第9章 トカゲ姫 王子をヤキモキさせる
第39話 フリーターではありません コイビトです!
どうも、私と琉旺さんがお付き合いをスタートさせたらしい
(だって、“付き合ってください“ “はい、分かりました“的な会話はなかったから、確信が持てないのだ)夜から、琉旺さんは事あるごとに私にくっ付いてくる。
しかも、家の客間にPCやら、プリンターやらを持ってくると、そこを仕事場にして、またもや居着いてしまった。
我が家の客間で、ガンガン電話をかけながら、仕事の指揮を取っている琉旺さんを見ると、なんだか私の知っている琉旺さんとは、イメージが違う。
「そうだ。君に任せているプロジェクトだ。
いちいち私に、確認をとってくる必要はない。君が舵を切って、最終決定も君が行え。
君の力を信用しているからこそ、私は君をリーダーに選んだんだ。
君がすべきことは、このプロジェクトを遂行することだ」
電話をしている琉旺さんをぼんやり見ていると、シュウちゃんが横から、小さな声で話しかけてくる。
「どうしました?」
「うん。当たり前なんだけど、仕事をしている琉旺さんは、いつもの琉旺さんと違うんだなって思って」
シュウちゃんは、フッと息を吐き出して笑う。
「むしろ、あれがいつものルゥさまですよ?お嬢さんといる時のルゥさまは、まるで子供の頃の彼のようです。
あんなに、無邪気にしているルゥさまを見るのは久しぶりです」
シュウちゃんは、嬉しそうに微笑みながら、私の顔をチラリと見る。
私との時間が、琉旺さんの心を少しでも穏やかに出来ているのなら、それは……私にとっても嬉しいことだった。
遼ちゃんは、琉旺さんのことが気に入っているので、琉旺さんが家に居着いている事を、何の抵抗もなく受け入れている。
大学の帰りや、昭雄叔父さんのところのアルバイトの帰りは、必ず終わったコールをすれば、すぐさま琉旺さんが迎えに来てくれる。
帰りを心配しなくても良くなったと言って、遼ちゃんは大喜びだ。
シュウちゃんは、お料理を手伝ってくれるし、仕事の合間に家事もチョコチョコしてくれるので、確かに助かってはいるんだけど……これでいいんだろうか?
昭雄叔父さんも、毎回迎えに来る琉旺さんを最初は遠目に見つつも、怪しんでいた。
どうも、シュウちゃんを連れて来た人物と同一人物だとは分からなかったようで、いつもTシャツにジーンズ姿の彼を仕事もしていないニートか、せいぜい、いいところでフリーターだと思っていたようだ。
(ニートやフリーターは、一着が数万もするTシャツや、ジーンズを履いたりしない)
叔父さんは、私は、経験がないから騙されているんじゃないかと思って、心配していたようで、ある日迎えに来てくれた琉旺さんを、病院の中に呼び込んで、一体姪とどういう関係だと問い詰め始めた。
「陽菜子さんとお付き合いをさせていただいています、竜凪と言います」
丁寧に、頭を下げた琉旺さんに、叔父さんは口を開けて、しばらく彼を見ていた。
「ほ……本当に、陽菜子と付き合っているのか?
そもそも君、仕事は?
いつも、陽菜子を迎えに来ているけど、社会人ならそんなに時間が自由にならないだろう?」
聞きながら、緊張しているのか、指を胸の前でモゾモゾ動かしている。
叔父さんは、人に強くいうのが苦手な人だ。緊張しているに違いない。
「確かに、自由にならない時は、全く自由になりませんが、今は家で仕事の対応が出来る時期なので、比較的彼女の時間に合わせやすいんです。
恋人を1人で夜道を歩かせるのは心配ですし」
こ、こ、こい……びと……。
聞いていた私は、真っ赤になった。
見ると同じく、叔父さんも真っ赤になりながら、俯いている。顔を赤くして、叔父と姪でモジモジしていると、琉旺さんが優しく笑いながら、話を続ける。
「私は、DCエネルギーのCEOをしています。
先月は1ヶ月間、中東の辺鄙で何も無い土地で、仕事漬けの毎日でした。
彼女が、忙しい獣医学生だということは承知しているつもりです。
なので、私が都合を合わせられる時は、彼女のスケジュールに合わせたいんです。
大事な姪御さんのことがご心配でしょうが、信用して頂けるように努めます。どうか、お付き合いをお許しください」
頭を下げた琉旺さんをまじまじと見ていた叔父さんは、やっと何かに気づいたようだった。
「あ!君、あの時の?あのオオトカゲの?」
「そうです、先生。その節は大変お世話になりました。
あの時は、処置していただけて本当に助かりました。ご連絡せずに、不義理をしたことお許しください。
実は、あの後すぐに家の方が忙しくなりまして……。
オオトカゲは、かかりつけの医院で診てもらうことにしたんです」
シュウちゃんのかかりつけって、私のことだろうか?
叔父さんに、勝手に手術をしたことがバレたら大事だ……。
昭雄おじさんにとって、琉旺さんが石油会社のオーナー兼、最高経営責任者だってことはどうでもいいことだったようで、シュウちゃんの話を聞くと、途端に空気が和らいだ。
叔父さんは、
「そうか、そうか……。あの時のことがきっかけで仲良くなったのか。ワハハハハ」
と笑っている。
自分の中で納得がいってしまうと、細かいことはスルーしてしまえる、ある意味大らかな性格なのだ。
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