第82話 ねぇちゃんの母ちゃん
クルクル回る虹色の小さな光が、みんなを包み込んだ後、私は手に持っていた数珠をじっと見つめる。
一体、この数珠は何なのだろう?
そんな私に、遼ちゃんが話しかけてくる。
「友達とラーメン食べた帰りにさ、怪しげな二人連れに囲まれてさ。
一瞬、琉旺さんの関係かと思ったんだわ。
ねぇちゃんは、琉旺さんがすぐに嗅ぎつけて来ちゃうから、今度は俺が狙われたんかとね」
遼ちゃんがそう言うと、琉旺さんは複雑そうな顔をした。
小さな声で、面目ないと呟いているのが聞こえる。
「ところが、連れて行かれた喫茶店の椅子に座ったらさ、目の前にねぇちゃんの数十年先みたいな人が座っててさ。
まぁ、一目でねぇちゃんの母ちゃんだって分かったんだよね」
「何?!その母上の画像はないのか?
陽菜子の数十年後と言うのなら、見てみたい」
琉旺さんが、興奮気味に遼ちゃんに話しかけるのを、シュウちゃんが
「話がややこしくなるので、後になさいませ」
と、諫めている……。
遼太は、面倒ごとはごめんだと、席を立とうとしたらしい。
けれど母に、陽菜子がどうも危ないことに首を突っ込んでいるようだから、一度きりで良いから頼みを聞いてくれと言われたらしい。
私が危ないと聞いたことと、一度きりと言われたことで、話だけでも聞いてみるかと立ち上がりかけていた椅子に、もう一度座り直した。
遼太が、聞いてきた話は、確かに誰からも聞かされたことのない、想像し得なかった内容だった。
母は、古い古い神社の娘だそうだ。
起源はなんと奈良時代らしく、海の神様である竜神様をお祀りしているとか。
それが、ある
最初は、純粋にその巫女を神様からの御使いであるとか、竜神様の生まれ変わりであるとかと言って、皆が恭敬を持って接していた。
ところが、いつの時代も己の利のためならば、そこに正義があるのだと勘違いする輩が現れるものだ。
元々力のあったその人物は、巫女と自分の息子の婚姻を強引に進めて、神の力を取り込んでしまう。
それ以降、巫女の力を維持するために、力があるという人間を探し出しては、婚姻と言う結びつきで、家の繁栄を繋いできた。
まぁ、よくある話ではあるのだ。
竜家とも歴史の長さは違うものの、内容はそう違わない。
ただ、母の話を聞くのならば、母は家の定めた力のある者と婚姻を結ぶことを嫌がり、家から飛び出した。
挙句、寄りにもよって、あの女癖においても、人間性においても、だらしの無い父と、子を(私のことだけどね)儲けてしまった。
母の生家は、そりゃぁもう怒ったそうだ。
どうにか家に帰ってこいと、母の幼馴染を使って説得したけれど、今のこの時代、そんな時代錯誤な意見に従わなければならない理由など一ミリもない。
生家に未練のなかった母は、これ以上無理強いするならば法に訴え出ると、強気な態度に出て追い払った。
母の生家では、説得はことごとく失敗に終わってしまい、痺れを切らしていたところに、父がよそに子供を作った(遼ちゃんだ)。
彼らは、ここぞとばかりに別れて帰って来いと再び言い募り始めた。
ところが母は、それでも父を愛しているから帰るつもりはないと(マジかよ………全く理解できん)、突っぱねた。
とうとう、この段階で私に目がつけられてしまったらしい。
「もう良い。お前が帰ってこないなら、お前の娘に家を継がせる事にしようと言われて、やっと折れたんだってよ。
ねぇちゃんの母ちゃん曰く、『生家なんかに囚われたら、陽菜子は好きなことも出来ずに、神職の修行ばかりをやらさられる。そんなのは、許せなかった』って言ってた」
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