第6章 トカゲ姫 災難に巻き込まれる

第24話 襲撃です

 家に来て、そろそろ一週間が来ようかという頃、琉旺さんがどうしても対応しなければいけない仕事が舞い込んだそうだ。

 ここ暫くは、いろんな事情が重なって琉旺さんの仕事はオフにしていたらしい。

 (どんな事情かは、説明してくれなかったけれど、特に聞くもんでもないなと、こちらからは聞かなかった。)


 まぁ仕事が休みだったから、家に来て、シュウちゃんとゴロゴロしたり、家の中の修繕をしてくれたりするような暇があったんだな。

 とりあえず、シュウちゃんを連れてお屋敷に帰るというので、私はシュウちゃんと会えなくなるのは寂しいけど、仕方ないなと身送ろうと思っていた。

 ところが、アルマジロトカゲのロンちゃん用にする為のライト類や、シェルターに使えそうな石なんかも沢山お屋敷に帰ればあるという魅惑の言葉に惑わされて、それらを選ぶべく、またまた琉旺さんのお屋敷に付いて来てしまった。



 遼ちゃんも最初は、あんなに琉旺さんのことを警戒しまくっていたのに、いつの間にか気がついたら仲良くなっていて、二人でゲームなんかして遊んでいる。

 どうも、PCのプログラミングや、言語のことなんかで話が盛り上がったらしくて、よく2人で私には分からない言葉で話してる。

 ロンちゃんを買ってきたのも琉旺さんだったので、遼ちゃんは、琉旺さんに、餌のやり方のコツを聞いたり、ハンドリングしているのを見て羨ましがっている。


『遼ちゃん、その人はトカゲちゃんとお話ができるんだよ。

 だから餌やったり、ハンドリングしたりもお手の物なんだよ……』

と、心の中で呟いてみる。


 でも、まぁ、仲良くしてくれるに越したことはない。

 遼ちゃんは、外見えはとっても人懐っこく装っているけど、私と同じく人間不信気味なところがあるから、素の状態で話ができる人は数少ないのだ。

 そんな遼ちゃんは、笑顔でいってらっしゃいと見送ってくれた。



 琉旺さんの運転する車で、お屋敷に到着する。

 早速、ロンちゃん用のランプや石を選ばせて貰った。

 琉旺さんは、お仕事をしているようで、別の部屋に行ってしまっていない。


 私は、シュウちゃんと、前に荷物を詰めてくれたメイドさんに相手をしてもらった。

 用事も済んで、いつまでもここにいると、忙しい琉旺さんに気を遣わせるかもしれないなと、帰り支度をする。

 シュウちゃんと、琉旺さんはお屋敷で仕事をするそうだ。

 いきなり同居生活が始まって、いきなり終わってしまったけれど、何だかんだと文句はありはしたものの、喋ることのできるオオトカゲちゃんと一緒に生活をするなんて経験は、なかなか出来る物でもない。

 正直言えば、楽しかったのだ。


 私がシュウちゃんに、挨拶しようと口を開いた時だった。屋敷中に轟く大きな音で、ブザー音が響いたのだ。

「え?何?」

 キョロキョロしていると、琉旺さんが部屋に飛び込んでくる。

 私の腰をサッと攫って抱き寄せると、琉旺さんは声を張り上げる。


「何があった?報告しろ!」

 屋敷の奥から、黒服の如何にもボディガード風な人が飛び出して来る。

「ルゥさま、襲撃です!

 現在、第一部隊が迎撃しております。安全な場所に避難してください」

 

 玄関の外側から、争い合うような声が聞こえる。

 何かがぶつかる音や、パンパンという乾いた音、ドォンという低い音の後には、ぐらりと足元が揺れる。

 何の音?もしかして……爆発?ここ、日本なんですけど……。


 外の音を聞いて、青い顔をした私の腰を抱いていた琉旺さんは、そのまま私を俵抱きにすると、近くにいたシュウちゃんも抱き抱える。

「グエ……」

 米俵のように担がれた私は、琉旺さんの肩で胃が圧迫されて、蛙が潰されたような声が出た。

 しかし、仕方がない。琉旺さんは、オオトカゲの姿で走れないシュウちゃんも担いでいるのだから。


 私は、走れるので、降ろしてくださいと言おうとしたのに、

「走るぞ!口閉じてろ」

と、短く言うと、モノすっごい勢いでお屋敷の中を走り始めた。

 当然、私は何も言えず、舌を噛まないようにしっかりと口を閉じているしかなかった。


 お屋敷の中の、奥の奥にある扉を開けた琉旺さんは、その下に繋がる鉄階段を、飛ぶように降り始める。

 私は、ポンポン揺られて、ここに来る途中で頂いた、胃の中の消化されきっていない夕飯を、口から戻してしまわないように堪えるので精一杯だった。

 一応、女子の端くれとして、男の人の肩で吐きたくはない。


 どうにか、駐車場に停まっている黒いバンに乗り込んだ時には、私の顔色は青いを通り越して真っ白になっていた。

「陽菜子、もう少し頑張れ」

 琉旺さんは、私にそう声をかけると、バンの後ろにオオトカゲのシュウちゃんごとポイっと乗せると、自分は運転席に乗り込みエンジンをかけ、アクセルを踏み込む。

 私は、フラフラしながらも、どうにかシュウちゃんの体に無理くりシートベルトを締めて、自分もシートベルトを締める。


 車は、小さく等間隔にライトの点いている地下道をタイヤを軋ませながら、ハイスピードで走る。

 大きく何度か深呼吸をして、頭に酸素が回り始めた私は、やっと外の景色を見ることが出来る余裕が出てきた。

 先ほどから、結構長い距離を地下道を走っているけれど、お屋敷の地下であろう場所から続いているこの道は、当然公道なんかじゃないはずだ。

 こんなに長い距離、地下に私道を作ることの出来る竜家って一体どんなお家なんだろう?

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