


きょじんとわたし

「監視されてるってのはいい気がしないね」

「個室に入れば、そんな心配はなくはないけど」

「屋根をとられてたら、変わらなくない? こないだ、トイレしてるの覗かれたよ。おしりにすっごい視線浴びた」

「それは災難だったね。ほら、いつもの人がこっち見てるよ」

「嫌な視線。邪な顔してる」

「あなたがお気に入りなんだろうね。発情してそうな顔してるしさ。まぁ……わたしたちの言葉が通じないのがせめてもの救いかな」

「そうだね。文句いっても通じないし、罵倒しても怒らないし」

「……その代わりに日常生活全てを見られるわけだけど」

「はやく脱出したいね」

「できたらしてるって。もう2000年もこの作られた街で生活してるんだよ? 今更脱出なんて不可能なんじゃないかな」

「相手は巨人、こっちは人間。全てが見つかるわけじゃない」

「警備兵には見つかるかもね」

「どうしてあの人達は巨人の味方をするんだろう」

「巨人崇拝ってのが昔からあるからね。彼らにとっては神様に近いんだろうさ」

「見えない神様がよかったな。何をするんだって視線の圧を絶対感じちゃうよ」

「できるだけ気にしないように過ごさなきゃ身体に悪いよ」

「そうだけどさ……。うーん、納得しかねる」

「家畜の心境かな。まぁ……実際に外につまみ出される個体もいるみたいだけど」

「それって帰ってきてるよね?」

「うん、巨人が満足したら帰ってこれるよ。その代わりに性癖が追加されたり、露出狂になったり、人前で自慰をはじめたりとか、人格が壊れる場合があるけど」

「こわっ!? いったい何されてるの?」

「巨人たちが使う夜の営み道具を使われてるんじゃない?」

「最悪……わたしたちはおもちゃじゃないっての」

「飼育してる動物なんだろうね。はぁ……」

「毎日授業参観されてるような感覚なのかな?」

「巨人が見る小人の授業風景って、すごく暇そうだけどね」

「小さいのが好きってのはわたしたちの中でもいるからさ。そういうのかもしれない」

「でも、巨人からすれば、わたしたち全部同じようなものじゃない」

「それは飼ってるペットが全部同じってことになっちゃうよ」

「確かに……」

「はやく昼食べて、トイレいこ」

「そうだねー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きょじんとわたし バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る