第33話 クソ×××!!!

 車は、そのまま道を走り続け、大きなお屋敷が立ち並ぶ住宅街の狭い路地を抜けると、長い塀が続くお屋敷の門をくぐった。

 広い玄関を上がって、さらに長い廊下を歩いて、通された部屋は、いかにもセレブな調度品で溢れている。

 地模様の入ったアイボリーの壁紙に、小振りだけれど存在を主張するシャンデリア、ソファは、ゆったりと大きく、ローテーブルの足は、美しい彫りの入った曲線を描いている。


 時刻は、もう9時を回っている。

 あれから2時間以上経ってしまった。遼ちゃん心配しているだろうなぁ……。

 バックごとお預かりしますって言って、持って行かれたので、連絡さえ入れれない。

 おまけに、喉が渇いた……。


 

 竜口さんにムウと呼ばれていたお付きの人は、私が喋らなくなった途端、態度が優しくなった。

 気味が悪い……。

 けれど、罵倒されるよりは良いので、このまま黙っておこう。

「えーっと、浦さん……で良いのか?お腹空いてるよな?

 軽食だけど、ここに運ばせるから、適当に食べて」

 そう言って、食事まで用意してくれた。


 毒とか薬は、……入ってないよね?

 私の目線は、サンドイッチとお茶の間で泳いでいた。

「どれが良い?」

「は?……」

「どれか選んで」

 サンドイッチのことを言っているのだと理解した私は、並んでいるサンドイッチの中から、一切れ指差す。

 彼は、私が指さしたサンドイッチを口に入れてみせた。

 食べるのを躊躇していた私を見て、意図を察したのだろう。

「何も入ってないよ。お茶にも、何にも入ってない」

 そう言われて、お茶のカップを口元に持っていくとクンクン匂いを嗅いでみる。

 特におかしな匂いはしない。勿論、無臭の毒や薬だってあるから、安全であるとも限らないけど。


 喉の渇いていた私がお茶を、飲んでいると、竜口さんがやってきた。

 家の中だからなのか、ヒラヒラしたガウンのような物を着ている。

 ルームウェアと呼べば良いんだろうけど、彼女のでっかい胸の谷間がチラリチラリと見えて、目のやり場に困る。


 ってか、人を攫ってきておいて、そんなヒラヒラに着替えてくんなよな……。

 私の前のソファに腰掛けると、足を組む。

 そのヒラヒラから、太ももがチラ見えしてんだけどなぁ……。


「貴女、どうやって琉旺に取り入ったの?最近、琉旺の周りをウロチョロしてるでしょう?」

 竜口さんは、猫舌なのか熱いお茶をフーフー冷ましながら、いつ口をつけようかタイミングを図っている。

 やってることは、可愛いけど、言ってることは可愛くない。

 気分の悪い私は、返事なんてしない。

 そもそも、勝手に人を拉致ってくるような人に、口を聞いてやる義理なんてないのだ。

「キ〜〜〜、イライラするわね。何か喋りなさいよ。

 大体、琉旺が貴方なんて相手にすると思ってんの?

 琉旺はね、将来竜家を背負って立つ王たる男なのよ。ルックスだけじゃなくて、地位もお金もあるの。

 それが、貴女みたいな何にも持ってないような女を相手にするわけがないでしょう?

 そもそも、私を前にして、その態度を取れる…………」

 なんだ……この人、琉旺さんの婚約者だって言ってたけど、2人は、何でもないんだな。


 確かに、この人の言ってることは当たってる。

 琉旺さんは、いろんなものを背負ってる人だ。

 でも、彼は、地位やお金だけを大事にしてる人じゃない。

 それを少しも理解してないこの人と、琉旺さんがどうにかなったりしない。

 おまけに、竜家の王って……そんな話、外部の人間に簡単に話しても良いことなのか?


「貴女、聞いてるの?私が……」

「うるさい!この、クソ×××!!!(お好きなスラングをお入れください)」

 頭の中がスッキリした私は、竜口さんに言葉を返した。

(と言えるかどうかは、分からないけど)

「な………な、何ですってぇ〜〜〜……キー!!あんたこそ、キモ××女のくせに(お好みのスラングを当てはめてください)」


 竜口さんが、持っていたカップをテーブルに叩きつけるように置いて、立ち上がると、ヒラヒラがめくれて、際どい格好になってる。

 お付きのムウさんが、目をパチパチさせて、竜口さんを見てる。

「あ……あの、お嬢様……およ……」

「うっるさいわね!ムウ!黙ってなさい」

 そう言ったかと思うと、彼女は、私に掴みかかってきた。

 背の高い彼女に掴み掛かられると、結構きつい。

 しかし、私にだってプライドってもんがあるんだ。負けるもんか!!


 彼女の着ているヒラヒラを思いっきり引っ張ると、ズリーっと肩が落ちて片側が、上半身剥き出しになった。

 一応、ブラジャーもしているし、キャミソールも来ているけれど、あくまで下着なので、スケスケだ。

「ヒィ〜〜〜!!お嬢様、おやめください」

 ムウさんは、真っ赤になって半泣きだ。

 可哀想に……。

 こちらが女だからなのか、どう手出しして良いのか迷っているように、ムウさんはワタワタしている。

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