~if route~ 第一話




 「ようこそおいでくださいました勇者様方」


 私は十字架を背にお辞儀する。———目の前には豪奢な鎧に身を包む男性。その隣には大きな楯を背に背負う男性。その隣には黒いローブを床につかせるほど長く、とんがり帽子を被った女性。鎧の男性の反対隣には肌の露出は多く、ほぼ下着同然の格好をしている女性。この四人は紛れもなく異世界から召喚された勇者たちだとわかる———。


 「アンタが俺たちに祝福をくれるって王様から聞いたんだけど?」


 鎧の男性はそう発する。私は内心、「礼儀のなっていない男」だとぼやくが顔にはおくびにも出さず、微笑みを浮かべる。


 「えぇ、その報告はお聞きしております。本来であれば神父様が施しを与えるのですが生憎外せない用事ができてしまい、私が代わりを務めさせていただきます。ご紹介がおくれましたが私はここのシスターをやっておりますマリアと申します。どうぞよしなに」


 軽く会釈して彼らの姿を横目に十字架を眇める。


 「では、始めましょうか。皆様は片膝をつき、祈る様にしてくださいませ」


 勿論、私が施すのは祝福とは名ばかりの呪いなのだが……まぁ、それは後々効いてくる遅効性の呪いだからそれまでは祝福にしておこう。


 「天に召します我らが地母神よ———」






 そうして始まった祝福の儀式。それは復讐の劫火に灼かれる彼女のただ一つの蠱毒でもある儀式。このウェンドリア大国に呪いあれと居もしない神を呪いながら———



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