第二話




 あの公開処刑から二年経った。礼拝堂の裏に彼らの———誰の?———お墓に花を手向け礼拝堂に戻る。風の噂で聞いたが、一年前に祝福カースを施した勇者様御一行は目まぐるしい活躍の中、手酷い攻撃を受け城へとつい先日帰還したのだとか。


 まだ、これで終わらせないですよ?もっと苦しんで、嘆いて、絶望して、苦悩して、自分の無能さに気付き、地の底まで墜ちていくほど足掻くのが無駄だと思うくらいに、己が無力さに打ち拉がれて、自分を呪い、この国の人々を呪いながら……死んでいけばいいのです。貴方達に起こったことは決して偶然ではなく、起こるべくして起こったことなのですから。


 「———芽が芽吹く頃合いですね」


 静謐な空間に少しの衣擦れの音が響く。シスターが顔を上げ、大きな十字架を見上げているのだ。その顔に浮かんでいるのは微笑み。だがそれは狂笑にも見えるそんな笑いだった。




 「おかしいだろこれは!!!!」


 城の一室に怒号が響く。その声の主は顔の凡そ三分のニほども包帯に包まれている男。そう。勇者である。彼は声を荒げ室内の置物を壊しかねないほどに怒っている。


 「おかしいって、何がおかしいのさ!僕たちはミスを犯して、こんなことになった!それが真実だろ!?」


 同じくして声を荒げる男。同じく勇者の一人。彼もまた傷だらけだったのだろう。こちらもまた包帯だらけだった。そして二人の言い合いを遠巻きに怯えながらも見ている女性二人。彼女らもまた痛々しいほどに包帯だらけだ。


 「聞きに行こう。そうしたら分かる」

 「僕は反対だ。こんな状態で外に出たらどんな目で見られるかわかったもんじゃないから」

 「だとしても、気にならないのか?この間までは失敗なんてしてなかったじゃないか」

 「多分失敗してなかったからこんな目にあったと思ってる」

 「わ、私たちは失敗なんてしないから今回も大丈夫って思ってたと思う……」

 「そう、よね」

 「今回のことで身に染みたと思う。これからは気をつけていこう」


 この一言でお開きとなった。





 「君も人が悪いよねマリアくん」

 「はて、なんのことでしょうか神父様」


 私はティーカップを手にしながらもクスリと微笑う。


 「こんな手の込んだことをしなくてもよかったんじゃない?ってことだよ」


 そうは言うが、神父様は愉しんでいるでしょうに。


 「別にあの子達に同情をしたのではありませんよ。あの子達もまたこの国に喚ばれたのですからじわりじわりと苦しんで逝けば良いのです」

 「君の復讐心の強さには天晴だね」


 神父様は面白おかしく破顔い紅茶を嗜む。私は特に思うことはなく、凡そ平民では手の出せないであろうそんな高級感のある紅茶を口につける。うん。






 —————————————————————不味い


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Le Pape of Judgment 海澪(みお) @kiyohime

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