第3章 トカゲ姫 喋るトカゲと遭遇する
第10話 シュウちゃん……ファビュラスだわ❤︎
大きな手に、頭を撫でられている夢を見た。
お父さん?お父さんに、頭を撫でられるのなんていつぶりだろう?もう、覚えていない……。
もう……、お父さんの顔さえも朧げだ……。
目が覚めると、知らない部屋の、えらく大きなベットで眠っていた。
ものすっごくスプリングのいいマットレスのやつだ。高いに違いない。
どうも、昨日あのまま、神経擦り切れて寝てしまったんだと思った私は、部屋をぐるりと眺める。
遮光性の高い、大きなゴブラン織のこれまた高そうなカーテンの隙間から、ほんの少し日が差している。今は、何時なんだろう?
スプリングのいいベットからは離れがたかったけど、そっとベットから降りて絨毯に足をつけると、こちらは毛足の長いとろけるような肌触りだ。
このまま、絨毯の上で、ゴロゴロしたい。この上で、もう一眠りできる。
ドアを開けて、廊下に出る。ドアのハンドルに緻密な細工がしてあったのにも驚いた。
この大きなお屋敷といい、全てにおいて高価そうな調度品と言い、一体、竜凪さんは何をしている人なんだろう?
そろそろと廊下を歩く。
キョロキョロしていると、階段が見えた。二階の部屋に寝かされていたみたい。
たくさんある、ドアの一つから、小さく話し声が漏れ聞こえてくる。
何を言っているのかは分からないけど、男の人たちが話しているみたい。
あたりをつけて、ドアをノックすると、
「どうぞ」
と、返答があった。竜凪さんの声だ。
「あの、おはようございます。すみません……、昨日寝てしまったようで、どなたかが……」
そこで、私の言葉は途切れた。だって部屋には、竜凪さんとシュウちゃんしかいなかったからだ。
さっき、私の耳は、竜凪さんともう一人の男の人の声を拾っていたのに?
私は、とっても耳がいい。小さな音も聞こえるし、どんな声かも聞き分けられる。
自分でも、自慢の耳だ。なのに……部屋にいるのは、竜凪さんと、オオトカゲだけ?
「ああ、おはよう。昨日は、おつかれ……」
「竜凪さん、誰と話していたんですか?」
竜凪さんの言葉をぶった斬って、ズバリ訊ねた私に、竜凪さんは固まってしまった。
「今、誰か男の人と、話してましたよね?
話の内容は聞き取れませんでしたが、二人以上は人がいたと思うんですけど」
更に言葉を重ねる私の顔を、竜凪さんはジッと見ている。
あ!竜凪さんの瞳って、日が差すと金色がかって見える……。
トカゲちゃんみたいでキレイ……。
新しい発見に、ぽんやり竜凪さんのイケメン顔を見ていると、目の前のイケメンが、ハーっと長いため息をつく。
「お前さ、野性味溢れてるよな」
全く質問の答えになっていない。しかも、ディスられてる。
「お前じゃ、ありません。私の名前は、」
「ああ、悪い。……陽菜子」
竜凪さんに、名前を呼ばれて、私の心臓はドッキーンと飛び出した。
くっ、やばい!心臓に疾患があるのかも……?
ドキドキと脈が早い胸のあたりを押さえながら、じろりと彼を睨んでみる。
「あの、私の質問……」
「かわいいな……陽菜子」
え?あれ?……今、彼はなんと仰った?
皮、良い?シュウちゃんの皮のことだろうか?
昨日、瘤を切除した時に切った場所を縫合しておいたが、出来るだけ跡にならないように気をつけて縫合したつもりだ。
しかし、たとえ痕が残ったとしても、ワイルドさが増して、それはそれで良いんではなかろうか……。
そんなトカゲちゃんの皮は、良いに決まっている。
冷静に考えているはずなのに、私の心臓は、心拍数がどんどん上がって、呼吸が苦しくなってきた。
これは、早急に検査が必要なレベルだ。
胸を押さえて、ハアハアしながら、もし私が死んだら、残された遼ちゃんは悲しむに違いないと、悲嘆に暮れていると、竜凪さんがシュウちゃんを呼んだ。
「シュウ、構わない。話せ」
「………良いんですか?ルゥさま……」
……………??????………あれ?
耳をホジホジしてみる。私、耳掃除サボってたかな??それとも急に難聴になった?
「陽菜子、聞こえたか?」
竜凪さんに言われて、おもいっきし首を傾げる。
ぽっきり横に、首が折れたんか?と言うくらい傾げる。
「ほら……、お嬢さん、理解できてないじゃないですか……」
「………っワーーーーーーーーー!!!!シュウちゃんが、しゃべってる?」
「はい。ワタクシが喋っております」
オオトカゲが、喋っている。間違いなく、喋っている。
しかも、はっきり喋っている!!!
「……シュウちゃん…………なんて素敵なの
…………ファビュラスだわ❤︎」
もう、私の心臓は、ズッキューンと飛び出したまま戻って来れない。
つい、今しがたドキドキしていた心拍数よりも遥か上の速度で、私の心臓は脈打っている。
すごい、オオトカゲとおしゃべりしちゃった。ヤバ……鼻血でた。
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