第16章 こちらは、こちらでこちらで頑張ります
第73話 USBメモリー
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いきなり、竜が出てきてビックリした。
いや、ビックリしたなんてもんじゃない。腰が抜けそうになるって言うのは、こう言う事なんだと、実感した。
まぁ、楽しいから良いけど。
その竜が、えらく派手派手しい部屋の壁をぶち抜いてくれたので、俺と三嶋っち、ムウさんは、ねぇちゃん達とは別行動を取った。
ムウさんは兎も角、俺と三嶋っちは、一緒に着いて行ったところで下手すると、また邪魔になってしまう。
それなら、自分が出来ることをしたほうが良い。
部屋を出て、一番最初に目についたPCから、順番に用意していたUSBメモリーを差し込む。
中身は以前、俺のことを馬鹿にしまくった奴のPCをぶち壊してやろうと思って作った負荷ツールだ。
企業のハード開発の負荷試験なんかでも使われる代物を、負荷がMAXになるように作り替えた。
USBメモリーを差し込んだ時点で、BIOSさえ立ち上がっていれば、強制的にOSを起動させて勝手にコピーされる。
CPU、メモリ、ハードディスク、ビデオにファン、兎に角マザーボードにくっついている、チップもその先の電子機器も、全てにガシガシ負荷をかけてくれる。
俺的には、さっさとサーバー機をぶち壊したいけど、どこにあるのか分からない。
一先ず、この施設で研究しているヤバげなデーターが入っているであろう記憶装置や、PCを物理的に壊して打撃を与えるのが目的だ。
「BIOS画面が抜けたら、あとは勝手にやってくれる。
OS立ち上がってそこから30秒ほど待ったら、引っこ抜いて、次のPCに差し込んで」
ありったけ用意していたUSBメモリーをカバンの中から出す。
本当は、三嶋っちと2人でやるつもりだった作業は、唱子さんを探したいので、護衛代わりに一緒に行かせて欲しいと言うムウさんも巻き込んで、3人で行うことになった。
ムウさんは、勘のいい三嶋っちがいれば、唱子さんが見つけやすいかも知れないと思ったそうだ。
USBポートに突っ込んで、しばらく待って抜く。
また、違うPCのUSBポートに差し込む。単純作業だ。
コピーし終わったPCは、負荷が高すぎてチップが熱くなり、途中で煙が出ている。
ハードディスクなんか、熱くなってカンカン音がしている始末だ。
PCが放出している熱で、部屋の温度が上がっている。
ねぇちゃんは、親父のことも、そりゃあもう毛が逆立つくらい嫌っているが、どちらかと言うと、自分の母親の方を更に憎んでいる感じだ。
俺は、母親は死んじまったから諦めもつくけど、ねぇちゃんからしたら、自分を捨てて出ていったと言うのが、どうにも許せない理由の一つかも知れない。
それが、その母親から渡された数珠を使ったのは、背に腹は変えられないってこともあるだろうけど、琉旺さんと一緒に居るようになって、気持ちに何らかの変化があったせいだと思っている。
以前のねぇちゃんなら、自分が死ぬ程度のことなら使わないはずだ。
それほど、幼い頃から培われた猜疑心は、膨れ上がってどうしようもなくなっていたはずだ。
俺たち姉弟は、幼い頃から周りの好奇の目に晒されて、嫌がらせだって人一倍受けてきた。
小さい頃は、それこそねぇちゃんが知恵を働かせて、あの手この手で守ってくれた。
ある程度大きくなってからは、そこに俺の悪知恵が加わり、外から身を守ると言うよりは、どんだけ大きくして仕返すかが課題になった。(ねぇちゃんは、やりすぎるなって言ってたけど)
俺にとってねぇちゃんは、親なんかよりも大事な、かけがえのない家族だ。
早く、この騒動を終わらせて、琉旺さんと幸せになって欲しい。
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