第11章 王子 行方不明になる
第48話 個人情報保護法 違反
琉旺さんが、どこかに行ってしまって帰ってこない。
シュウちゃんを連れて……。
シュウちゃんの携帯に電話がかかってきて、2人が慌てて出て行ったのが、3日前。
ちょっと、出てくるって話だった……と思う。
それを証拠に、琉旺さんやシュウちゃんの着替えも、荷物も、PCも、多分仕事の書類も全てそのままで、家の客間にある。
しばらく帰ってこないつもりなら、せめてPCや仕事の書類なんかは持っていくだろう。
(もしかすると、書類は誰が見ても困らないような内容なのかもしれないけど……、勿論見ていないので、分からない)
大学の研究室で、何処を見るでもなくぼんやりと宙を見上げていた私に、三嶋さんが明るく声をかけてきた。
「なぁなぁ、陽菜子ちゃん、今日、お家にお邪魔したら、あかん?」
「へ?」
ぼんやりしていた私は、間抜けな声が出てしまった。
「……それが、琉旺さんはいないんです」
「お仕事?」
「いえ、………帰ってこないんです。もう3日目です」
そう言った私に、三嶋さんは怪訝そうな顔をした。
「それって、出て行かはったってこと?それとも、あのおじいちゃんに連れて行かれたの?」
私は、首を横に振る。
「分からないんです。シュウちゃんと一緒に、慌てて出て行って。
ちょっと出てくるって話だったんです。
PCだって、仕事の書類だって置きっぱなしで。なのに、3日経っても帰ってこないんです。
大人だし、忙しい人だし、お仕事の都合か、家の都合かで帰ってこられないのかもと思って」
私の話を聞いて、彼女は険しい表情になった。
「電話はしてみたん?」
「はい。私の携帯から、昨日の夕方と今朝に一回ずつ。弟の携帯からも、昨日の夜にかけてみました。
でも、繋がらなくて」
「とりあえず、陽菜子ちゃんの家に行くわ。さぁ、帰ろ」
サクッと言った彼女は、カバンを持つと、私の手を引いて研究室を後にした。
家に帰って暫くすると、遼ちゃんも帰ってきた。
琉旺さんとシュウちゃんが、何処にいるかの話し合いは専ら、2人が話して、私は2人に聞かれたことを話すというスタンスが出来上がった。
どうも、私は戦力として力不足らしい。
と言っても、竜家が元を辿れば恐竜の血を濃く受け継いでいるとか……、
生命維持が困難な状況になると、トカゲなどの爬虫類に変わってしまうとか……、
琉旺さんは怪しげな組織に狙われてるだとか……、
の情報は、話せないので、何処まで話すか悩む。
シュウちゃんはオオトカゲだけど、結局、琉旺さんって何になるんだろうなぁ……と、1人で想いを馳せていると、遼ちゃんが徐に客間から、琉旺さんのPCを持ち出してきた。
「え?遼ちゃん、そのPCどうするの?」
「どうするって、中身見るんだよ。
警察に届けるったって、どうせ事件性がなけりゃ動いてくれないし、琉旺さんの家って、でかいんだろう?
3日帰ってこないからって、勝手に警察に届けたら、その琉旺さんの爺ちゃんって人が、今度は何言ってくるかわかんないじゃん?」
遼ちゃんは、先日のおじい様の襲来の様子を撮った動画を、(情報共有した方がいいという理由で)三嶋さんから見せられて、暫くキャンキャン喚いていたが、腹が座ったのか、遠慮が(元々あまり持ち合わせていない子だけど……)なくなってしまったようだ。
「でも、それって個人情報の塊だから、勝手に見るのは良くないと思うけど……」
怖いので、遠慮がちに反対の弁を述べてみたけれど、口の端を歪めてチラリとこちらを横目で見た遼ちゃんに、私はそれ以上のことを言えなくなってしまった。
「じゃあ、このまま何もせずに、琉旺さんとシュウさんが帰ってくるの黙って待ってられるの?」
正論を唱えられて、首を横に振る。
そうなのだ。琉旺さんと、シュウちゃんが心配なのだ。
でも、警察には届けられない。
ましてや、竜家にコンタクトを取ろうにも、どうやって取ればいいのかも分からない。
私たちに、残された選択肢は、琉旺さんが置いて行っている荷物を調べるくらいしか(多分………………)ないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます